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布が洋服になるまで

みなさんは毎日服を着ます。しかし、着ている服がどうやって作られているかを本当に知っている人はほとんどいません。デザイナーの頭のなかにある服が、どうやって形になり、みなさんの手元に届くのかを少しだけ紹介したいと思います。

デザイナーはどんな服が良いか絵を書きます。この絵のことを「デザイン画」といいます。みなさんがデザイナーと聞いてイメージするのはパリコレクションでスラリとしたモデルさんが、うんと奇抜な服を着て舞台 (ランウェイ) を歩く姿かもしれません。しかし、普通の服にもデザイナーがいて、普通の服のデザイン画を書いています。

デザイナーが書いたデザイン画から、今度はパターンナーが一つ一つのパーツの型紙 (パターン) を作成します。パターンは服の設計図です。パターンナーは絵に描かれた二次元の服を奥行きのある立体に写し取ります。服のパーツの数は様々ですが、多ければ多いほど美しい立体に仕上がる一方で、縫う部分が増えるのでその分価格に跳ね返って来ます。製造過程まで考えた上でデザイン画をいかに現実のものにできるかが、パターンナーの腕にかかっています。

次に素材を選びます。デザインを具現化する色や質感を考えるのはもちろん、肌触りや耐久性も大切にします。服は作品でもありますが日用品でもありますので、どんなに素敵な仕上がりでも扱いにくいと着なくなってしまいます。

そして試作品 (サンプル) の縫製です。作ってみて調整して、また作る。完全するまでサンプルを捨てつづけることになります。だからこそ、調整されてきちんと作った服は高価なのです。でもその代わり、細かな調整をくぐり抜けた作品は、体にそった見事な立体感と、着る人の魅力を引き上げるデザインが両立します。

そこまで取り組み、やっと店頭に並べられるのが、みなさんが目にする洋服です。手を抜こうと思えばいくらでも安く作れますが、きちんと作ると価格以上の価値があります。一枚の布は、多くの過程を経て、誰かの魅力を引き出すパートナーに変わるのです。


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