本を買うってやさしい人。

「知らない過去は未来」という言葉が好きです。

本についてながい時間考えたいと思って、卒業制作のテーマを「古書、古本、神保町、書店」にしてみたけど、ぐんぐん考え方や本への向き合い方が変わってきて、やっぱりやってよかったと思う。(ものすごく疲れ果てるけど)

ちょっと前の自分は、返本を詰めながら、本を消費するってどういう状態のことなんだろうと思っていた。食べ物のように読んでも消えてくれないし、本を買っても読まずに数年棚に差したままのものもある。

本のいいところは、自分だけのものじゃないところ。
それが本の価値だと思うようになってきた。

古書は、当時誰かが購入して大切にとっておいてくれたもの。
そして、また市場に上げてくれたもの。
それをいま私が手にして、購入する。
本を購入することは、本の長い生涯の中で少しの間、所有する係を任されたようなものだと思う。
いつかはまた手放し、次の世代へ引き継いでいく。
このサイクルが絶たれるまで、本の消費は尽きないのだと思う。

今の本もどれだけの人が所有してくれるかで、どれだけ次の世代に読まれる本になるかが決まると思う。
今買わなかったら、次の世代に読まれることはない。

自分と未来に所有する何人かのために今、私は本を買う。

そう思うと、たとえ数十円でも古本屋に本を売る人は、
ものすごく優しい人に思える。しかも本って重いから。


追記:さらに少し前の私は、古書の魅力は、最もオリジナルに近づけるからとしていた。今私が好きな作家の好きな作家の好きな作家……となったら私の興味の根源や惹かれるものの在処がみつかるような気がした。
あとハードカバーや初版のものであれば、文庫になる際になくなってしまった文章や時代によって変えられた言い回しのない、最も作家のピュアな文章を吸収することができると思ったからです。これもいいところ。


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