長谷川豊祐
「学びを愉しむインターネット」運営
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「本と大学と図書館と」-53- 政策の成果への疑問(Fmics Big Egg 2024年5月号掲載) 連載終了 以降は「メディアと本と図書館」としてnoteにて継続
少子化と人口減少への対策として,子育ての支援金制度が創設されます。対策の必要性も,支援のための財源確保も理解できます。支援される金額・方法と,徴収される金額はさておき,健康保険料に上乗せして自動的に徴収するのは,行政者と負担者にとっても簡便な仕組みです。といっても,将来の評価・成果の疑問は消えません。 「政策」としての景気刺激策における,「成果」である消費を学術的に分析している,宇南山卓『現代日本の消費分析:ライフサイクル理論の現在地』(慶應義塾大学出版会 2023)があ
「本と大学と図書館と」-51- やりがいの「搾取」と社会の「軋み」 (Fmics Big Egg 2023年9月号掲載)
家庭・教育・仕事には循環関係があります。教育への入口としての家庭,教育の出口としての仕事です。学校を卒業して,安定した職に就き,順調に収入も増え,家族をもって,子どもを育てます。高度経済成長期から1990年代初頭まで,3つの領域は上向きに循環していました。しかし,90年代半ば以降,好循環に亀裂が入りはじめています。貧困と過重労働という過酷さや,精神的な絶望感や空虚さなどです。社会の「軋み」と表現されています。本田由紀『軋む社会:教育・仕事・若者の現在』(双風社 2008)(