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民泊を理解するため、旅館や不動産賃貸との違いを書き出してみた①

今日は民泊について書きます。先日、民泊に関する講義を受け、旅館業や不動産賃貸とのビジネスモデルの違いを、自分なりに整理することができました。

私、金融投資も不動産投資もパッションアセット投資も、プロとしてまた個人としても色々やってきましたが、民泊や旅館業については今のところ未経験です。それを前提に、未経験者が新しいトウシのトビラを開ける勉強の過程として、読んでいただければと思います。(だいぶ長くなったので、3回に分けて書かせてください)。

まず民泊とは、一般に2018年に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)で規定される活動のことを指します。旅館業法で定められるホテル・旅館営業と、不動産の住宅賃貸業の中間にある「住宅宿泊事業」のことになります。国家戦略特別区域である大阪府・大阪市や東京大田区での特区民泊は除かれます(以下、住宅宿泊事業の活動は民泊とします)。

この旅館業、住宅賃貸業、民泊の3つは、全て不動産に関わる事業の範疇になるわけですが、この3つの違いを整理しながら民泊の特徴について理解をしていければと思います。

その① 監督官庁の違いについて

下の図をご覧ください。民泊こと住宅宿泊事業を管轄しているのは都道府県、観光庁、国土交通省の3主体となります。一方の旅館業は厚生労働省、不動産賃貸業は国道交通省が管轄となります。

https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/law1.html

個人が民泊をやるとなると、真ん中下のピンク色の事業者となりますので、監督官庁として意識するのは都道府県知事等ですね。実際は市区町村の窓口に手続きや連絡を行うことになります。そして、集客をするAirbnbなどの予約サイト運営は観光庁が管轄、様々な管理業務を行う管理業者は国道交通省の管轄となります。いずれにしても、民泊は複数の官庁が横串で関わっているということにになります。

その② オーナーの物件保有の違いについて

3事業とも不動産物件の空間を、他人に、ある期間、貸す事業な訳ですが、オーナーの物件保有について以下のような違いがあります。

旅館業:保有または賃貸した物件を使用する

不動産賃貸業:保有
した物件を使用する(リースの場合は賃貸)

民泊:保有または賃貸
した物件を使用する

民泊については保有でも賃貸でも、参入が可能です。自分で貸せる物件を既に持っている人は、それが各自治体の規定をクリアできれば、民泊をスタートできます。接道など様々な規定がありますが、床面積が200平米以下で2階以下の物件であれば、大きな改修なしに民泊をスタートできる可能性が高くなります。

一方、自分で貸せる物件を持っていない人は、誰か他のオーナーから物件を借りてそれを転貸するか、不動産賃貸業のように物件を購入して貸す、のどちらかを考えることなります。

そして現在の民泊における主流は、前者の賃貸して転貸になるので、不動産賃貸業が何千万円などのお金を用意して不動産を購入するのがスタートであるのに対して、民泊は初期投資を押さえて事業をスタートできる選択肢があると言えます。

ただ実際には、民泊向けとして賃貸されている物件は、敷金や礼金を多く払う(合わせて5ヶ月分以上はザラ)、必要な家具等を入れる、保健所や消防の規定に見合った設備投資を行うなど、数百万円の初期投資はかかってきます。不動産賃貸業に比べると初期投資のハードルは低いものの、それなりの費用はかかるということですね。

現在、民泊OKで賃貸に出ている物件は非常に少なく、競合も非常に激しいです。

管理組合などがある一般のマンションなどは、民泊禁止の規定が敷かれていることが殆どですし、別荘地などでも禁止されていることが多いです(私も昔マンションの理事長をやっていたことがありますが、その時に民泊禁止のルールを導入しました)。

民泊賃貸物件を紹介しますという専門業者に相談しても、なかなかの塩対応です🧂。なので民泊を始める次のハードルは「物件探し」そのもになっています。

また、民泊向けの賃貸物件では、借り手の立場が弱い定期借家契約で借りることが一般的です(契約期間が2年だとして、一般賃貸契約では借り手が2年後も同じような家賃で借り続けられます。一方の定期借家契約の場合は、大家さんに言われれば借り手は退去しなくてはなりませんし、再契約をするにしても大幅な家賃の値上げなどを受け入れざるを得なくなります)

その③ 借り手の滞在日数の違いについて

借り手の滞在日数については「1ヶ月」が大きな分かれ目になっています。

不動産賃貸業:1ヶ月以上が対象となります

旅館業:1回につき1ヶ月未満の宿泊が対象となります。365日を通して運営できます。

民泊:1回につき1ヶ月未満の宿泊が対象となります。年間180日まで運営ができます。

民泊について180日を超えた日数は、1ヶ月以上の貸し出しであれば可能です(マンスリーの貸し出し)。ウィークリーの貸し出し、数時間のパーティスペースへの貸し出しはNGです。

ここで、単純に営業可能日数を見れば、物件の稼働率をできるだけ上げる(空室率を下げる)という点においては、民泊より旅館業の方が数字上は有利と言えます。ただし、各市町村によって旅館業や民泊で運営できる基準は大きく変わる(旅館業の方が規定が厳しい)、税金などかかる費用が異なる、客室単価のロジックも異なるため、営業可能日数から民泊が旅館業より収益性が低いという単純な図式にはならず、全ては物件と経営次第だと考えることが大切になります。

一般に旅館・ホテルは6〜7割の稼働率を目指す中、民泊で180日しっかりと稼げるのであれば、旅館・ホテルよりも採算が取れるケースも充分にあり得るというのが、正しい理解になってきます。

その②に続く。

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