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1970年代に原野商法で騙されて土地を買った方の別荘地管理費を2020年代に跳ね除けた話。

原野商法とは、田舎の山奥などにある価値の無い土地を「リゾート開発をする予定」「新幹線や高速道路が建設される」といった謳い文句であたかも土地の値上がりが確実であるといったような虚偽の説明をして一般消費者に売りつける悪徳商法です。

現在(2023年)においては、太陽光発電詐欺(太陽光発電設備を設置する土地の権利を売りつける)・バーチャル原野(インターネット上の仮想空間の無価値な土地を売りつける)といった別の意味の原野商法があるようですが、本記事ではこれらを含みません。
いわゆる昭和のTHE・原野商法被害の方から相談を受けた事例の経緯と顛末を書きます。

きっかけは過去に当社でマンションを購入してくださったお客様の来店でした。
購入は20数年前で、現在70歳近くの方です。(以降Aさんとします。)

たまに当社の近所を散歩されていますし、たまにご来店されるので特別不思議なことではなく、いつものようにお茶をお出ししてお話を聞いていました。

Aさん「夫が所有している◆◆別荘地の土地をなんとかしたい。」
わたし「えー!Aさん、そんなところに土地持ってたの?」
Aさん「夫が、バブルの時に騙されて買っちゃったんだよ」
わたし「あらら。買ったときはおいくらでした?」
Aさん「500万。いろいろ自分でもネットで見てた。まず買値で売れないのは分かってる。捌くのにお金が掛かるのもわかるんだけど、毎年管理費の請求もくるし、こんな辺鄙なところを娘に残したくないんだよね。」
Aさん「調べてみます。その土地の購入時の資料とか全部持ってきてくれます?」
Aさん「実は持ってきた。なんとかしてちょうだい。頼んだ!」
わたし「えぇー!」
こんなやりとりでした。

正直、まいったなぁというのが本音です。

昔の悪徳不動産業者は全国各地いろいろなところでこの手法をやっていたんです。
東日本だと、北海道(ニセコ)・那須・軽井沢・伊豆 とかですかね。メジャーなところ以外でも結構ありますが、割とネームバリューがある地名を使ってやってるんです。
私も何度かそういう物件と対峙したことはありますが、まぁ格闘してもうまくいかない。

ですが当時購入した方々は数十年経って家庭を持ち子供が巣立ち、みんな同じことを考えているんです。子供に負の財産を残したくない。
いわゆる「なんとかしたい!」のです。
さぁ早速レインズを見てみると出るわ出るわ同じような土地。
価格を好き勝手につけて都内の業者からリゾート専門業者まで同じような物件が出てました。やっぱりな。これではまともに売れないので別の方法を模索します。
預かった書類から公図をとって本地の謄本を取ります。うん、Aさんの土地で間違いない。それからは、隣地の謄本を拾います。
大体の方が同じように数十年前に売買で取得しているようで、なかには分譲時の業者が名前を少し変えて数年前に再び買い取っているではありませんか。 

お!?ここで起死回生のチャンス到来です。
公図上でおそらく道路だろうという本地の隣の筆が自治体所有の公衆用道路だったのです。
住所を調べてGoogleのストリートビューでみると、Aさんの土地は公道に面している土地でした。
大半、分譲時の業者が所有している私道を通行しないと自分の土地へいけないのです。ですからそんな多くの土地はGoogleのストリートビューではまず外観なんてわかりません。Googleアースで見ても山林が生い茂っていて何もわからないのです。

閃いた。ここで依頼者のAさんの許可を得て方向転換します。
まず管理費の支払いを無くすことを第一目標にします。同じような物件が出ているなか、公道に面していて管理費の支払いがない普通の土地にするほうが先ではないかと考えたのです。
管理費の支払いが無い・固定資産税の支払いも無い土地であれば売却もしやすいし、万が一売却に辿りつけなくてもご自身が亡くなった時に娘さんに譲れるただのいらない土地に変わるだろうと。
「なんとかできるかもしれない。」と考えた私は、お客様が毎年支払っていると言っていた管理費振込の案内を見つけました。
おぉ。やっぱり㎡単位数十円/月で年額を一気に振り込ませるのね。やってるやってる。

ではこれ何の管理費なの。って最初は思うのですが、当の所有者さんは購入した際に浮かれ気分で無茶苦茶な説明は受けてから何十年も支払っています。現在の管理している(?)業者に回答を求めても、「共用施設・私道およびインフラの維持管理費です!」といわれて終了なのです。
よっしゃ。じゃあ管理規約を見てみようと当時のB5サイズのそれらしきものを見るとまぁ同じようなことが書いてあるんですね。ここには解決の糸口がないか。

では実態の確認。
実態とは「管理委託契約書」の確認です。毎年支払いを促されている・支払っている、いわゆる「管理費」はどの書類に基づくものなのでしょうかという単純な疑問です。実際に管理をしているかなんてどうでもいいんです。聞けば「やってるよ。」と言われて終いなので。
Aさんから預かった書類に管理委託契約書は入っていなかったので電話で聞いてみると「持っていない。知らない。」とのこと。じゃあ管理会社に聞いてみようと連絡するも「探してみる。」とのこと。1週間経って再度電話で聞いてみると、「まだ見つからない。」「あと1ヵ月探してもらって見つかる目処あるの?」と聞くと、「たぶん探しても発見できない。」って。「あれ、じゃあ管理委託契約が成立しているか証明出来ないじゃん。」と詰めたところ、「うるせぇ!管理してるんだ!管理費支払ってくれてんだろ!」と謎の逆ギレをしてきたので一旦ガチャ切り。

わかる。わかる貴殿の立場も。
というのも、そういった原野商法をやった企業で今も存在している会社の当時儲かった当代とその取り巻きはほとんどがいないわけです。当時のケツを拭いているのはその会社で勤めているただのサラリーマンなんです。
庇うわけではないですが、それで儲かった悪徳社長ならまだしも、原野商法で大儲けから数十年経過して後始末を抱えているのは違う人なんです。だからといってAさんの依頼を反故にすることはできません。
優しく理詰めで戦ってみよう。同じようなクレームが届きすぎて面倒くさいんだろうけど、話せばわかるだろうスタイルに切り替えます。「これ以上長引かせても、向こうに理があるからしょうがないよね。」ってその担当者が会社の偉い人に伝えるぐらいまでの交渉が出来れば解決できるだろうと予測しました。

ポイントは3つ。
①  公道に面している土地であること。
→これが一番大きいポイントです。業者所有の私道を通行しなければならない土地だと
何も出来ないパターンもあります。

これがAさん所有の土地(イメージ)一帯が別荘地の場合。

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