「私は統合失調症なんです」と言った夏の日
地元には家の居間のような、くつろげるコミュニティスペースがある。そこでまだ知り合って半年のMさんと話をしていた。仕事の話、通っている放送大学の話、Webサイト作りの話などをした後に、「〇〇さん(私のこと)はどんなことがやりたいの?」とMさんに聞かれた。そこで私は、困ってしまった。
なぜ困ったかというと、私が今やりたいと思っていることは「統合失調症の当事者を集めて何かしたい」「精神疾患を持っている人でもバイトできる場所づくりがしたい」という内容だったからだ。それを話すには、まず自分が精神疾患を持っていることを伝えなければならない。
最初は「持病があって、うつっぽいものを持っていて……」とぼやかしていたのだが、薬を飲んでいる話や、気分の上がり下がりがある話をして、ああ、これは誠実に正直に病名を伝えようと思って「統合失調症なんです」と伝えた。
「それって、精神疾患のことよく知らないけど大変そうなやつだよね」とMさんは言ってくれた。Mさんの周りには一人もいないそうだ(比率的にいそうな気はするけど、少なくともカミングアウトしている人はいないのだろう)。症状のイメージがわかないというので、思い込みや妄想、幻聴や幻覚があること、怒りっぽくなることを伝えた。
「そうなんだ、じゃあもしその症状が〇〇さんに出たらどうすればいい?」とMさんは優しく聞いてくれた。Mさんはそのコミュニティスペースの運営をしている人なので、「もし私が変な行動や怪しい挙動をしていたら、かかりつけの医者に伝えてほしい」とお願いした。薬を飲んでいれば症状も出ず安定しているけれど、万が一のことがあるかもしれない。
それから、自分が今している活動についてお話をした。精神疾患を持っている人に向けたラジオやnoteを不定期で発信していること、mentoricoというウェブサイトを作ったこと、当事者の芸術作品を集めた展覧会をやりたいと思ったこと……Mさんはすべて聞いてくれたうえで「素晴らしいと思います」と肯定してくれた。何かを発信している人は、素晴らしい、と。
ようやく一枚、張っていた膜が剥がれた気がした。ずっと作っていた人との距離を、伝えられなかった「やりたいこと」に対して、一歩踏み出した。なんだか泣きたいような、ありがとうと言いたいような気持になって、私はいまこの文章を書いている。
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