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シンカ論:④「遠高近低」の心理学

 ネットスラングに「海外出羽守」というのがある。根拠なく日本を貶め、外国(特に欧米)を称賛する人々のことだ。しきりに「海外では」「日本人は」「海外では」「日本の○○は」と、口癖のように言い立てることから、その前時代性をも揶揄して「海外出羽守(かいがいでわのかみ)」と呼ばれているのだ。略して単に出羽守ともいう。

 いわゆる「反日」というと、日本に対して中国・韓国をプッシュしがちな人を指すのだが、出羽守は主に「欧米・白人」への過大な憧れを持っているように見える。欧米人とのコネクションや、海外在住歴を誇ったりするのがパターンだ(そして時々、その嘘松がバレることがある)。

 とりわけこの手の人種は、フェミニズムやポリティカル・コレクトネスに傾倒していることが多く、彼らにとって欧米はその天国であるらしい。

 もちろん現実の欧米はそうではない。
 2020年現在、新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るっているが、イタリア国立音楽院の対応が「すべての東洋人へのレッスン中止」である。

学生は「感染を予防する意図は分かるが、東洋人だけでなく全員が診察を受けるべきだ。中国人学生は『差別だ』と、とても怒っていた」と話した。

 当然であろう。
 海外出羽守には、たとえばこんな発言がある。

 最初の一文を読めば、どう考えても欧州人の偏見が酷いという話でしかありえないのだが、これが書いている人間の感覚では逆なのである。

痴漢に安全ピンを知人の外国人男性にに聞いてみたところ、このような返答が返ってきました。彼ら曰く日本人は「痴漢は性犯罪」という意識が低過ぎるそうです。
日本人女性の皆様はご参考までに。 pic.twitter.com/R8SToxVzDD
— ㊙︎のイカ子。 (@sorewaikaaaaaan) May 26, 2019

 ちなみに下の人に「韓国人とフランス人の台詞を、訳さず原文で書いてみてもらえます?」と聞いてみたが、答えは帰ってこなかった。こういう連中はなぜいるのかについて論じたい。少なくとも以下の3つの理由があろう。

1.「機械を作り出した欧米」崇拝

 ひとつはもちろん、江戸時代の黒船来航以来、最近まで欧米は日本にとって「格上の先進国」であったからである。実は明治時代から「欧米への劣等感を失くし日本人としての誇りを取り戻し云々」的なトークはあったのだが、一般的にはそうであり続けた。
 高度成長からバブル経済と言われた時期になると、日本は欧米にとって真剣な経済的脅威となる。しかしこの時代「日本人は他国の真似ばかりで独創性がない」という言葉がまことしやかに信じられていたのだ。今だって「日本人 創造性」で検索するだけでこうである。

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 おそらくこれは、当時の欧米人たちは、日本の経済力や技術力を脅威に感じるがゆえに、日本の文化を「あんなの俺達のパクリ」と貶めて自分を安心させていたのである。ちょうど今のネット時代に一部日本人(特にネトウヨと言われる人達)がしきりに中国・韓国などについて「日本の○○のパクリ」を指弾することがあるのとも、ある程度は当時の欧米人と同じ心理に基づくものと言えるだろう。つまり「追いつき、追い越されそうになった側の焦り」というやつである。
 もちろん日本は、実際にアジアで先駆けて西洋文明化・工業化・経済成長を果たした国だ。それは誇っていいし、ある程度参考にされたのは確かだ。マレーシアのルックイースト政策などは日本を参考にすることを前面に押し出していた。だが実際のところ「中国・韓国にある日本風のもの」の数なんて「日本にある西洋風のもの」の数と比べれば誤差みたいなものだったのではないだろうか。
 この「日本人には創造性がない」というフレーズは、あまりに人口に膾炙されすぎて、こんな本まで出ていたほどだ。

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