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可愛くない君がたまらなく愛しい


山本と本屋に二人で行って漫画の新刊を買う。

買ってる漫画の発売日が被って
三冊くらい買うことになった。


「もう42巻かー。早いなー。」


家に着いて、
山本は俺がテーブルに置いた漫画を
手にしながら笑った。


「お前結局これ読んでんの??」

「え、うん。

伊達が買ってる漫画は面白い。」


疾風はやていわく。


山本はもともと俺が読むような男性向けの漫画は
全く興味がなかったらしい。


「先輩と付き合ってから
桜先輩、趣味とか結構変わりましたよ。」


それが良いことか悪いことかは正直分からない。


だけど、俺の好きなものを好きになってくれたり。

俺が好きなことを知ろうとしてくれたり。


山本のそういう
変な意味で真面目っつーか、

なんかある意味
若干ズレてるところが


俺は好きだったりする。


「どの登場人物が好きとかあんの??」

「回復魔法が使えるルルちゃん。」

「…あいつ自分じゃ何もできねーじゃん。」

「なんでよ、できるじゃん。
ちゃんと毎回仲間助ける。」

「助け方が地味。
呪文とかやたらなげーし。」

「でも、15巻とか感動だったじゃん。

それにルルちゃんいなかったら
パール奪還できなかったし。」


正直、この漫画

女子が読む内容じゃねーし。


その漫画について
こんな対等に語られても

普通、彼氏は喜ばないんだぞ。


って、

なんか、若干誇らしげな山本見て

少し思った。


「大学楽しい??」

「…まぁ。」


そう話し掛けてから漫画を読む俺を見て
黙って他の漫画を読みはじめるのも


気遣うポイント

少しおかしいだろ。


私といるのになんで漫画なの、とか

私よりゲーム??とか


女特有の、
面倒くさいけど可愛いわがままとか
一度も言われたことねーし。


俺がそういうの
嫌いって思ってるんだろうな。

まぁ、たしかに好きじゃねーけどさ。


たまにはそういうのアリだと思う。


山本のわがままなら

俺は多分、聞いてしまう。


「…山本、」


しばらく漫画を読んで顔を上げて

山本に話し掛けたら


こっちを体育座りで見ていた。


「なに??」

「…いや、お前こそなに??
俺、スゲー見られてない??」


「だって、

かっこいいから。」


…なんか、ほら、また。


そんな、たまに突然
大胆なこと言ってから

そのくせめちゃくちゃ
照れたりするから。


「…バカじゃねーの。」


不器用っつーか、

愛しいっつーか、


可愛い女だなって思う。



可愛くない君が
たまらなく愛しい







**


私は可愛くないって
そう思いながら

恥ずかしがりながら
可愛くこびようとして


上手くできないまま

結局赤くなって終わる君が


悩む姿が好きとも言えない

同じくらい不器用な俺。






2011.12.02

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