【実験・検証室】 015:金・銀+ニス
印刷において 金色・銀色を表現 するとき、通常は専用の金インキ・銀インキを使用します。【009|CMYKで金銀の表現】でもお話ししましたが、金・銀などのメタリックインキには着色剤として金属の粉が含まれていて、印刷で紙面に乗ったその金属が光を反射することで、私たちにメタリック感を認識させています。
金インキの着色剤には真鍮粉が用いられ、銀インキの着色剤にはアルミニウム粉が用いられます。金インキの真鍮粉は銅と亜鉛の化合物で、銅の割合が増えると赤口、亜鉛の割合が増えると青口の金属粉になり、それに伴ってインキは「赤金」「青金」となります。
ここからが本題です。
金・銀の印刷についてお問い合わせいただく中で、ニス引きに関するお悩みをご相談いただくことがあります。
【印刷で金色・銀色のメタリック感を映えさせるには、ニスを引かない方が良い】というのは印刷業界の定説です。
これは、物の見え方・光の反射に関係していて、ニスを金・銀の上に重ねることで、ニスなしの時と比べて、目に入ってくる金属の反射光が少なくなるのが原因です。
金インキ・銀インキなどのメタリックインキは、通常のインキと比べて紙への定着が悪いため、紙によって・絵柄によって・加工の仕様によっては、どうしてもニスを引く必要があるのが現状です。
特に、何度も擦れたり触れたりすることが想定されているパンフレットなどの冊子は、弊社でもニス引きをご提案しています。
それに対して、触ったり擦ったりすることが少ないポスターなどでは、ニス引きなく進行できる場合もあります。※印刷会社によります
デザイナー・制作の皆様にとって、想定していた金・銀の輝きが損なわれることは大きな悩みの種だと思います。どうしてもニスを引かざるを得ない場合のために、金・銀印刷においてニスがどの程度見た目に影響するのかは、最低限知っておきたいところですよね。
検証
金インキ・銀インキ+ニスの印刷でメタリック感や色味の変化を見てみよう
検証スタート
金ベタ・銀ベタのオブジェクトを用意し、それぞれにグロスニスとマットニスを引くことで、ニスがない部分との差がどのように見えるかを確認します。今回はメタリック感についての検証なので、ベタ(金銀各100%)のみにします。
印刷検証資料の印刷データはこちら(K+金+銀とニスデータ)
印刷は5色機で行います。刷り順は、K→金→銀→グロスニス→マットニス(1パス/一回で印刷)です。
印刷結果
印刷しました。
ニスを重ねていない中央部分は、金インキ・銀インキの性質通りメタリック感が出ています。それに対して、グロスニスを引いた上1/3と、マットニスを引いた下1/3は、メタリック感が減退していています。
グロスニス部分には、ツヤ感はあるものの、メタリック感という点ではニス無しの部分より劣ります。CMYKで表現する金色(黄土色)・銀色(グレー)に近くなってしまった印象です。
マットニス部分には、金・銀にしっかりマット感が乗っている印象です。
経験上感じることのできる【マットな金色】【マットな銀色】になっていて、これはこれで狙って使うこともできそうです。ただ、グロスニスと同様、メタリック感という点ではニス無しの部分よりかなり劣ります。
補足)印刷方法による違い
インキの刷り順、もしくはインキを乗せるタイミングによって、メタリック感のえ方は若干ではありますが変化します。比較として、お渡しする検証資料とは別に、ニスを重ねるタイミングを変えた印刷もしてみました。
K→金→銀の3色を印刷し、乾燥させた後、グロスニス・マットニスを重ねて印刷しています。
目視でも写真でも分かりにくい程度に若干ではありますが、1パスで印刷した方がニスによるメタリック感の減退は大きく、金銀を乾かしてからニスを引いた方がメタリック感は残っている印象です。
これは1パスで印刷する際に、逆トラッピング(逆トラ)という現象が起きるためだと考えられます。(印刷寄りの話になるので説明は割愛します)
このように、インキ・ニスの種類や印刷時の盛り、印刷環境、印刷用紙によっても仕上がりは変わってきます。必ずしもお渡しする資料通りに印刷が出るということではないことをご了承ください。
ご質問の多かった金・銀+ニスを
1枚の検証資料にしました。
ニスによって変化するメタリック感の参考に。
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