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【イベントレポート】「信頼されるデジタル広告」の実現に向けて デジタル広告の健全化をどうすべきか

8月10日に東洋経済ブランドスタジオ主催・東洋経済Brand Lab Live『「信頼されるデジタル広告」の実現に向けて』が開催されました。本イベントでは、ブランド保護、デジタル広告の品質の問題に注目をし、今どのような問題が起こっているのか、それに対してどのような対策が行われているのか、今後何が求められるのか、最前線で取り組まれている方々にお越しいただいてお話をお伺いました。
※2022年8月の時点の情報です

<パネリスト>
・ネスレ日本株式会社 媒体統括部 統括部長 
野澤 英隆 氏

・Integral Ad Science Integral Ad Science カントリーマネージャー、日本/韓国 
山口 武 氏

・GeoEdge Senior Account Director 
勝井 善明 氏

・東洋経済新報社 ビジネスプロモーション局 デジタル業務推進部
豊沢 豪

<モデレーター>
株式会社東洋経済新報社 ビジネスプロモーション局 メディア営業部
崎山 梓

崎山
みなさま、こんにちは。東洋経済Brand Lab Live、『「信頼されるネット広告」の実現に向けて』をご視聴いただき、どうもありがとうございます。
東洋経済新報社の崎山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

2017年12月、週刊東洋経済にて「ネット広告の闇」という特集が組まれました。
日本のデジタル広告に詐欺や不正の広がりについて告発するもので、その後報道番組でも特集されるなど広告業界が騒然となりました。

その後デジタル広告を取り巻く環境は変わり、業界の意識も更に高まりつつあります。しかし、まだ悪質な広告や不適切な広告が世の中には数多く出回っており、信頼されるデジタル広告の実現は道半ばです。日本の広告配信におけるデジタルメディア品質は世界最低レベルの数値が出ており、広告予算の大きさからも、世界中の悪質業者の方に標的にされやすく、日本の問題は深刻とも言われています。

そこで、今回は、デジタル広告の諸問題の中でも、特に、ブランド保護の観点、デジタル広告の品質の問題に注目をいたしまして、今どのような問題が起こっているのか、それに対してどのような対策が行われているのか、今後何が求められるのか、最前線で取り組まれている方々にお越しいただき、お話をお伺いしたいと思います。
登壇者の紹介をさせていただきます。

野澤
こんにちは、ネスレ日本媒介統括部の野澤と申します。今日はネスレのメディアマネージャーとしての立場、それからJICDAQの委員。この二つの立場からお話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

山口
インテグラル・アド・サイエンスにて、日本と韓国のカントリーマネージャーをさせていただいております、山口と申します。よろしくお願いいたします。
お客様よりIASと呼んでいただいているんですけれども、世界でデジタルメディア品質のグローバルリーダーという立ち位置で12か国9拠点、約2,000人を超えるお客様の配信の状況を計測させていただいております。
主に、アドベリフィケーションと呼ばれている、広告のビューアビリティ、アドフラウド、ブランドセーフティー。広告が本当にキチンと人に届いて、見てもらえる位置、クライアント様のイメージを傷つけないようなメディア品質の高いコンテンツ上に広告が出ているかということを可視化し、直していくソリューションを提供させていただいております。
よろしくお願いいたします。

勝井
Geo Edgeの勝井と申します。2012年に活動が日本で始まりまして、去年2021年から日本のオフィスを開設しております。簡単に我々のシステムを一言で言いますと、リアルタイムで悪質広告をブロックします。今日はよろしくお願いいたします。

豊沢
みなさん、こんにちは。東洋経済新報社ビジネスプロポーション局デジタル業務推進部の豊沢と申します。現在は主にプログラマティック広告を担当する他、ブランドセーフティー対策にも取り組んでおります。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

崎山
ありがとうございました。モデレーターは私、東洋経済新報社の崎山梓が担当いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

本題に入る前に少しお知らせをさせてください。本イベントは東洋経済ブランドスタジオが主催しております。東洋経済ブランドスタジオは2019年に設立した組織です。
東洋経済新報社ビジネスプロモーション局の広告、セミナー、カスタム出版の3つの部署が合体した、クライアント向けのコンテンツ制作チームです。
本日はセッションをお楽しみつつ、東洋経済グランドスタジオという名前も是非覚えていただきますと幸いです。

デジタル広告はなぜ信頼されてないのか

崎山
まず冒頭、デジタル広告の現状がどのようになっているのか、という点について簡単に解説していきます。

昨今のデジタル広告は目覚ましいものがあります。デジタル広告は右肩上がりで成長しており、2019年にはテレビメディアの広告費を抜いております。2021年には全広告費の構成割合で4割がデジタル広告を占める割合となっています。

成長著しいデジタル広告ですが、消費者の支持という点で難しい所があります。

この図はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌いわゆる4マスとインターネットの広告に関する印象についての調査です。デジタル広告について、ポジティブな印象を持つ割合は少なく、「しつこい」「不快」「邪魔だ」「煩わしい」「うっとおしい」「いかがわしい」「怪しい」とネガティブな印象のポイントが高くなっています

ユーザーがデジタル広告にネガティブな印象を持つ理由には幾つかあります。

  • 何か検索行動をしたらターゲティングされ、どのサイトにいっても同じ広告においかけられてしまう

  • 記事と記事の間にさりげなく広告がひそまれており、誤って広告をクリックしてしまう

  • 画面一杯に表示され閉じるボタンが小さく誤ってクリックしてしまったり、表示方法が悪質

  • どう見ても怪しい商材の広告や公序良俗に反するような広告のバナー

他にも様々な要因があります。

このようなデジタル広告の問題に対して、官民で様々な取り組みがはじまっています。例えばデジタル庁が悪質な広告に関する規制を強化したり、2022年4月には、改正個人情報保護法が施行されたりしています。そのような問題の中でも、今回のテーマであるデジタル広告の品質保護と維持について解説をしていきます。

デジタル広告で今何が起こっているのか

崎山
ではデジタル広告の品質の問題とはどのような問題でしょうか?
実態としてこのような事が起こっています。
広告主のお金が不正に盗まれている、いわゆる詐欺行為が発生している。
真面目なメディア、媒体が価格競争で負け、広告販売の機会を損失する。
ひいてはデジタル広告の社会的信用が失墜し、業界全体の地盤沈下を招くおそれがあるのです。

何も対策を行わないと、

不適切なコンテンツが掲載されたページに自社の広告が掲載され、ユーザーから「そんな場所に掲載しているブランドは悪質」等、ブランドイメージや評価が毀損されてしまう。

ハッカーや不正業者がBOT等を活用して実際のユーザーにみせかけ、不正トラフィックを発生させ、広告主から広告費をだまし取ってしまう。

ユーザーが画面に表示していないにも関わらず広告インプレッションが発生し広告費用が発生してしまう。

悪質な出稿社が制作した広告が自社運営サイトに掲載され、ユーザーに誤った誘導をしてしまう。また、まともなブランド広告と同時掲載されてしまう事で、ブランドのイメージや評価が棄損されてしまう。

そういった事がデジタル広告で、現状で起こっています。

不正対策の柱として、不正なアクセスやサイトを検知し制御するアドベリフィケーションがあります。アドベリフィケーションとは、広告を検証する仕組みという意味で、ブランドが行った広告出稿が適切なサイトや枠に掲載されたか、不正請求されていないか検証する行いの事を言います。

ネスレ日本様のアドベリフィケーションの取り組み

崎山
まず最初に、ブランドはどうやって悪質広告からブランドを保護するべきか、というテーマでお話をしていきたいと思います。
まずは広告主サイドから、ネスレ日本様のアドベリフィケーションの取組をご解説いただこうと思います。

野澤
ネスレの場合は、「Nestle Digital Responsibility Plan」というのがありまして、アドベリフィケーションに準ずるガイドラインというのが定められています。
この最初のガイドラインは2016年7月に発行されまして、出た当初はアドベリフィケーションという言葉自体、日本では全く知られていませんでした。主にビューアビリティ、アドフラウド、ブランドセーフティの3つの観点から各国でデジタル広告を実施するにあたり、消費者それからブランドを守る観点から「すべきこと」「してはならないこと」が記されています。

現在弊社ではグローバルで、IAS様のアドベリフィケーションツールを活用させていただいています。IAS様には2016年に、このガイドラインが出てちょっと後くらいに、当時目黒にあった小さなオフィスにお邪魔してアドベリフケーションとは何なのか、というのを教えていただいたという記憶があります。

崎山
その時のご様子とかエピソードはありますか?

山口
その頃は、我々が日本オフィスをローンチしてからちょうど1年目ぐらいで、アドベリフケーションという言葉がまだ日本に浸透していない時期で、社員も4人いるかいないかという時代でした。
日本のクライアント様から直接お声がけいただいてどうしていきましょうという機会が稀であり嬉しいタイミングだったので、非常に記憶に残っています。

野澤
あの時教えてもらえなかったら全然分からなかったという感じはしています。

そのツールを使って計測されたビューアビリティ、アドフラウド、ブランドセーフティに関する数値をデートラマのダッシュボードにアップロードして、ブランド別にアドベリフィケーションの観点から問題のあるデジタル広告出稿は無いか毎週広告代理店と確認会議を行っています。

そこで問題のある出稿先が見つかれば即座に広告出稿を停止し、問題の解決を図るということを行っています。問題が解決しない場合には残念ながらそのデジタルメディアには広告出稿をしないことになります。
それだけ弊社は消費者それからブランドを守るという観点では厳しいところがあります。

崎山
ありがとうございます。山口さんから御覧になられて、ネスレ日本様の活動についてどのように感じられていますか?

山口
日本の広告主の皆さまの場合、コストを気にする場合が多いです。広告費用っていうのは多額の料金がかかるので、気にされるのは当たり前のことなんですけど、広告詐欺がありましたよという指摘があり、じゃあ対策をしようとなると追加費用が発生してしまう。そこをネガティブに捉えてしまい、なかなか前に進めないっていうお客様が多いんですね。
その中で、ネスレ日本様の場合は、アドベリフィケーションのデータを使って、より効果の出る広告配信ができるのかを、初期の頃から考えられています。あと、アドベリフィケーション自体の啓発活動の部分でご活躍いただいてるなと思っています。

コストやリソース、効果について

崎山
野澤様にお聞きしたいのですが、ネスレ日本様がアドベリフィケーション計測を行なって、どのようなメリットがあったのか、またどのような効果が得られたのか、多くのブランド担当者さんが気になるこの点について、ご説明いただきたいと思います。

野澤
やはり導入時に一番懸念されるのは、費用を払ってアドベリフィケーション計測するメリットがどこにあるかという事になるんじゃないかなと思います。
弊社の場合、オープンマーケットでの広告出稿、IAS Prebitを使った広告出稿、いくつかのPMPでの広告出稿で消費者の態度変容に違いについて計測を行いました。あるブランドに関して調査をした結果、明らかにアドベリフィケーションを実施した対象サイトでの広告出稿の方が良い態度変容結果が得られました
やはり追加コストというのは、予算を持つ側にとってはうれしい話ではないので導入障壁になる可能性はあるんだろうなと思います。ただし導入すればvCPM, クリック単価などコストダウンの結果が必ずでると思うので、まずテスト的にも初めてみることが大事なんじゃないかなと思っています。

アドベリフケーションを使った時の結果として、まず導入前後のビューアビリティとして25%ほど改善したという所と、後は導入後、ブランドリスクという所はほぼなくなったと、0.2%まで改善したという事が挙げられます。

コスト的な所でいうと、導入後CTR86%改善、CPC58%改善、vCPMは66%改善など、先程お話した通りコストダウンは必ず出ると思いますので、是非テストを始めていただけたらなと思います。

ブランドセーフティー対策の重要性

崎山
次にアドベリフィケーションの中で「ブランドセーフティ」についての話をお聞きしていきたいと思います。ブランドセーフティとは、ブランド毀損する不適切なページやコンテンツに広告が表示されるリスクから安全性を確保する取り組みの事です。デジタル広告の掲載先として違法なサイトや不適切なページ、コンテンツにも紛れ込んで配信されてしまう事がります。
IAS様はアドベリフィケーション対策のリーディングカンパニーとして、多くのブランド、広告会社、パブリッシャーに対してソリューションやナレッジをご提供されていますが、ここ最近のブランドセーフティの状況や傾向などを教えていただきたいと思います。

山口
アドベリフケーションの基本は、「ビューアビリティ」「アドフラウド」「ブランドセーフティー」の3つ指標になります。
「ビューアビリティ」は広告のクリエイティブがキチンと表示されているよね、見える所に出ているかどうかっていう所を確かめる数値になります。
「アドフラウド」は安いCPCを求めていくと、人ではなくBOTに配信されて広告のインプレッションやクリックの数が水増しされてしまっているという状況です。
最後に「ブランドセーフティー」になるんですけれども、基本的には広告がどこに出ているのか、出面の確認になっています。
デジタル広告は一瞬にしてリアルタイムに取引されて出ていくので、基本的には広告主の皆さんは広告がどこに出ているのか分からないという事になります。
良い所に出ていれば問題ないんですけれども、たまにブラントイメージを傷つけてしまう違法サイトや公序良俗に反するサイトに出てしまう、そういったものをどう防ぐのか、お金が流れてしまっている所をキチンと止めないといけない、というのがブランドセーフのお話です。

広告主の皆さんの意識は、特に欧米だとブランドセーフティに関しては当たり前のようにやられています。その上で現在は「コンテクスト」が特に意識されています。コンテクストは広告が出ている部分の文章や文脈のことです。例えば自動車メーカーさんが、交通事故の話には広告を出したくないということです。悪質サイトではないのだけど、イメージ的に広告キャンペーンと合わないところには出したくない、合っている所に出していきたいというイメージが強まってきています。

2020年に弊社が日本国内で行った調査になるんですけれども、消費者の皆様もコンテクストが合っていると記憶に残りやすいという結果が出ています。

コンテクストをターゲティングしていく点で、クッキーレスの話題が日本でも海外でも熱量が高くなっています。クッキーレスになり、デモグラフィック・ターゲティングができない状況の中、消費者が見ているコンテクストをターゲティングしていく手法として注目を集めたりしています。

こちら海外で行ったケーススタディになるんですけれども、デモグラフィック・ターゲティングとコンテクスト・ターゲティングの結果を比べた時にCPM、CTR、CPC各指標が改善されていますし、動画の完全視聴率やCPAを検証しても非常にパフォーマンスが出てきています。
視聴者がどういう意識で記事を見ているのか、サイトを見ているのか、その意識にあった広告を出す事で従来のデモグラフィック・ターゲティングよりもパフォーマンスが上がるという結果が出ています。

勝井
コンテクスト・ターゲティングというのは、例えば東洋経済オンラインなどの媒体さんとしては非常に興味深い所のはずで、自分たちの広告記事がどれだけ広告にマッチして広告主さんにどれだけ還元してもらえる場面が作られるか、非常に注目されている所だと思うんですね。
山口さん、IASさんの機能でコンテクスト・ターゲティングについてのソリューション、何かお持ちでらっしゃるんですか?

山口
東洋経済オンラインですとか、各メディアの記事を我々のデータを使って、こういったコンテクストですよ、という分析を出すとか、感情部分をAIで読み取って人が読んだ状況とほぼ等しいデータを出すことができます。
例えば、ネスレ日本様の商材でいうと、バレンタインの記事だったらキットカットとの相性がいいよねと思うんですけれど、意外とバレンタインに対するネガティブな記事があったりします。ではそういう記事には出さないようにしようと。逆にバレンタインのポジティブなイメージの記事に広告を出すと広告効果は上がっていきます
そういったデータをもって自動的に売っていくことができるっていうソリューションはご提供させていただいております。

東洋経済のブランドセーフティーへの取り組み

崎山
ブランドセーフティのお話に少し戻りますが、パブリッシャーの立場から東洋経済のブランドセーフティに関するお取り組みについて豊沢さんからお話をお伺いできればと思います。

豊沢
東洋経済新報社は、創業は1895年、そして2022年に創立127年を迎えます。
創立を同時に発刊した東洋経済新報は現在最も古く、世界で見ても二番目に歴史のある週刊誌です。また、1936年から会社四季報を発行し、投資家やビジネスパーソンの皆様の、企業分析のバイブルとなっています。また、ウェブ領域では、2003年から東洋経済オンラインを開始しています。

また、弊社ではデジタル広告に関する報道についても積極的に行ってきました。週刊東洋経済2017年12月23日号では、ネット広告の闇を特集し、冒頭にもありましたように広告業界に大きな衝撃を与えました。また、東洋経済オンラインでも、ネット広告に関する報道を数多く配信しています。

創業者の町田忠治は、創刊の目的を健全なる経済社会の発展に貢献することとしました。時代を先取りした新着な報道、言論活動を追求し、合理的な分析と公正な議論を行い、統計数字やデータの収集に力を入れてきました。こうした伝統を受け継ぎ、当社ではデータに基づいた報道に力をいれています。

経済、ビジネス関連の書籍の他、データ事業を展開しています。1936年創刊の会社四季報では、上場企業全3861社それぞれに担当者がつき、独自の取材と分析を行っています。データやファクトに基づく報道は勿論、デジタル版にも受け継がれれています。
こうした取り組みから、ファクトに基づいた確かなコンテンツを発信し、広告主の皆様から、価値のある評価される広告枠を提供しています。


掲載面の安全性の確保

崎山
東洋経済オンラインでは、先程、豊沢さんがご説明したように、広告主の方にとって価値のある広告枠を提供しているのですが、中には悪質広告が紛れ込んでしまうケースもあります。
不適切、不快なものから、フィッシングサイトと言われる偽のサイトに強制的にユーザーを移動させるものなど、さまざまなものがあります。
こうした悪質広告が、メディアにとっては収益機会の損失になり、ブランドにとってはブランド毀損につながってしまいます。

勝井
デジタル広告は色んなものがでます。なかなか広告としては認めがたい悪質広告、ユーザーの安全性を脅かすような広告が、どうしても運用型広告、プログラマティック広告の世界では出てきます。

例えば、セキュリティ広告。ユーザーがアクセスすると見たい所ではなくて全然違うところに強制リダイレクトされる広告。
次に、フェイクブランド広告。偽の高級ブランドの広告が出ていて、そこをクリックすると安い金額が書かれていて、クレジットの情報を入れてしまうと、物は届かずにクレジットカード情報だけが抜かれてしまう。
続きまして、不快な広告。見るに堪えない露骨な表現・イメージで、その媒体、場合によってはその面に出ている他の広告主さんのイメージを落としかねません。
もう一つ、特にセンシティブな広告です。特に海外によくあるんですけれども、政治色の強いもの。
あとはいわゆるフェイク広告ですね。飛んだ先の記事が本当ではなく嘘の広告、内容で敷き詰められている。
こう広告がパブリッシャー、広告主様のブランドイメージを毀損しかねません。

こういった広告を媒体さんとしてはどうやってブロックすればよいのか。
例えば、ドメインブロック、カテゴリーのブロックを、目視でブロックするものもあります。ただ、先程紹介したようなセキュリティ広告などは手では消す事ができないです。そういう所に我々Geo Edgeのシステムがサポートしております。

事前の設定に基づいて、掲載したくない広告であればそれをリアルタイムでブロックします。さらにブロックしただけでなく、もう一度オークションをかけてプログラマティック広告を出す、というようなシステムで、正しい広告を出して、媒体さんの収益確保にサポートしていくといったものです。

もう一つ、アドウォッチというシステムがあります。これは、既に出た広告の中から、その先出したくない広告を、実際にクリエイティブを見た上で識別する仕組みです。東洋経済オンラインさんでも使っていただいております。出したくない広告が、どうしても出ている場合があり、そういうものを後で見てブロックしたら、そのドメインからはその先でない、というシステムです。

悪質広告をブロックするとことは、媒体さんのイメージだけでなくて、広告主がどれだけ安全な面で広告を掲載できるかということですし、ユーザーさんに安心・安全なインターネット空間を提供できるかということでもあります。

崎山
山口さんこのようなツール導入を始め、パブリッシャーの意識を高めていくことも業界としては、重要と思うんですけどいかがでしょうか

山口
デジタル広告のマーケットを考えると、パブリッシャー、広告主、広告代理店があり、パブリッシャーもそうですが、ステークホルダー全員の意識を高めていかないといけないです。
業界有識者の皆さんの意見を聞いた時に、アドベリフケーションの問題を聞くと、パブリッシャーが直すべきだっていう意見が多いんですね。ただ、蓋を開けてみると、パブリッシャーの皆さんは意識高いなと思います
例えば、アドフラウドの一種でドメイン偽装があり、その解決策として業界団体が推奨している「ads.txt(アズドットテキスト)」というものがあるのですが、パブリッシャーの皆さんの導入は早いんですよ。ただ、「ads.txtを使ってる所から買おう」という流れがあるかというと、残念ながらほぼない。
なので、パブリッシャーの皆さん、あまり意識高くしてくださいというのは言いにくい所はあります。やはりステークホルダー三者が協力し合っていかないと問題は解決していかないんじゃないかなと思います

崎山
ありがとうございます。そうですね。パブリッシャーのみならずステークホルダー関係者の中で健全に向けていくという事ですね。

アドフラウド対策の重要性

崎山
次にアドベリフィケーションの中で「アドフラウド」についての話を詳しくお聞きしていきたいと思います。アドフラウドとはその名の通り「広告詐欺」という意味で、ハッカーや不正業者が、botなどを活用して実際のユーザーに見せかけて、不正トラフィックを発生させて、広告主から広告費を騙し取る行為のことを言います。

山口様にアドフラウドの対策の重要性をお伺いしたいんですけれども、ここ最近のアドフラウドの状況や傾向などを教えていただけませんでしょうか。

山口

これが広告のデスクトップ・ディスプレイで全世界で我々が計測しているリージョンのアベレージになるんですけれども、これで見ると日本の場合は現状2.6%、前回の発表から2.9%という所から改善している事になるんですけれども、欧米諸国に比べると高い水準が出ているかなと思います。
日本の広告費、世界でトップ3に入ると言われているのですが、悪質な行為をもってお金を儲けようとする人達にとっては、日本は「美味しい」マーケットになってしまいます。

アドフラウドをやっている人達は犯罪組織なのですが、全世界にあるので、世界基準の法律ってないんです。日本で発生したさっきの2.6%が、全部日本から行われたアドフラウドかというとそうではありません。世界各国の犯罪組織が日本の広告費を盗んでいるという事になるので、法律で取り締まりする事が難しいです。お金儲けとしては非常に効率的ですし、法律がないのでほぼ罰則される事もない。ローリスク・ハイリターンなため、なかなか無くならないという状況が続いてしまっています。

我々が日本の計測をしはじめた2017年から半年ごとに先ほどのベンチマークレポートを出しているのでこの推移になっています。オレンジの所が日本、黄色がアメリカ、黒い所がグローバルの平均になっているんですけれども、日本は最初のデータだと下がっていたんですが、2017年から2020年まで年々上がっています。

アメリカは広告費については日本より大きい市場なのですが、アドベリフケーションの導入が進んでいますので、2018年から下がっています。ただ日本はまだまだアドベリフケーションの導入が進んでいませんので、止められるリスクが少なく、犯罪組織に狙われやすくなってしまっているのが残念な現状です。

野澤
アドフラウドを計測していると12月ぐらいになると数値が上がっていたような記憶があるんですけれど、今でもその傾向は変わらないですかね?

山口
仰る通りです。年末、年度末もそうなんですけれども、広告出稿量が増える、予算が増えると狙われやすくなります。広告の出稿は増えるんですけれど、別にインターネットユーザーが増えるわけではなく、予算が増えた分の広告費消化の中にアドフラウドが混ざっているケースも多かったりします。

デジタル広告の品質課題に取り組むJICDAQ

崎山
ありがとうございます。
では、業界団体としてどういう所に取組んでいるのかという所で、冒頭に少し触れましたJICDAQについて触れていたいと思っております。

野澤
私はJICDAQの設立準備から参画し、現在もある委員会の委員長として協力させていただいております。
最初に2019年に日本アドバタイザーズ協会が実施した「デジタル広告における意識・実態調査」で分かったことからお話しします。
この調査はアドバタイザー企業、広告会社、メディア企業、マーケティング・アドテクノロジー企業等を対象に行った調査で有効回答数は330ありました。
この調査を行った時点で先程話が出ました東洋経済様の「ネット広告の闇」という特集が組まれてから1年半が経っていますが、アドベリフィケーションという事自体への認識が各プレイヤーの中で非常に低いという事が分かりました。
先ほど山口さんから話もありましたけれど、パブリッシャーさんの中ではアドベリフィケーションの意識は高いんですけれど、それ以外のプレイヤーだと2019年の段階だとかなり低い、という状況です。
このような背景の基、JAA内では日本でもデジタル広告品質を向上させる組織が必要だという議論が行われ、2020年よりJICDAQ設立の準備が始まりました。JICDAQは一般社団法人デジタル広告品質認証機構です。この組織はJAA日本アドバタイザーズ協会、日本広告業協会、日本インタラクティブ広告協会の3団体によって2021年に設立されました。

JICDAQでは、デジタル広告品質に関わる業務プロセスの検証基準を制定の上、それに沿った業務を行っている事業者、広告会社、デジタルメディア企業、デジタルテクノロジー企業の業務品質を精査し認証し、事業者名を公開することでデジタル広告の品質向上に取り組んでいる事業者を明確にすることを目的にしています。
そして現在は「アドフラウドを含む無効トラフィックの排除」と「広告掲載品質に伴うブランドセーフティの確保」、これを品質認証の対象ジャンルにしています。JICDAQでは2022年7月1日時点で、アドバタイザー100社が登録、広告会社やメディア企業、アドテク企業等の品質認定事業者様も100社となっています。未だ参加されていないデジタル広告関連企業の皆様には是非参加をいただければと思っています。
登録等に詳細については是非JICDAQのウェブサイトよりご確認いただければと思います。

崎山
ありがとう御座います。業界団体の活動が高まっているなと感じます。
業界内でもアドベリフケーションという言葉がまだ認知されていない方も一定数いらっしゃって、各対策でも対応できていない割合が高いと思いますので、今後JICDAQの活動の期待が高まっていくことを期待したいです。

東洋経済の信頼されるデジタル広告を目指す取り組み

崎山
私たち東洋経済新報社も、「東洋経済オンライン」「会社四季報オンライン」といったメディアを運営しておりまして、不正広告対策やビューアビリティ対策など進めております。
東洋経済の取り組みについて、豊沢さん、ご解説お願いできますでしょうか。

豊沢
「東洋経済オンライン」では2017年からIASを導入しまして、ビューアビリティ商品の販売を開始しています。「ビューアブルレクタングル」それから「ビューアブルレクタングル動画」という2商品を現在販売しています。
また、ビューアビリティ商品を販売するだけでなく、ビューアビリティ、ブランドリスク、アドフラウドの三指標をそれぞれ各広告枠で計測をしております。その結果がこの資料に記載しているんですけれども、いずれも国内平均のスコアよりも高い指標として実績が出ています。

また、不正広告対策として「東洋経済オンライン」「会社四季報オンライン」ともに2022年からGeo Edgeを導入しまして対策を開始しております。
さらに一連の取組の中で、2022年6月にJICDAQの品質認定事業者に登録されております。

これは6月の1ヶ月間の「東洋経済オンライン」のモバイルのInvalid Trafficの実績を示した図になります。一番左側、Invalid Trafficレートという項目が書いてあるんですけれども、そちらが1.3%という実績になっておりまして、下の折れ線グラフで点線で示してあるのがベンチマークになるんですけれども、弊社の実績としてはそれを下回る実績として出ております。

山口
東洋経済さんは本当に早い段階でパブリッシャーさんとしては我々のソリューションを導入いただいてしっかり取り組みをされているなと思います。
実はモバイルに関する不正インプレッションも年々上がってきています。以前はデバイスのスペックが低く少なかったんですけれども、どんどん携帯電話のスペックが上がってきて5Gになって通信環境も良くなってくると、不正インプレッションが増えてきています。

ビューアビリティも非常に大切な部分だと思います。ビューアビリティを改善することでより広告の効果が上がっていきます。意識高く努力をされ品質が高いメディアは多くありますので、そういった広告枠がちゃんと売れるマーケットにしていかないといけないと思ってます。

豊沢

こちらはGeo Edgeさんから提供していただいているダッシュボードになります。
こういったダッシュボードを活用し日々、配信事業主様がどんなコンディションで我々の広告枠に配信をしていただいているのかを常にモニタリングしております。先程、勝井様がご紹介されていたアドウォッチという機能を使って、各クリエイティブごとのモニタリングも行っています。

勝井
Geo Edgeは国内の媒体さんとしては約20ちょっと、40を超えるパブリッシャーさんにご利用いただいております。
大きく分けると二つあり、今豊沢さんが仰っていただいた、我々の画面をしっかり見てブロックされるという方と、自動的にリアルタイムでブロックするという機能を使ってお任せで対応をされている方とあります。ただ、何週間かに一度はアドウォッチや他の画面で、自分の媒体のコンディションをしっかり見てほしいというお願いはさせていただいています。

豊沢
これはとある広告主様のビューアブルレクタングルの配信実績を示したものになります。黄色い箇所がビューアブルレートになっていまして77.7%と出ているんですけれども、此方はおそらく国内平均を上回る形で弊社としては提供できています。
こういった形で広告主様から評価されるような取り組みをする事でより良いメディアを作っていければと考えております。

崎山
はい。ありがとう御座います。
私たち東洋経済オンラインも、コンテンツならびに広告枠の品質向上に日々努めております。広告主様の皆様に「東洋経済に出稿したら安全だ」とより思ってもらえるサービス作りに、今後とも励んでいきたいと考えています。

東洋経済ブランドスタジオ
https://biz.toyokeizai.net/brandstudio/

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