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19世紀末~食器やインテリアとしてのバルボティーヌブーム

アールヌーボー(Art Nouveau 1890-1910年頃)の頃以降、特にフランスでは経済的に大変豊かな(産業革命や植民地支配による)時代が続いておりました。
特にフランスの1900年前後はベルエポック(良き時代)と言われ、「退廃的」とか「享楽」とか後の時代に表現されるほど人々は我が人生を謳歌していたのです。
そのような時代背景もあって、鮮やかな色彩で、凸凹、装飾過多なバルボティーヌが大変流行りました。

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バルボティーヌという言葉は窯やブランド名ではなく泥漿(泥漿とは、鉱物や泥などが混ざっている液状の混合物)を意味するフランス語です。
そのルーツは16世紀まで遡り、ベルナール・パリッシーによる「田園風土器」が起源とされています。
これらの陶器は、時の王妃カトリーヌ・ド・メディシスなどの庇護のもとに生産され、貴族などの富裕層の間で珍重されました。
パリッシーの陶器は、ルーブル美術館にも展示されております。

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パリッシーの「田舎風陶法」は中世の釉薬をかけた陶器を再現したものです。実際の動物・植物から型を取り、それを釉薬で覆って作り上げた緻密な塑像は彼独特の技法であり、パリッシーが手掛けたとされる大皿や大きな容器にこの装飾を見ることが出来ます。

作品には、魚や爬虫類、両生類、甲殻類といった小動物や植物、貝殻などの立体的な浮彫が巧みに配置されており、理想的な自然界を表したものと言われいています。さらに、この独特の技法は高級食器だけにとどまらず、テュイルリー宮殿の工房で王室の為の作品も手がけました。

「理想的な自然界を表したもの」と聞けばなるほどなと思いますが、初見だとインパクトが強いのでちょっとびっくりしてしまう方も多いかもしれませんね。

さて現代でアンティークとして取り扱いのあるバルボディーヌはというと、可愛らしいものばかり。当店で以前取り扱いのあったものをご紹介します。

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sarreguemines(サルグミンヌ)によるもの。およそ1880年代。

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番の小鳥たちとチェリーが可愛らしいお皿でした。表面の凹凸があるので飾り絵皿に向いています。

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こちらもsarreguemines(サルグミンヌ)。

サルグミンヌはドイツとの国境に隣接する町サルグミンヌで1784年に創業された陶磁器メーカー。
その品質の素晴らしさからナポレオンも愛したといわれ、大きな会社へと急成長を遂げるも戦争を経て、サルグミンヌがフランス領からドイツ領となったことでサルグミンヌ窯は1879年にフランスのブルゴーニュ地方の小さな町ディゴワンへと窯を移すことになりました。
そこで当時すでに陶器の制作を行っていたDigoin(ディゴワン)と合併、その後は100年以上ディゴワン&サルグミンヌとして陶器の生産を続けていましたが2007年に廃業しています。

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こちらはパリッシースタイルにとっても近いもの。お皿のデザインは、中心部に大きなカニと海岸を立体的に描いています。周りには貝と海藻が並び、これは、マヨリカ国境の海岸を表しています。

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