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シンカ論:⑤「男にだって、心はある」――強制性交等罪と同意要件

1.セックスは原則犯罪?

 日本共産党がこんなツイートを流している。自分たちが出した公約への批判に対する反論としてだ。

 この僅か140文字以下の文ですでにおかしい。「セックスは原則犯罪を公約」したという批判に対する反論が「どこに『全ての性交を違法とする』なんて書いてありますか?」である。日本共産党は原則をどういう意味だと思っているのだろう。すくなくとも「全て」ではないはずだ。

 そもそも日本共産党という政党はこれまで政府与党の法案に反対するときどんな言葉遣いをしてきたのだったろうか。ざっと思い出すだけでも「安全保障関連法案」を戦争法と呼び、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」を盗聴法と呼び……と、つねに過激な名称でレッテルを貼り続けて反対してきたのではなかっただろうか。

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2.「強制性交等罪」概論

 実際の日本共産党の公約を見てみよう。

 問題の個所は「9、差別や分断をなくし、誰もが尊厳をもって自分らしく生きられる社会に」(2)の3段落目である。こうある。

「――強制性交等罪の「暴行・脅迫要件」の撤廃と同意要件の新設をはじめ、性暴力の根絶につながる刑法改正を行います。」(太字は筆者)

 強制性交等罪というのは、2017年までの強姦罪に「暴行又は脅迫を用いての肛門性交や口腔性交」を加えたものである。全部カタカナで書くなら、レイプとアナルレイプとイラマチオはダメであるということだ。女性の陰部だけでなく肛門も口も無理やりはダメ。つまり、男性も被害者に、女性も加害者になりうることになった。これまでの強姦罪では、暴行・脅迫をもって、男性の陰茎を女性の陰部に挿入することだけを指していたので、女性は共犯者として以外には犯人にはなりえなかったのである。

 日本共産党のいう「暴行・脅迫要件の撤廃」とは要するに暴行や脅迫がなくても強姦扱いにして捕まえろということである。ここが「セックスは原則犯罪」と批判を浴びているわけだ。

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