知床周回シーカヤックの旅 第1章

大学生のとき、先輩とよく、山や川や海に遊びに行っていた。

先輩と私にとって強烈な体験を綴る。

私が大学生2年生のときに、先輩に「知床半島をシーカヤックで周回しないか」と誘われた。

そもそも、私自身、知床半島を知ってはいたが、半島がどれくらい海に突き出でいて、どれくらいの距離をシーカヤックで漕ぐのか、よく知らないで「行く」と返事をした。

よくよく話を聞いてみると、漕ぐ総距離は約70キロほどで、知床の海は天候が変わりやすく、知床半島をシーカヤックで周回するには、1週間くらいは行程を見ておかないとダメだという話を先輩に聞かされた。

これを聞いたとき「そんなの聞いてないよ」と思ったが、もう返事をしてしまったので、行くしかない。

出発までの間に、準備しておくものがあった。知床ではサケやマスが釣れるらしい。釣り道具やキャンプ道具などを準備した。

知床まで車で5〜6時間はかかる。そのため、移動は一日がかりだ。シーカヤック2艇を車の上に積み、交代で運転をしながら知床を目指す。

途中どんな会話をしたか、覚えていないが、唯一覚えているのが、1泊2食付き2980円という宿の看板を見かけて、これは安いなと話したこと。

知床に着いたのが昼過ぎだった。まだ、日も高いので、シーカヤックを車から降ろして知床の海を漕いでみる。ほとんど凪の状態でどこが荒れた海なんだろうと思うほどだった。

ひと通りシーカヤックを漕いでみて、ロールの練習もしておいた。
※ロールというのは、シーカヤックに乗っていてひっくり返ったときに、水上に復帰することをいう。

練習し終わったら、出発に備えてこの日は野営場でテントでキャンプする。露天風呂も貸してもらえて最高だ。

明日から海に出て、半島の反対側までいく旅にでる。こんな経験なかなかできない。

早朝4時ごろに起きて、野営場でのキャンプは撤収し、知床半島周回のスタート準備をする。

まず、シーカヤックを海岸に並べて、キャンプ道具や、食料など、カヤックの中に積載していく。サケやマスを釣るための釣竿はカヤックの甲板の上に縛っておく。

常に海の上なので、用具が濡れる可能性がある。そのため寝袋や食料など、濡れて困るものは全てビニール袋に入れておく。寝袋などが濡れたら命の危険にも晒されるからだ。

これから漕ぎ出すエリアは人が住んでおらず、もし何かあっても助けが来るには時間がかかる。野生動物もたくさんいる。人よりクマの方が多いくらいだ。そのためなかなかの緊張感だ。

しかし「行程として1週間はみておかないと危険だ」と先輩が言っていた割に、食料が明らかに少ない。

米が3キロくらいと、じゃがいもと、醤油くらいしか持たないのだ。「水はそこら辺の沢水で十分だろ。これくらい少ない方がサバイバル感があっていい」と先輩が言っていた。イかれている。

この言葉に少々不安を感じながら、スタートすることになった。

スムーズに進めば2泊3日で進む予定を立てた。

まず、ウトロ側から出発し、知床岬の手前で一泊。2日目は知床岬越えをして2泊目。3日目は羅臼へ向けて漕いで全行程終了の予定だ。

1週間必要というのは、天候が荒れたときに停滞するための時間だ。天候が荒れなければこの2泊3日で済む。これに期待しよう。なんせ明らかに食料が少ない。1週間もたないよ。

ついに洋上へ漕ぎ出す時が来た。色々な不安を抱えながら、前へ漕ぎ進む。常に右側に半島の断崖絶壁を見ながら。

この時は重大な忘れ物をして海へでていることに気づいていなかった。

果たしてこの旅はどうなってしまうのでしょうか。

続く。

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