行動経済学の本として有名なこの本。ようやく読み切ることができた。結構ボリュームがあったが、内容は平易で読みやすい。
トピックは様々なのでいくつかメモを。
まずは、私たちが価格というものにどのように反応するか。人々はかつて触れた価格に影響を受ける(アンカリング)をふまえた説明。
人間は、思ったほど合理的ではない。ならば経済学での市場価格の意味合いも変わってくるということだ。
次は、無料!の力を生かすという項目での話。
示唆に富む内容だ。私たちは、分かっていても無料!の魅力にあらがうことはできない。
次は、イスラエルの託児所で子どもの迎えに送れる親をどうにかしたいと思った託児所が罰金を導入したら、むしろ遅刻が増えたという話。
社会規範が重要視されなくなり、多くのことが効率性の観点から語られるこの時代には耳が痛い話だ。ちなみに、イスラエルの託児所の話については、以前に読んだこの本でも述べられていた。
お金のない社会について。
この問いはとても面白い。私たちは貨幣の機能として①価値尺度、②交換手段、③価値貯蔵といったことを学ぶ。だが、価格で示されることで不快感を覚えることもあるだろう。ボランティアでやっていたことを外野から価格で評価されたとたんにやる気がなくなってしまうということも一例だろう。もしお金がなかったら、と考えることで私たちはお金を持つことで失っているかもしれないことへ思いをはせることが可能となる。
次は環境問題に関する話。キャップ・アンド・トレード(排出権取引)については以下のように述べられている。
また、人間は長期的には利益の得られることでも、短期的には不利益があるとその不利益を過大に受け止めてしまう。
その奥の手を見つけるのが、意外と難しいのかもしれない。
次は「扉をあけておく」という章での話。ロバの話は「ビュリダンのロバ」というそうだ。
何かを選ぶということは、何かをあきらめておくことである。このトレードオフの関係に悩まされている間にも、時は過ぎ去っていく。そのことを忘れるべきではないということだろう。
他にも、様々な実験のエピソードが面白く盛り込まれている。性的興奮と大学生の実験についてやビールを用いた実験など、よくまあ思いついたものだと感じる。未読の人はぜひ読んでみて欲しい。