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だけど、今日も君を想う

帰りの飛行機で俺は
眠りかけてたあっちゃんのほっぺを
つんつん、と突いた。


「…なんすか。」

「俺、エコノミーやっぱ無理。
狭すぎてキツい。」


行きと同じこと言ってる俺に
はぁ、とため息をついた。


「だったら一人で
ビジネスだかファーストだかに
乗れば良かったじゃないっすか!!」

「えー、なにそれー。
俺、一人で飛行機とか無理。

離陸怖いもん。」


いや、別に怖かないけどさ。

せっかく誰かと旅行来たなら
飛行機もエンジョイしたいじゃん。


「…あ、ねぇ、あっちゃん。
そういえばさ??
由香ちゃんに言われたんだけど。」


あの晩のこと、
一回、冷静に考えた時に

ちょっと引っ掛かったことがある。


「あっちゃんって、
由香ちゃんのこと、


信用してないの??」


由香ちゃんはその時、
一瞬寂しそうになって、言った。


『和泉が信用してるのは
私じゃなくて佑久さんです。』って。


「なんすか、それ。」

「いや、由香ちゃんは
あっちゃんは自分より
俺のこと信用してるって言ってた。

ちょっと寂しそうだったよ。

女にああいう顔、させると
他の男に取られかねないよ。」 


俺の言葉にあっちゃんは
眉をひそめて悩んでる。


「つーか…、

そんなの、当たり前でしょ。
佑久さんは大人だし、
約束破られた経験もまだないし
別に信用できない要素ないんだから。」

「あー。
じゃあ、やっぱりあっちゃんは
由香ちゃんのこと信用してないんだー。」

「そっすね。
あいつ、信用できないんで。」


あっさり認めたあっちゃんに
今度は俺が眉を潜める。


「それは彼女に対して
いくらなんでも酷くない??」


いくら相手が
超能力者みたいな女だからって

女には優しく、が
俺のモットーだよ。


「だってあいつ、
信用なんてしたら

また、無理するでしょ。」


面倒くさそうに
当たり前みたくそう言うあっちゃん。


「え??無理??」

「あいつ、期待とか信用とか、
そういうの他の奴から散々されてるでしょ。

だから俺は良いんすよ。

約束とか、応援とかも


あいつにとっては迷惑以外の
何でもないんですって。」


…なんだ、それ。


難しくて
よく、わかんない。


「でも由香ちゃん、寂しそうだったよ。」

「それがあいつの笑顔です。」


え、そうなの??

あんな、孤独な笑顔が??


「つーか。

信用できないから、
はるばるアメリカまで
行っちゃったんでしょ。」


え、そういうの
照れないで言っちゃうんだ。


「…あっちゃん、」

「はい。」


「由香ちゃんのこと、

好きだねぇ。」


あっちゃんはしばらく黙ったあと
さぁ、と首を傾げた。


「よくわかんないっす。」



だけど、今日も
君を想う







**


好きとか、嫌いとか

信用してるとか、愛してるとか


そういうんじゃねんだよな。


ただ、なんとなく、

気付いたらいつも


お前のこと、
考えてるんだ。






2011.09.28

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