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いつからこんなに他人の暮らしが見えるようになったのか

どこの誰ともわからない人のおしゃれな朝ごはん画像が毎日流れてくる。
本当にこんな「おっしゃれー」な朝ごはんを食べているのですか?
毎日ですか?
そしてなぜそれを不特定多数の人の目に晒すのですか?

隣に住む佐藤さん(仮)がどんな朝ごはんを食べているかなんてちっとも知らないのに、なぜだか私たちは、名前も性別も年齢も職業も居所も家族構成も何もわからない他人の生活をいつの間にか我が部屋のようにのぞくことができるようになった。

それっていつからだろう?

インスタグラムが日本に浸透したのは2016年頃らしく、その頃から「映える」という言葉が流行り始めたのだろうから、私人の生活を他人に見せる習慣はその頃から始まったのだろうか。

それでも、当初は話題になるのは一定の著名人だったように思う。
プロモーションも兼ねて。
どこそこの何何は美味しいですよーとか。
噂のレストランでお誕生日祝いをしました!とか。
新発売のこのワンピース、とっても着やすくておすすめです!とか。

それが気がついたら、「あなた誰?」という一般人が全身ポーズを取ってスカートひらひらさせたり、カメラ目線で街を歩いたりしていて、本気で、「だからあなた誰っ?」となるわけです、還暦女としては。
そういうことは約束された需要があってこそ成り立つものだと思うし。

けれど、成り立っているんですよね、きっと。
どこの誰だかわからなくても、おしゃれな人のコーデイネートは見たいし、美味しそうな食卓はのぞきたい。
だから晒せば見る人はいる。
それが収益にもつながる。

だとしても。

晒す側の目的はいったい何?
自己満足?
よく聞く承認欲求?
自慢?
マウント?
好奇心?
素直な「あなたにもいいもの教えてあげたい(チェルシーっぽく)」精神?
なに?

不思議としか言いようがない、 SNSの時代。

だって、隣の田中さん(仮)は何をしている人なのか全くわからないのにですよ。
どんな仕事をしていて、家族はいるのかいないのか?
人の出入りはあるようだけど、あれは誰なのか?
日々どんな食生活を送っているのか?
マンションの両隣、そのさらに隣、或いは上下階に住んでいる人たち。
知らない人がほとんどじゃないですか。

稀にご近所付き合いが盛んな住宅地もありますけれど、むしろ少数派。

歪。

歪ですよね、なんだか。

そして、どこの誰だかわからない人の、手のかかってそうな、お金のかかってそうな、おしゃれな食材や器や、あたりにふんわり漂う優越感っぽいものを受け取りながら、

うーん、それって生きるのに必要なことなんだろうか?

と考えてしまう。
なくていい情報なんじゃないだろうか。
シャットアウトすべきじゃないだろうか。

ただ、絵を描きたいとか、美味しいものは知りたいとか、料理の参考になるアイデアが欲しいなどという、個人的な理由がそこに介在していると、バッサリ切ることもできないんですよね。
美しいものは見ていたいから。
可愛いものもまた然り。

情報の整理と感情の整理。
これが最近どうもうまくいかなくて、あああ、できる人はできるし、できない人はできないのよ!なんて投げやりになりがち。

都会と山の二拠点生活なんて憧れはあるし、まあ森の中にシンプルな小屋を建てて、好きなものだけに囲まれて、暖炉にあたりながらココアを飲むなんて、そりゃいいですよ。おっしゃれー。

だけど、それだけで生活が続くわけじゃないしね。
それだけで生きていけるわけじゃないしね。

できる人がやればいいんじゃないですか。
それをわざわざ知らせてくれなくていいですよ。

ってあれ?なに八つ当たりしてるんだろ?
見たくないなら見なきゃいいってだけなのに。

それはそうなんだけど、見たくなくても流れてくる。
見たいものの間に挟まって流れてくる、ってことです。

願わくば、どこの誰だかわからない人の生活よりも、隣近所、周りに住む人たちの家族構成や性格、趣味、癖などの方が知りたいなあ。
SNSを介さずに、ナチュラルに言葉を交わしてさりげなく交流をはかるのは、少し前までごく当たり前のことだったのに、今はなにやら小難しいことになってしまった。
ちょっと突っ込めば、それってセクハラですよ、とか、パワハラじゃないですか?とか、個人情報ですから!

・・・・個人情報、あんなに積極的に進んで垂れ流しているのに。

どこの誰だかわからなければいいってことか。
そこかな。そこが気持ち悪いのかな。

どこの誰だかわからなければ、嘘ついてもわからないものね。
SNSにあげる小さな四方以外が全て、どんなにとっ散らかっていようと関係ないものね。

いやまあ、一番気持ち悪いのは、真似する気も真似する能力もないのに、キラキラ見えるものをついポチッとフォローしてしまう自分ですね。
何がしたいの?

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