140字小説集

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記事

「きみと電話してる暇あったらNetflix観てたいんだわ」その言葉を最後に電話が切れた。あれ?今振られた?まさかね…かけ直そうとしたらブロックの現実。ひそかに見てた彼女のSNSは同時刻「このご時世、断捨離がはかどるはかどる」との呟きを更新。きみの部屋が散らかったままならよかった。

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『大地にはもう花しか咲かない』。タイトルの通り、その絵は地平線まですべて花で埋めつくされていた。なんて平和な光景。エデンってこういう感じ?この世界できっと人間は滅んだんだ、とおもった。恐竜が隕石で絶滅したみたいに。自分が主役みたいな顔して、残念でした。滅んだ後ハッピーエンドだよ。

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11

たまたま帰り道が一緒になって盛り上がったのだけど、分かれ道に来てしまった。「今日本屋寄っていきたいし、私もそっち行こかな」本屋に着いてしまった。「俺も本、見ようかな」本、買い終わってしまった。「コンビニでシャー芯を」足りないものは補完されてしまった。「……用はないんですが、その」

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14

17時に会おうと言ったきみがやってきたのは19時だった。冬だった。間違えたと、似ているからと、慌てて告げるきみに嘘はないのだろう。でも突然無理だとおもった。凍えるわたしに一言もなかったので。うっかりものの愛らしいきみは許されることに慣れてしまった、こちらは慣れることなどないのに。

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27

電球が切れてしまったから、背の高い男子にキュキュキュキュと替えていただきたい。と、思いながら私は脚立に登り、自分でキュキュキュキュ替えるのだ。生き返ったかのように明かりは煌々と灯り、この部屋の惨状を余すことなく照らし出す。まず背の高い男子を呼ぶには足の踏み場をつくらねばならない。

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27

「たとえばさ、タピオカとカエルの卵ってすごい似てるじゃん?」「たとえ話下手すぎじゃない?」「えっ」「普通に気持ち悪くて先聞きたくないわ」「せっかくわかりやすく説明しようとおもったのに」「気持ち悪いことしかわからなかった…で、なんの話?」「俺、おまえのこと友達じゃなくて好きみたい」

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23

幼い私が泣くたび、母は何もないところから花を出したものだ。「実はママは魔法使いなの」その言葉を信じ込み、大人になれば私もと目を輝かせた。そんな私も今や二児の母。「ママ、あれやって!」我こそは『手品が趣味な女』の正統なる後継者。タネも仕掛けもありますが、夢の時間をご覧入れましょう。

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29

中学二年、初恋だった。見つめるしかできずに終わった——はずが、私たちは出会い恋に落ちた。『夢』の中で。時を重ねて、十年後。同窓会会場ではにかむ彼の左手に指輪を見つけた。その夜、夢の中の彼は私にプロポーズ。「君に出会えなかった人生を想像できない」笑って、起きた。それが私の人生です。

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25

浮気されていたとおもったら、わたしが浮気相手でした。とても寝つけない夜中、アイツにもらったマグカップを叩き割ってやった。みじめなわたしのちんけな復讐は失敗する。破片を前に涙が止まらない。可愛くてお気に入りだった。毎朝これでコーヒーを飲んだ。代わりなんて誰もなれないはずだったのに。

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朝霧で世界がかすんで見える。このまま自分も溶けてしまえそうな気がした頃に、「早起きなんだな」我に返った。祖父がコーヒーを片手に戸の前で立っている。「べつに」YESでもNOでもない言葉を残して、部屋の中に戻ろうと足を踏み出した瞬間、頭上を大きな鳥が羽ばたいた。「新入りを見に来たな」

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