好きな作家①西脇順三郎

好きな作品はいっぱいあります。でも、好きな作家って考えてみると少ない。

以前のコラムで、現代詩を書いていたことに触れました。

なぜ、現代詩を書きはじめたか。西脇順三郎がいたからです。


西脇の名前は、高校生のころから知っていました。

ちょこっと読んだこともあります。作品は覚えていません。

気になったことだけは、記憶しています。

それから二十年後ぐらいでしょうか。つい最近ですね。長期入院することになりました。

現代詩は読みませんが、詩人のエッセイは好きでした。

「入院中に詩でも読んでみるか」と古本屋に行きました。西脇順三郎詩集(白鳳社)を買いました。

病院のベッドで、「Ambarvalia」から読み進めていきました。最初は「ふーん」という印象でした。だけど「旅人かへらず」あたりから変わってきました。なんか面白い。

そして「近代の寓話」でやられました。なんじゃこりゃ。フレーズのつながり、よく分からない登場人物の意味不明な会話、ラストの格好良さ…。現代詩ってこんなに楽しいの。

それからは西脇みたいな詩が書きたくて、いろいろ作りました。読み返すと、恥以外のなにものでもないですけどね。だいたい、和洋の文芸に精通した西脇をまねようなんて、大それた考えです。もう中年なのにね。

でも、西脇の持つユーモア、非現実感、浮遊感というものは、自分の作句に影響を与えているのは確かです(自分なりの分析ですが)。五七五を捨てて、自由律に進んだのも西脇の影響があったかもしれません。芭蕉について西脇はいろいろ言及していますが、まあ、それは置いておいて。

言葉がつまずきながらゴールに向かう。「失われた時」のラストに至る混沌は、涙さえ出てきます。自分はあるジャンルを、別のジャンルで説明するのは嫌いですが、あえて言わせてもらいます。ジャズのアドリブ、それも延々と続くアドリブを彷彿させました。西脇が好きな音楽は「王将」と「早稲田大学校歌」だったそうですが。

西脇は対談で「自分の書く詩はすべて小説ですよ」と話しています(出典は忘れました)。

本心かどうかはべつにして、ボーダーレスな姿勢は素敵です。そんな西脇に魅了され、いまだ駄句を次々と生み出しているんです。

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