新しいお母さんとのお別れ。

小学6年の頃、
父親が帰ってこない日が
続いたことがありました。
数ヶ月だったでしょうか。
帰ってこないということは、お金も
家に入れてなかったのか、
新しいお母さんは仕事をすることに
したようです。
腹違いの妹の面倒を見てほしい、と
頼まれました。

まだ2才くらいだったでしょうか。
新しいお母さんが夜に仕事に
行っている間、私と弟は
腹違いの妹の面倒を見ながら
過ごしました。
いや、今から考えたら
面倒を見ていると言えるのか、
記憶は曖昧ですが、
私の欠けた人間性で
あの妹を死なせなかったことだけは
本当に良かったと思っています。

新しいお母さんが働いて少したった頃、
父親が突然帰ってきました。
新しいお母さんは、夜の仕事をしており、
その時に知り合った人と
恋人同士になったようです。

それを知った父親は怒り狂い、
新しいお母さんに暴力をふるいました。
子どもたちは部屋にいくように言われて、
暴力をふるっている音だけが
聞こえてきました。

何かがぶつかる音、
何かが割れる音、
新しいお母さんのうめき声、
父親の怒号。

私と弟と妹は、ぎゅっと抱き合って
ぶるぶる震えていました。
あの頃はよくわからなかったけれど、
18才で私の父親のようなおじさんと
結婚をし、小学生になる子供を
育てさせられ、
夫が行方をくらまし、
お金もなく、
夜の仕事に就いたら
素敵な人に出会ってしまった。
誰も、新しいお母さんを責めることは
できないのではないかと
私は思うのです。

父親と新しいお母さんは
別れることになりました。
新しいお母さんは、「ごめんね。」と、
私に言いました、
父親がいない間、私と新しいお母さんの間には
信頼関係のようなものが
生まれていたと思います。
私と弟のことは連れていけない、と
悲しそうに謝る新しいお母さんに、
何も言えませんでしたが
妹とどうか幸せになってほしいと
心の中で願いました。

たくさん意地悪をされたり
嫌な思いも悲しい思いも
たくさんあったけど、
別れる頃には
私は、
新しいお母さんのことを
嫌いではありませんでした。


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