本と大学と図書館と-4-情報リテラシー (Fmics Big Egg 2018 年12月号)

 新聞等でも話題の新井紀子著『AI vs. 教科書 が読めない子どもたち』(東洋経済新報社 2018. 2)では,学力以前に,教科書の文章を理解できて いないので,アクティブラーニングも英語も順番 が違うという主張が,特に印象的でした。問題文 に出現する分からない漢字を飛ばして読むので は,問題を理解していないことになります。解答 が正答か誤答か,それ以前の問題です。

  読めない子どもが大人になり,指示や仕事の趣 旨を理解できていない社会人になると感じるのは 私だけでなないでしょう。これは,リテラシーの 問題であり,特に最初の読みの障害でしょう。

  リテラシー(literacy:識字)とは,文章を読 み,内容を理解し,文章を書き,計算すること, 更に,それらができる能力を備えていることで す。要するに,読み書き算盤です。Reading, wRiting,aRithmetic の R から,3R’s(スリーア ールズ)とも,英語では言われます。特定の分野 や対象を冠して「情報リテラシー」,「コンピュー タリテラシー」,「メディアリテラシー」などのよ うに用いられることもあります。

  10 年前から「図書館・情報学」という科目を 担当しています。授業目標は以下の 3 点です。一 般教養的な内容で,社会人基礎力ともいえます。

 a)社会生活における課題発見とその解決のため に,情報を正しく理解して活用する能力を身 につける。

 b)情報活用能力を身につけるために,情報メデ ィアと,情報の組織的な提供機関である図書 館の基礎的な事項について,その特徴や仕組 みを知る。

 c)情報の収集・評価・発信の基礎的な演習によ り,情報メディアと図書館を活用するための 理解を深める。 

 この授業の演習の一つとして,学術論文を要約 する課題を課しています。学術論文をインターネ ットや図書館から入手して,その内容を,目的, 方法,結果,結論の 4 項目に再構成して,論文を コンパクトにまとめて書く課題です。この要約の 課題を 2 回繰り返すので,論文の検索,論文の読 み,内容の理解・評価,書くことに習熟する機会 になります。

  選択した論文を読むことは,レポートや卒論を 書く時の参考にもなります。良質な「読み」が, 成果(書くこと)につながり,履修生に好評です。 皆さんも,業務上で興味のあるテーマで論文を検 索し,要約してみてはいかがでしょうか。リテラ シーが向上すること請け合いです。

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