固有名詞について
一時期、固有名詞をよく使ったことがあります。いまもときおり、使います。
アクセントというか、句に違和感を与えるというか―自分ではそう思うんでしょうね。
人名が好きでした。特にプロレスラー。プロレスのリングネームってうさん臭くて、それでいて的を射ていて、響きもいい。過去作を見てみると、
・迷子となれ中年ブルーザー・ブロディのように
・かのじょガム噛むダイナマイト・キッドが来る
・アンドレ・ザ・ジャイアントを見た結婚しよう
なんてのがありました。
歴史上、文学上の人物もいいですね。
・ドン・キホーテ百人の谷底の底抜け
・ここは立ち入り禁止だぞエイハブ
・蘇我馬子はこむら返りかなしのつぶて
・キリストの墓はたしかここと合唱団総出
国名、地名は好きですが、引き出しは少ない。
ポルトガル、アルゼンチンとか響きはいいですけね。
ちなみにトルコのイスタンブール、これはやっぱりビザンティウム、コンスタンチノープルの方がいいですね。「陥落」なんて悲劇的言葉がよく似合う。
それはさておき、国名を使うよりはアフリカ、南米といった大くくりに使うのが便利かな、思っています。南極、北極もいいですね。
以前のコラムでも書きましたが、自分にとっては言葉が大切なわけで、その背景まで考えていません。だから人名、国名、地名は慎重にならざるを得ない。政情不安定な地域を取り上げると、読んだ人がその地域の現状と句をリンクさせる可能性がある。
人名もそうですね。その人のバックボーンまで考えられちゃ、こちらとしては困っちゃう。
まあ、俳句なんて受け取り手によってさまざまな解釈ができるから、作者の意図なんて関係ないですけど。「こうくみ取ってくれ」なんて口がさけても言えない。
でも、作り終わった後、「失敗したかな」と思うこともあるんです。
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