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「北浜東1丁目看板の読めないBAR〜貸し借り編」
これは、脚本家・今井雅子作「北浜東1丁目 看板の読めないBAR」を元に書いたアレンジ編です。
詳細について、こちら今井雅子さんのnoteも併せてお読みいただけるとわかります。
名前を呼ばれた気がして振り返ると、そこに人の姿はなかった。だが、道端に置かれた小さな看板が目に留まった。
チョークで手書きされた頭のふた文字が消えている。
残されているのは、ひらがなの「か」と「り」とアルファベットのB-
『北浜東1丁目はじまりのBAR』
私がその店を訪れたのは本当に偶然だった。
新年の挨拶に持っていく手土産を買いに、北浜にある紅茶専門店に立ち寄った。買い物を終え、天満橋に向かって歩き始めると、突然雨が降り出してきた。 あまりの雨に身動きが取れなくなった私は慌てて、あるビルのエントランスに駆け込んだ。 あたりは既に夕闇に包まれている。雨のせいか、人通りもない。 私は携帯をいじりながら雨宿りをしていたが、ふとそこにバーの看板が出ている
「ナレーターが見た膝枕〜運ぶ男編〜」下間都代子作
『牡羊座のあなた、今日は西の方角が良いでしょう。運命の出会いがあるかもしれません。』
「へぇ、西の方角ねぇ。俺の担当と一緒じゃないか。なんか良いことあるかもな。」
カーラジオに耳を傾けながら、配達員は大通りに軽トラを停めると、荷台を開けた。
オーブンレンジくらいの大きさだろうか。
慣れた手つきでダンボールを持ち上げようとして、一瞬腰にギュンと響いた。
「うへ、おもっ。なんだこれ」
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