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【投機の流儀 セレクション】AI投信で利益を上げられるか

筆者は生半可な知識であるがAI投信には信頼を置いていなかった。
これは一口で言えば、株式市場は「知能よりも知性が重要である(知能と知性の区別は既報で既述してきた)」ということが基本にある。

AIが駆使するのは知性ではなくて知能だ。
膨大な情報を読み込んで瞬時に最適解を探す、そういう知能である。
この、知能よりも知性が重要であるということは次の一事でもって筆者は脳裡に鮮明に残った。

97年にノーベル経済学賞を受賞したマイロン・ショールズとロバート・マートンのヘッジファンドの公式はもろくも98年に崩壊した。

ノーベル経済学賞受賞者ロバート・マートンとマイロン・ショールズの2人が役員となり、その金融理論を実践するために設立させたファンドLTCMは、一時期年率40%の利益を上げていたが、1998年のロシア経済危機を読み違え多額の損失を出し破綻した。

あまりにも規模が大きかったから民間の一ファンドであるにもかかわらず、FRBが音頭をとって(国の金を使うわけにはいかないから)各大手に援助金の支出を呼びかけ、これは奉加帳方式と言われた方法で処理した。
筆者の脳裡に鮮明に残っている。
彼らは再度ファンドを運用してそれも破綻した。
この二度目の破綻はあまり話題にならなかった。

「知能」とは正解が決まっている問題に対して正解を出す能力を言う。

特化したテーマに対して最適解を求める能力だ.
これに対して「知性」とは正解があるかないか判らない問題(ない場合も多い)に対して執拗に正解を求めようと格闘する強靭な意志力のことを言う。

株式投資に必要なのは知能よりも知性である。
このことは既報で既述した。
AI投信の実績は日経平均そのものを買っていたよりもはるかに落ちる。
今年度の大底を3月に付け、今年の最高値を1月下旬に付け、今年の最安値を3月上旬に付けたが、そこからの戻りは日経平均は半値戻りを上回る場面の23,000円に4回挑戦して膠着しているのに、AI投信は戻りも鈍くそれから後は傾向的に右肩下がりになっている。
グラフを参照されたい。
日経新聞8日版6ページ。
AI投信は株式投信の成績は振るわない。
このことは2~3週間前にも既述した。
先週末現在で日経平均は年初来ほぼ変わらずであるのに対して、AI投信の平均は8%安である。
ひとことで言えば、AI投信は知能ばかりに頼る方法であるが、ファンドマネージャーや投資家・投機家が判断を下す際の投資家心理・感情などを入れていないに違いない。

AI投信20本の平均が日経平均よりもかなり悪い。
ところで数日前に本稿の読者兼動画会員が数人集まって食事会・飲み会を開いた席に、AI投信を組成することに関係するプログラマーがいた。
その人に訊くとAIでは「解なし」という答えが出ないのだそうだ。
碁や将棋は定石が決まり必ず最適解があるはずだから、碁や将棋をやらせたらAIのほうが強いが、相場には「解なし」が正解である場合がある。
否、むしろそのほうが多いとさえ言える。
端的に言えば「ax=b」のときに、aはゼロでなくbがゼロではないという場合、(a=0、b≠0という場合)、xを解けと言われたならば、「解なし」というのが正解であり、「a=0、b=0」の場合のxを解けと言われたらxは無限にある。
「不定」が正解である。
ところがAI投信の場合に「解なし」とか「不定」という最適解がないのだそうだ。
それでは丸っきり現実的ではない。
AIも学習するから、目下学習中なのであろう。
AI投信業者の営業妨害をする気はさらさらないが、目下学習中のものは学習を積んでから再デビューしてもらいたい。

【今週号の目次】
●当面の市況
・9月第1週をどう読むか?
「設備投資は前年同期比12%増」という明るい話題に大きくは反応しなか
った。株式相場は過去を記憶して動く、という所だったが……
・当面の市況―9月第2週は後半に変わった
●「株価変動は景気変動に先行する」の命題の含意
●昨日がリーマンショック勃発から満10年の日
●金融危機は10年おきにやってきた。だが筆者がよく言う「お化けは同じ顔では出てこない」のだ。
「危機は姿を変えて現れる」(中曾前日銀副総裁、13日・日経新聞)
●日本企業の業績は最好調
●内閣支持率と短中長期移動平均の一点集中現象
●今年はドル円相場の変動幅が最小だった年だ
●中国景気と中国株価
●米共和党に危機到来
●原発問題に関して
●老年期相場の過ごし方、その一例――筆者ならこうする
●貿易摩擦→経済戦争→軍事力でカタをつける→第二次世界大戦へのプロセス、この歴史に学んで安倍首相が利口なら今から本気で取り組むべきこと、それは憲法ではない。TPP推進を以てする世界平和への貢献である。
●AI投信で利益を上げられるか
●「安倍首相は保守ではない」
●「認知症患者資産200兆円に」
●日銀の資産規模の異常さ

【蛇足】
○「見えない読者諸賢」とコミュニケーションがとれる幸せ

【お知らせ】
「投機の流儀 セレクション」のアーカイブは、電子書籍の紹介サイト「デンショバ」にてご覧になれます。

デンショバ
http://denshoba.com/writer/ya/yamazakikazukuni/touki/

【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。

【著書】
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