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こんな大きな体をしたおじさんがオムツして会社行ってるよ、おかしくないよと言ってくれたK先生

ふと思い出した。K先生のこと。
もう三十年ぐらい前?
神経性頻尿がひどくなり、特に、会社からの帰り道に悪化する。
電車で30分もかからない距離なのに、間に2回ぐらい途中下車。
電車に乗る際はいつもドキドキするし、長距離バスやドライブも無理。
旅行もしにくくなってしまった。

そんなときに、K先生はおおらかに言ったのだ。

「オムツしたっていいんだよ。安心できるなら。全然おかしくないよ。
こんなに体の大きなおじさんがオムツしてスーツ着て会社行ってるよ。
それでいいんだよ。」

そう言われて、なんだかものすごく心が軽くなって、トイレがあまり気にならなくなった。
何人もの医師を渡り歩いた中で、数少ない信頼できる心療内科医だった。
いなくなってしまって寂しい。

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いまお世話になっているのは、がんをきっかけに通院を始めた医師。
もう病気ではないので診てもらえないかと思ったけれど、昔のよしみで面倒をみてもらっている。

厳しい暑さが続いた夏が終わり、少し涼しくなってから、日中の気分の落ち込みが顕著になって、気を逸らそうにも限界があるので受診した。

医師曰く、
「気候の変化が大きくてね、みんな自律神経のバランス崩すんだよね」
とのこと。

夜眠れないことはないのだけど、朝起きた時の落ち込みと、起きている間中、気持ちが暗いのはやはりつらいので、医師の言うとおりに薬を飲むことにした。

夫の手術、入院中も、薬はお守り代わりに持っているだけで飲むことはなかったのだけど、今回はおとなしく従った方がよさそう。

薬を飲み始めて5日。
明らかに日中の活動量が増えたし、気持ちの落ち込みも少なくなった。
医師は、「一ヶ月飲んでみて」と言うので、しばらく続けてみる。

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美術館からの帰り道、電車の中でうとうとしていて、ハッと目が覚めた時、隣に夫がいないので、あれ?夫は・・?と思いかけて、そうだ今日は一人で外出したのだった・・と思い出す。
眠気の残る頭で、どこへ向かっているのかを確認し、そうそう、もう降りる駅だ!と思い、電車を降りて改札口に向かったのだが・・・・あれ、見覚えがない。

ここどこだ?

駅名を確認したら、間違っていた。
二駅手前で降りてしまった。

あららら。

呑気な気持ちでホームに戻る。
なんとも緩やかな心持ち。

今までの私には、こういったスキがなかった。
いつも完璧に、きちんと計画して、全てが予定どおりに進む。
キッチキチ。
間違えることはない。

だが、間違えたって、大したことはないのだ。たいていの事は。
簡単にやり直せる。

それならば、脳に無理させず、のんびりゆるゆる泳がせたらいいではないか。
薬の効果なのか?
ちょっとわからないけれども、ここ数日の私は、けっこう自由で、行き当たりばったりで、思いつくままに動いている。

もうしばらくこのアバウトさを楽しんで、薬をやめてもその感覚が残るように脳に教えたい。

楽なんだもの。

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