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40代で遺言書を初めて書いた。その理由について②

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2024年5月末、法務省の2021年度から始まった新しい制度「自筆証書遺言書保管制度」を利用して、私の遺言書が無事に受付と保管されました。

私が遺言書を書いたのは、この良い制度ができたことに加えて、下の3つの主体的な理由です。それについて書いていきたいと思います。

<私が遺言書を書いた3つの理由>

①残される家族のため
②自分の人生を大切にするため
③資産運用の戦略を決めるため

①残される家族のため

まずは一つ目の理由は、残される家族のため。実は、遺言書が無いと、私がこの先15年間ぐらいの間に死んでしまった場合、かなり高い確率で残された家族が苦労をすることになります。

大きな理由は、未成年者が法定相続人になる場合、必ず、第三者の特別代理人を付けなくてはならないから。私の場合の具体で言えば、長男と次男に親戚や弁護士などの代理人を任命しなければ、私名義の財産は相続することができないのです(そして今、次男は5歳です)。

家族の財産なのにそんな馬鹿な話あるか、と思われる方もいると思います。例えば残された奥さんが未成年の子供たちに変わって、忠実な代理人をやって決めれば良いのではないかと。残念ながら、これはできないんです!

背景は、世の中の家庭は色々と複雑な事情を抱えているからです。分かり易いケースを言えば、ネグレクトや虐待などをしている毒親(配偶者)が、残された財産を全てぶん取ってしまい、酒やギャンブルに使ってしまうなどが想定されます。配偶者は遺産の1/2を、子供が二人いれば遺産の1/4がそれぞれ法定相続分なのですが、配偶者が全て決めて良いとなれば、こういう事が起こってしまう。法定相続人間には、どちらかの取り分が増えればどちらかが減るという極めて分かり易い利害関係が成立しているのです。

よって、相続される財産を動かすには(具体的には銀行口座の死亡凍結を解除して引き出すとか、不動産の名義を変えるとか)、相続人に未成年者がいる場合は代理人を任命し、相続人全員で遺産分割協議という話し合いをし、文書でその内容を確定させなければなりません。そして、その情報を元に司法書士などが証明文書を出して、実際の相続手続きが開始できます。さて、では代理人を親戚などの近しい人に頼めば良いかと言えば、それでも色々な問題が発生します。ちょっと頭を働かせて想像をしてみましょう。

①起こりうるリスク その1

未成年の子供の代理人を親戚に頼むということは、その親戚に相続される全ての財産を見られることを意味します。代理人も責任を持ってサインするので、すべてを確認するのは当たり前ですよね。そして財産の大小に関わらず、いろいろな遺恨を親戚間に残してしまい、残された配偶者や子供が、その後長い間、陰であれこれ言われるリスクが発生します。

財産を見た親戚の心の中。。。

財産が少なかった場合「XX家は、いつも羽振りが良さそうにしていたのに、以外に財産が少なかったなぁ。見栄っ張りだったのか。これからは年始の贈り物とかお年玉の額とか見直そう。そういえばお爺さんからの遺産はどこに消えたんだろう。奥さんの方にあるのかもしれないけど、無駄遣いしたんだろうか。お爺さん可哀想だな」

財産が多かった場合:「XX家は、こんなに財産が多かったのか。普段はケチだったのに溜め込んでいたのか。これからの親戚の集まりの時は、食事代などもっとお金出してもらうことにしよう。また将来お金に困ったらアテにさせてもらおうかな」

などなど。人間、見てしまったものは脳裏から消すことは中々難しいですよね。そしてその内容を「ここだけの話」として他の親戚などに話してという連鎖が悪気もなく続いてしまい、伝言ゲームで事実無根な話になってしまうことも多いのではないでしょうか。

次いで、子供が18歳を超えて成人したからと言って、財産を法律通りの持分で渡すべきかという論点があります。

①起こりうるリスク その2

自分の子供が18歳を超え、代理人のいらない法定相続人になったとしましょう。極端な例ですが、この18歳の子供が悪い先輩たちと連んでいて(お金を召し上げられている感じ)、またギャンブルに興味がある状態であれば、私は財産を子供に渡したくありません。ただし、本人が法定相続人である限りは、親である残された配偶者がどう言おうと、財産の一部を受け取る権利が子供に発生します。また子供が請求したら確実にそうなります。

25歳であればどうでしょうか。おそらく、まだそれほどお金を稼いでいない時期に、大きなお金が相続でぽーんと入ってくることは、その人にとって幸せでしょうか(芸能人やスポーツ選手などでもありえると思います)。ここは価値観次第ではあるものの、もし片親が生きているのであれば、その片親が財産を全て受け取るというのは一つの良い方法でしょう。

お金を渡す基準を成人の18歳にするのか、25歳にするのか、30歳にするのかは、まさに家族の価値観次第ですが、私個人としては、子供たちへ「特に若い間は、自分で稼いだお金の範囲で暮らす」という状態を提供するということは、自立して生きていくために大事なプレゼントに思います。親の金で贅沢したところで、それは長続きしませんし、金銭感覚が狂ってしまうリスクもあるでしょう。(それは私の貧乏根性なのかもしれませんが)

と、子供が相続人の場合の2つのリスクを書きましたが、残された財産を相続人以外に見られずに配偶者に渡したい場合、実は以下の二文のような遺言書として書いておかなければ大きなリスクを伴うのです。

「遺言者は、XXXに財産を相続させる」
「遺言者は、この遺言の遺言執行者としてXXXを指定する」

こういう遺言書がないと、残された子供、配偶者、親戚などが多方面でぎくしゃくする可能性があるということです。

人がいつ死ぬかは、さっぱり分かりません。ですので、特に若い子供がいる場合は、残された人が苦労しないよう、財産が多かろうと少なかろうと、家族構成に関わらず、基本的に遺言は書いておくべきなのです。もちろん、遺留分の請求ということもありますが、遺言書があることで揉め事を大きく減らすことは間違いありません。

「いやいや、うちは親戚が仲が良く、親戚を特定代理人に任命するから大丈夫」という人もいるでしょう。私はその考えはとても甘いと思いますが、代理人を付けるには家庭裁判所への請求が必要で、また、手続きにはおおよそ1ヶ月ほどかかります。家庭裁判所使い慣れている人なら良いですが、多くの方には心理的なハードルも高いのではないでしょうか。また、弁護士などの第三者を選ぶ場合には、何十万円なりの費用が発生しますし、厚意にしている弁護士がいない場合はゼロから探すのも大変でしょう。また、そもそも親族が亡くなって慣れない作業で忙しい時に、これらの諸々の負担を残された人にかけたくはありません。

これが私が遺言書を書いた一つ目の理由です。残りの2つの理由は次回に記したいと思います。

次回に続く。

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