我が彼女よ、完璧であれ。

人には苦手というものがあって

この、一見完全無欠に見える俺の彼女
片岡都ちゃんにも

実はそれは数多く存在する。


「…なに作ってんの?」

「うさぎだよ。」


都ちゃんの部屋に久々に行って
何やら勤しんでるのを横目に
漫画を読んでいたら

紙粘土で謎の物体を作り出す都ちゃんに
俺は笑いが堪えきれなくなる。


「それがうさぎ?!」

「ち、ちょっと、笑わないでよ!」

「なに?!なんでそんなのつくってんの?!」


「説明会に必要だからって
秋田先生に言われちゃったんだもん」


お人よしと真面目を
絵に書いたような俺の彼女は
断るということを知らない。


「やめなよそんなの。
桐高のイメージダウンだよ。」

「でも、頼まれちゃったし、」

「芸術センスゼロなんだから
もう少し自分を見つめなよ。」


そう言った俺に
しゅんとなる都ちゃん。

かわいい。


「都ちゃんにセンスないこと、
あっきーは知らないんだから。

頼む相手間違えちゃったんだよ」

「みんな断るから…」


「俺も生徒会なんだけど?」


軽すぎる紙粘土を手でコロコロして
俺は完璧すぎるうさぎを作る。

かわいすぎるわー、うさぎ。
天才すぎるわー、俺。


「ちかちゃん、さすが!!」

「うん、まぁね。」

「どうしてやってくれたの?!
手とか汚れるの嫌いなのに!」


さすが我が彼女。
よく分かっていらっしゃる。

それだけで少し優越感を感じる自分が
幼すぎてイライラする。


「都ちゃんが下手すぎて

見てられなかった。」


ニヤニヤしながらそう言うと、
露骨に機嫌を損ねて、
説明会のプリントに貼る感想を書く。

その字は大層達筆で、
俺はまた少し笑う。


「なにがおかしいの。」

「字は綺麗だなって。」


肘でわき腹を打たれたけど、
そんなの気にしない。


ダメな都ちゃんは

皆には内緒。



我が彼女よ、
完璧であれ。







**


完全無欠な片岡は

実は美術センスゼロでした、なんて


かわいすぎるから
絶対誰にも教えてあげない。






2013.03.18
hakuseiさま
粘土

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