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40代で遺言書を初めて書いた。その理由について①

こんにちわ。先日、自分の遺言書を初めて書きました。自分自身、父の相続で非常に大変な思いをしましたし、誰しもにいつ何が起こるかわかりませんので、前々から早く書かないと思っており、やっと行動に移せました。そのプロセスで色々と考えることができたので、ブログしておきます。

2024年5月末、法務省の2021年度から始まった新しい制度「自筆証書遺言書保管制度」を利用して、無事に受付と保管がされました。制度はこれです。

この制度のHPはこちらです。

手続きは至って簡単。HPで内容を確認して自分で遺言書を書き(私はA4で1枚)、法務局へアポをとって出向きます。手続きは1時間。面談後、遺言書として中見が有効かの一定の確認も職員が複数人でしてくれ、料金3900円を印紙で支払って終了。初めてなので心理バリアはあるものの、至って簡単でした。

この制度、ざっくりいうと、既存の制度に対して、以下のメリットがあります。

公証役場で行う公正証書遺言と比較して、手続きが簡単で費用がかかりません(公正証書遺言は、弁護士や銀行に頼む必要があり、初期で10万円〜数百万円、遺言執行時に相続資産額の1〜2%+数10万円の費用がかかります。それに対して3900円の初期費用と、死亡後に通知をうける指定人が払う数千円程度で済みます)。

自分の家や貸金庫に保管する自筆証書遺言と比較して、その効力が無効になるリスクを大幅に下げられます(遺言書の形式が整っておらず無効になるリスク、発見されないリスク、誰かに改ざんされてしまうリスク、家庭裁判所で開ける前に誰かが開けてしまって無効になるリスクなど)。また、家庭裁判所の検閲が必要なく、検閲の1ヶ月程度の期間がなくなるため、ただでさえ忙しい死亡後における手続きがスムーズに進みます。

今までの制度の問題をかなり解決した、かゆいところに手が届く良い制度と言えるでしょう。とりあえず、今の私にはピッタリ!!実はこの数年、相続回りではかなり素晴らしい制度が登場してきているのです(説明は割愛しますが、金融機関にこれ一枚持っていけば凍結解除して相続が開始できる法定相続情報証明制度、この3月から始まった死亡者の生まれてから全ての戸籍謄本を一気に請求できる広域交付制度、そして今回紹介している自筆遺言の保管制度)。

また、ここがポイントでもあるのですが、作成が大変な財産目録一覧を作る必要はなく、A4用紙1枚をかけばとりあえずは有効な遺言書として受領・保管してくれます。

財産目録は、1年や2年もすれば金額などが変わってくるものなので、それが求められないまま「意志」を残せるのは大変に助かりますね。法務書のHPの説明書などを見ると目録を書くのが標準のように記されていて、「目録なしで大丈夫か?」と面談の当日まで心配でしたが、当日に口頭でも確認して、目録なしでも全く問題ありませんでした。

日本では、他の先進国に比べて遺言書の作成が極めて低いとされています。以下の調査によると60歳~79歳で遺言書をすでに作成している人は3.4%(自筆証書遺言が2.1%、公正証書遺言が1.3%)、近いうちに作成するつもりがある人は13.9%というデータがあります。法務省の過去の調査では、死亡する前に遺言書を残した人は約10%と言われております。40歳代で書いている人は、おそらく1%以下かもしれませんね。

一方、海外の先進国を見ると、年齢を区切ってなどで色々な数字がありますが、アメリカでは約5割、イギリスでは約7割、オーストラリアで5割が遺言書を書いているようです。しかも若いうちから書くのも一般的。

成人後には交通事故などに遭った時の治療判断の代理人を託しておくとか、結婚や出産時で家族構成が変わるタイミングで行政や病院から遺言の案内があるなど、社会に揉め事を減らすような啓発がいたるところに入り込んでいます。

ちなみに、遺言書の様式や相続の制度は、日本と外国でも結構違います。米国ではタイプライターやパソコン打ちがマストなのに、日本では自筆がマストです(今、日本でも電子化の議論が進んでいます)。また、お金に関しては日本は遺留分という考えがありますが、米国ではその考え方がありません(遺留分:遺言書に関わらず、法定相続分の半分の額の請求を持つ相続人の権利)。

日本では、遺言書は書いた方がよいのか、書かなくてもよいものなのか。これはどういう有識者や専門家に聞いてもそう言われると思いますが、遺言書は財産の多い少ないに関わらず、家族構成にも関わらず、死期が近くても遠くても、確実に書いておいた方が良いものです。ただ、遺言書が関係する相続に出会う回数は、通常は数回と、人生においてもそう多いものではなく、その大切さを個人が理解できる機会は意外に少なく、リテラシーは蓄積しずらい分野と思います(なので学校とかで教えるべき項目でしょう)。

「縁起が悪い」とか「死ぬ気なのか?」とかの誤解を受けたり、死に向き合う宗教が身近にない日本ではなかなか理解されないかもしれません。ただ、誰しもに遺言が必要という認知は、これから大きく高まると思います。高齢化が進展するという面もありますが、むしろ、このブログのテーマでもある「人生とお金に向き合う」「資産運用を考える」という文脈から、そうなると思います。

現代の日本ではiDeCoやNISAの制度が整えられ、一般の方でも資産運用が当たり前になる時代が訪れ、人々の資産運用についてのマインドも大きく変わりつつありことは皆さんもご存知の通りでしょう。おそらく、これに何年か何十年か遅れて、人々が若い健康な時期から遺言書を書くという行動が、資産運用の文脈で、より当たり前になると思います。

哲学者のニーチェの有名な言葉があります

【少しの悔いもない生き方を】

今のこの人生を、もう一度そっくりそのまま繰り返してもかまわないという生き方を、ということです。

資産運用は、自分の人生を自分らしくプロデュースするための手段です。決してお金が目的ではない。そして資産運用という長い航海の間には、様々な苦しいことがあり、目的をきちんともたないと航海は続けられません。そして自分の人生を考えるとは、最期の時を意識をすることに帰結します。

前置きが長くなりましたが、私が遺言書を書いたのは、上記にある新しい良い制度ができたことに加えて、下の3つの主体的な理由です。それについて書いていきたいと思います。

<私が遺言書を書いた3つの理由>

①残される家族のため
②自分の人生を大切にするため
③資産運用の戦略を決めるため

次回に続く

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