雑記【doctor play set】

愛猫、ダイズの肛門から尻尾の根元にかけてが禿げた。患部をしきりになめるので露出した皮膚が赤くなり痛々しい。

毎日々々、可愛い可愛いと阿呆みたく撫でていたのに、私はその愛猫の肛門が禿げあがっていることに気づかず、友人宅で化学味のメロンソーダを飲んでいた。殺されたい。

愛猫の肛門が禿げていることを見つける前日、私は100円ショップで550円(税込)の「doctor play set」を購入していた。金がないくせに金をドブに捨てるのは得意なんである。

そんなことはどうでもいいのだが、つまりは「お医者さんごっこ」をするための玩具を、ハリボテの薄っぺらいプラスチックの玩具を、無職の精神異常者が550円出して購入したという、ただそれだけである。

そしてそんなことは、糞ほどどうでもいいのだが、私はその「お医者さんごっこセット」にある聴診器で愛猫の心臓の音を聞いてみたり、注射をしてみたりと散々遊んだのだが、はて、どうして気づかなかったのか。

私はあんなに可愛がっていた猫の禿げ一つ見つけられず、水色とか黄色とか赤とかの、五月蝿い色した馬鹿みたいな聴診器を使って馬鹿みたく遊んでいた。いや、猫を玩具にして、阿呆が馬鹿みたく遊んでいた。

なにが、お医者さんごっこだ。
なにが、可愛がっている、だ。

つまりは、わたしは、
「可愛がりごっこ」をしていたんである。

プラスチックのハリボテ玩具よりも薄っぺらい人間の、薄い薄い偽りの善の皮がめくれあがっていく。女児用の指輪のメッキなんか比較にならないほど剥がれやすいその卑怯な皮の、なんと情けないことか。

罪の意識を感じて、何処にも感情のやり場がなく、そっと手を愛猫の体に置くと、目を閉じて気持ち良さそうに喉を鳴らすので、たまらなく死にたくなった。

病院へ連れて行く途中、愛猫の目はずっとまん丸で、不安げに鳴いていた。
肛門線を絞られ、注射を打たれ、私をまん丸の目で見つめて鳴く。


薬を処方されて帰宅し、カゴから放つ。

翌日、薬をスプーンの裏で砕いてウエットフードに混ぜて与える。

愛猫は好きなウエットフードが食べれて嬉しいようで、尾をぴんと上に伸ばしてついてくる。

青い抗生剤の粉が混ざった、青みがかった
「毒入りちゅーる」を喜んでなめる。

撫でると、喉を鳴らす。

もふもふ、もふもふ、可愛い、猫。

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