長谷川豊祐

「学びを愉しむインターネット」運営 http://toyohiro.org/

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最近の記事

サブスクとリモートアクセス:道はどこまでも真っすぐ延びている (メディアと教育と図書館と no.57)

 読みたい本や情報は,図書館・書店・Amazonn・インターネットによって,閲覧・貸出・購入・契約できる。自宅を拠点にして,「いつでも,どこでも,(だれでも,)なんでも」アクセス可能な情報化社会の時代である。今回の写真は自転車での散歩コースの道。田園の中を伸びる整備された道は,知識社会に生きている我々にとって,サブスクとリモートアクセスで舗装された高速道路である。  しかし,高速道路の先に「あらゆるものが存在して,ないものはない」としても,在野研究者を自称する一個人が,何も

    • 新聞の紙版とデジタル版の差異(メディアと教育と図書館と no.56)

       現在,「読売新聞」(紙版)朝刊のみを,4,400円/月で契約している。契約料と読み終えた古新聞の処分の手間などを考慮し,1,980円/月で契約できる「朝日新聞デジタル」への切り替えを検討している(コースは何種類かある)。紙版とデジタル版の記事や機能の差をみてみる。  コンテンツに関しては,「朝夕刊、別刷り「be」など紙面でお読みいただける記事以外に、タイムリーな速報記事や動画、3DCGを使用した表現力豊かなコンテンツなど」(Q&Aより)とある。紙版の記事にプラスした内容がデ

      • NDLデジタルで荒地が沃野に変わった:PCのデスクトップに国立国会図書館がやってきた (メディアと教育と図書館と no.55)

        (デジタル化全体の流れを把握のため 2024/08/30 追加)  2014年1月 図書館向けデジタル化資料送信サービス(図書館送信)  2021年3月 資料デジタル化基本計画2021-2025  2022年5月 個人向けデジタル化資料送信サービス(個人送信)  2023年1月 印刷機能の追加 1.在野研究の情報環境  大学図書館で勤務していた37年間は,職場の蔵書だった図書館情報学関連の図書や雑誌は,移動距離なく閲覧・貸出・複写も自由自在でした。退職後の4年間は,在職中か

        • 本のパワーの全開放を(メディアと教育と図書館と no.54) < (「本と大学と図書館と」を継続)

          53回までは,ほぼ月刊で,本の紹介からはじめていましたが,本をメディアまで,大学を教育まで,対象領域を大幅に拡大します。更新頻度も週刊まであげる予定です。図書館目線は(残念ながら)変えようがなく,あえて継続します。変わるきっかけが note から生まれればと考えています。 書店の減少や,出版不況・読書離れが,昨今のメディで取り上げられています。そんな中,ライツ社(兵庫県明石市の出版社)の note「明るい出版業界誌」 で元気な書店が紹介されています。 「ほなび」(広島県庄

        サブスクとリモートアクセス:道はどこまでも真っすぐ延びている (メディアと教育と図書館と no.57)

        • 新聞の紙版とデジタル版の差異(メディアと教育と図書館と no.56)

        • NDLデジタルで荒地が沃野に変わった:PCのデスクトップに国立国会図書館がやってきた (メディアと教育と図書館と no.55)

        • 本のパワーの全開放を(メディアと教育と図書館と no.54) < (「本と大学と図書館と」を継続)

          「本と大学と図書館と」-53- 政策の成果への疑問(Fmics Big Egg 2024年5月号掲載) 連載終了 以降は「メディアと本と図書館」としてnoteにて継続 

           少子化と人口減少への対策として,子育ての支援金制度が創設されます。対策の必要性も,支援のための財源確保も理解できます。支援される金額・方法と,徴収される金額はさておき,健康保険料に上乗せして自動的に徴収するのは,行政者と負担者にとっても簡便な仕組みです。といっても,将来の評価・成果の疑問は消えません。  「政策」としての景気刺激策における,「成果」である消費を学術的に分析している,宇南山卓『現代日本の消費分析:ライフサイクル理論の現在地』(慶應義塾大学出版会 2023)があ

          「本と大学と図書館と」-53- 政策の成果への疑問(Fmics Big Egg 2024年5月号掲載) 連載終了 以降は「メディアと本と図書館」としてnoteにて継続 

          「本と大学と図書館と」-52- 縁は異なもの味なもの(Fmics Big Egg 2024年3月号掲載)

           昨年夏,大学職員の業界研究本(でしょうか?)を速攻で買いました。倉部史記;若林杏樹『大学職員のリアル:18歳人口激減で「人気職」はどうなる?』(中公新書ラクレ 2023)。著者の知名度と帯のキャッチーなフレーズに惹かれたからです。「大学倒産」は大学業界での常套句です。職場環境や個人の就業意識によって差はあるものの,大学職員の現場は,「ぬるま湯」にも「ブラック」にも「高度専門職」にもなります。大学職員を志す人も,続けたい人も,辞めようと迷っている職員も,手に取ってみたい一冊に

          「本と大学と図書館と」-52- 縁は異なもの味なもの(Fmics Big Egg 2024年3月号掲載)

          「本と大学と図書館と」-51- やりがいの「搾取」と社会の「軋み」 (Fmics Big Egg 2023年9月号掲載)

           家庭・教育・仕事には循環関係があります。教育への入口としての家庭,教育の出口としての仕事です。学校を卒業して,安定した職に就き,順調に収入も増え,家族をもって,子どもを育てます。高度経済成長期から1990年代初頭まで,3つの領域は上向きに循環していました。しかし,90年代半ば以降,好循環に亀裂が入りはじめています。貧困と過重労働という過酷さや,精神的な絶望感や空虚さなどです。社会の「軋み」と表現されています。本田由紀『軋む社会:教育・仕事・若者の現在』(双風社 2008)(

          「本と大学と図書館と」-51- やりがいの「搾取」と社会の「軋み」 (Fmics Big Egg 2023年9月号掲載)

          「本と大学と図書館と」-50- 本の神話性 (Fmics Big Egg 2023年7月号掲載)

           先月号に書いた通り,SFと時代小説などの小説類44.65m(約2,500冊)を,5.2mを残して処分しました。旧職の知り合いの古書店に紹介してもらった,隣の市のサブカルチャー系古書店にお願いしました。自宅の保存場所から搬出してもらえる点が決め手でした。当初考えていたブックオフでは,玄関まで自力で運び出さなければならないらしく,体力的に大変そうなので諦めました。  査定総額は3万3千円,1冊13.2円でした。蔵書印を捺してあるものが大半で,古書市場での交換会では商品価値がない

          「本と大学と図書館と」-50- 本の神話性 (Fmics Big Egg 2023年7月号掲載)

          「本と大学と図書館と」-49- 個人蔵書と今後の読書傾向 (Fmics Big Egg 2023年6月号掲載)

           最近の読書傾向は,若者向けの軽い内容の娯楽小説のラノベが多くなりました。会話が多く,文章は短く,気軽に読めます。AmazonのKindleで買って,病院の待合室など,タブレットがあれば,いつでも,どこでも気軽に読めます。スマホの契約時にオマケでもらったiPadが便利です。コミック(マンガも読書)も愛読し,アニメ(ラノベやコミックのアニメ化が多い)も視聴します。  こんな読書の最中に,在職中の読書イベントの際に女子学生から薦められたバーネットの『秘密の花園』が出てきました。ち

          「本と大学と図書館と」-49- 個人蔵書と今後の読書傾向 (Fmics Big Egg 2023年6月号掲載)

          「本と大学と図書館と」-48- 公共施設の再整備 (Fmics Big Egg 2023年5月号掲載)

           老朽化した公共施設の再整備が,全国の自治体で盛んに行われています。単独での建て替えではなく,他の公共施設との機能集約と複合化,長寿命化と維持管理コストの縮減による枠組みで進行しています。地元の藤沢市でも,生活・文化拠点再整備事業に4市民図書館のひとつが含まれ,進行状況と計画内容を注視しています。図書館の社会的な価値が拡大することが期待できます。  複数回参加したアイデア出しのワークショップでは,市の事業に深い関心を示す,意識の高い住民の多いことに気づく機会になりました。市民

          「本と大学と図書館と」-48- 公共施設の再整備 (Fmics Big Egg 2023年5月号掲載)

          「本と大学と図書館と」-47- 知的機動力 (Fmics Big Egg 2023年3月号)

           アフターコロナを契機に,社会の変化にどう対応すべきか考える機会が増えました。打ち合わせや,買い物の多くは,リモートで代替えできるようになって,交通費や移動時間の節約になり,生活習慣も変わりました。円安,インフレの進行,人口減少など,個人生活に大きな影響を及ぼす多くの事象が控えています。  現代人が情報や知識を得る手段は,インターネット後に大きく拡大しました。テレビの報道情報番組,紙の新聞や既存メディアがネット上で発信するニュース,そして,個人によるSNSでの書き込みまであり

          「本と大学と図書館と」-47- 知的機動力 (Fmics Big Egg 2023年3月号)

          「本と大学と図書館と」-46- 大学の反省 (Fmics Big Egg 2023年2月号)

           猪木武徳『大学の反省(日本の<現代>11)』(NTT出版 2009)をやっと手に取りました。“覚えるだけでなく,知りたいと,人間は欲する。知りたいという欲望には,「私的な欲望」というレベルと,知ることの社会的な(公的な)効果という2つのレベルがある。・・・知的な自由と,思想の自由が確保され・・・意図と結果の齟齬を許す自由が人類の知識を生み出した”(Ⅱ 知識の公共性 p.98-103)は印象的です。これは,個々の大学の使命を超えた上位概念の哲学や精神といえます。大学の構成員を

          「本と大学と図書館と」-46- 大学の反省 (Fmics Big Egg 2023年2月号)

          本と大学と図書館と-45-インターネット市民革命 (Fmics Big Egg 2023年1月号)

           1996年は象徴的な年でした。米国のインターネット事情を紹介した,岡部一明『インターネット市民革命:情報化社会・アメリカ編』(御茶の水書房 1996)には,固定料金制の市内電話による「オンラインで話す」という生活パターン,街の公共図書館に設置されたインターネット公共端末からインターネットが無料で使える情報化社会の現状,草の根市民活動が活発な民主主義の国,この3つが詳しく紹介されていました。インターネットが普及すれば,日本も米国のように,図書館が情報アクセスの拠点となって多く

          本と大学と図書館と-45-インターネット市民革命 (Fmics Big Egg 2023年1月号)

          本と大学と図書館と-29- スモールワールドなBOOK PARTY (Fmics Big Egg 2021年3月号)

           スモールワールド・ネットワークという用語に出会ったのは,ダンカン・ワッツ『スモールワールド・ネットワーク:世界を知るための新科学的思考法』(2004年 阪急コミュニケーションズ)においてです。理論的には,世界の人々が,それぞれ100人の友人を持っていれば,六次のつながり(100*100*100*100*100=100億)のうちに,地球全体の人口と自分を簡単につながります(p.40)。“人間関係のネットワークで,知り合いを数人程度たどれば,世界の誰とでもつながりがあるという,

          本と大学と図書館と-29- スモールワールドなBOOK PARTY (Fmics Big Egg 2021年3月号)

          本と大学と図書館と-44-飛躍の好機 (Fmics Big Egg 2022年12月号)

           図書館における経営・管理・運営は,教育とメディアとの関係性を活かし,図書館単独よりも広範囲なサービスを展開できます。  大学図書館は,大学設置基準等の改正に伴い,新たな高等教育サービスへの対応が必要です。公共図書館は,首長部局との関りが強まり,業務範囲が拡張し,公民館・博物館・美術館などの文化・芸術・スポーツを含んだ社会教育から,生涯学習や地域づくりともつながります。学校図書館は,初等中等教育のGIGAスクール構想により,ICTを活用した教育環境が整えられ,授業における情報

          本と大学と図書館と-44-飛躍の好機 (Fmics Big Egg 2022年12月号)

          本と大学と図書館と-43-研究資料の入手 (Fmics Big Egg 2022年11月号)

           退職後も「大学図書館発展の時代」をテーマに研究を継続しています。対象期間は,設置者である大学が発展する戦後から,電子ジャーナル普及に至る2000年まで,対象内容は,学術情報政策,蔵書構築,総合目録,書誌ユーティリティ,機械化,情報検索です。大学図書館の職務や自分の仕事について,何だったのか,どんな成果が達成できたのかを,振り返りたい,明らかにしたい。単純に,何よりも知りたいという個人的な興味なのでしょう。既にライフワークです。  資料の入手に関して,必要な大学図書館関連資料

          本と大学と図書館と-43-研究資料の入手 (Fmics Big Egg 2022年11月号)