シンカ論:⑥なぜフェミニストはポルノを憎むのか。
この世にはポルノグラフィを、あるいはポルノでなくとも、少しでも「いやらしい」と感じた本や絵画を、激しく憎悪する人々がいることは述べて来た。それは国や時代によって宗教家であったり、国粋主義者であったりするが、ここ数年来の日本ではフェミニストが多いようである。
しかしポルノやヌードへの嫌悪は、決してフェミニズム、というより男女平等主義の論理的な帰結ではない。そもそも性嫌悪の表明に、自らの処女性の誇張という意味合いがあることを思えば、それはむしろ男尊女卑社会への迎合ともいえる。
現にフェミニストの中には、女体を赤裸々に表現することはむしろ女性の自己表現であると考える人々も多い。海外では勢力として成立している場合もあり、このようなパフォーマンスに及んだりもしている。
しかし現代日本のフェミニストの多くはそうではない。その代わり、ポスターや漫画本にクレームを付け続け、イメージダウンを恐れた企業が取り下げたらそれを「成功体験」としてネット上で留飲を下げたがるという道を選んでしまっている。
これはなぜなのだろうか。
それは、現代の日本女性はすでに幸せだからだ。
「そんなことはない! 日本の女性差別は酷いはずだ! だって日本は女性差別の指標である『ジェンダーギャップ指数110位』じゃないか!」(注:本稿移転時点では121位となっています)
と目をむいて怒るフェミニストもいるだろう。だが、先日すもも氏が『男性のつらさの構造』と題する論考で示したように、日本女性は日本男性よりも明らかに幸福で安楽な生活を手に入れている。
統計によれば日本の女性は男性と比較して、引きこもりにもホームレスにもならないし、自殺することも週60時間以上の労働に耐えることもない。また全世代においてアンケートで「女性の方が楽しみが多い」とも答えている。
ではフェミニストが振りかざすジェンダーギャップ指数110位(G7の中では7位つまりビリ)はどういうことなのか。
実は、ジェンダーギャップ指数は男女差別の国際比較における信頼できる代表的指標でもなんでもない。同じように各国社会の「男女差別度」を測る基準はいくつもあり、それらが取り上げる要素によって順位は揺れ動く。
たとえばUNDP(国連開発計画)が出している「ジェンダー不平等指数」という似た名前の指標では、日本は160ヶ国中22位だ。意外となかなかである(内閣府男女共同参画局「共同参画」2019年1月号)。フェミニスト達は、日本のスコアが悪く出たジェンダーギャップ指数を殊更とり上げて日本を呪っているだけなのだ。
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