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不登校先生

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2021年の春に「うつ病」になりました。 15年間小学校の講師として働き、 この年もそのまま働くだろうと思っていた時に 突然自分にやってきた「うつ病、退職、療養の日々」について、…
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#心が壊れる

不登校先生 (1)

不登校先生 (1)

・・・・まもなく、貨物列車が通過します

      黄色い線の内側にお入りください・・・・

まもなく、貨物列車が通過します・・・・・

    ・・・黄色い線の内側にお入りください・・・

沈み始めた夕焼けの色が、貨物列車の赤色と重なる美しさで、

「もう思い残すこともないな、この駅に」

そんな思いが湧いてきて、体がどう動いていたか、覚えていない。

赤が紅になって、目の前一面が真っ赤になり

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不登校先生 (4)

不登校先生 (4)

家に帰りつくと、大きな三つの荷物を、

引きはがすように、畳の上に置いた。

大したものじゃないといった荷物たち、

おそらくほとんどの人には、本当に大したものじゃない。

けれど、僕にとっては、どの荷物も、大事なもの。

これまで向き合ってきた、子ども達との時間の中で使ってきた。

先生としてやってきた中で使った道具たち。

「今度はいつ、力を貸してもらうことになるかわからんくなったね」

「ご

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不登校先生 (5)

不登校先生 (5)

辛うじて、命を放り投げる前に踏みとどまれたことで、15年前と同じにならぬように、どのようにして「守る」か、考えた。

しなくてはならないことは、

管理職(校長先生)への相談と報告。

心療内科、もしくは精神科への受診。

この二つを確実に行うこと。

まずはそこからだ。

僕と同じタイミングで異動・昇進されたばかりの校長先生は、

温和で、でも行動力の在りそうな人柄だった。

前任校の校務員さん

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不登校先生 (13)

不登校先生 (13)

うつ病という病名は、

聞いたことがない人の方が少ない

今では広く名前は知られた病気で。

でも、その病気がどんな症状になって、

どう苦しいのか。

実は病名ほどに、そういった詳しいことについては

知らない人が多いのも、この病気の特徴に思う。

少なくとも僕にとって、うつ病という病気は、

自分に関わってくる病気ではない。

そう思っていた。

心の病気は、風邪や身体的な病気のように、

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不登校先生 (14)

不登校先生 (14)

それでも時間は流れる。

何にもしなくても、時間は流れる。

こんな状況になって、何にもしない時間。

それでもそんな時間も、止まってはくれない。

朝になるとカーテン越しでも真っ暗な部屋は薄暗がりになり、

昼を過ぎると、紺のカーテンを突き抜けて日差しは入り込んでくる。

夕方になると部屋はオレンジ色に染まり。

夜になれば真っ暗な闇が、部屋中を占拠する。

そんな一日を、ただ、何もせず、眺める

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