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不登校先生 (13)

うつ病という病名は、

聞いたことがない人の方が少ない

今では広く名前は知られた病気で。

でも、その病気がどんな症状になって、

どう苦しいのか。

実は病名ほどに、そういった詳しいことについては

知らない人が多いのも、この病気の特徴に思う。

少なくとも僕にとって、うつ病という病気は、

自分に関わってくる病気ではない。

そう思っていた。

心の病気は、風邪や身体的な病気のように、

鼻水が出る。咳が出る。熱が出る。

頭が痛い、お腹が痛い、体が重い。

など、「この症状だから、うつ病」

みたいなものがない。

だから、突発的にとった行動や、

その後の生活の不具合などから診断していくようで。

生きたくなくなって、楽になりたくて、

その心と体がつながって動いてしまった状態は、

たしかに「自分はうつ病とは無縁だろう」

と思っていた心の時には、ほとんど出てこない思考で、

まして行動にまでつながるなんてことは、

考えられない。

ひとつの病名で一括りにしているから、

なんだか分かりにくいな。と考えていたことが、

完全に把握違いだったとわかるのは、

その病気になった時なのだと、

身に染みて、感じていた。

とにかく、空っぽの心をどうやってもどすのか。

無気力、睡眠障害の状態異常の中で、

見えない心の弱っている感じは、

確かに感じるけど、正確に捉えることができなくて、

出口がどっちかもわからない暗闇に、

ランタン一つでぽつんと立ち尽くしているような、

静かな絶望が、ひたひたと近づいている感覚が、

ただただ心を闇の色で包んでいくようで。

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とにかく、何にもする気がしないのだ。

やろうともやりたくないとも思わないから。

何も行動しないのだ。

何かを「やろう」と思えば、体がそれについていかないことに、

もどかしさや、苛立ちを覚えて体を動かそうとする。

一方で「やりたくない」と思えば、自分の意思がそう感じているけど、

本来やっとかないといけないこと、日常生活最低限する必要のあることを

意思に反しても「やらなきゃ」という契機になる。

「ああ、もう面倒くさい。」「だるいなぁ」

と考えながら動いていた時の状態ですら

実は正常な心の動きだったのだな。

そう思わされるほどに、

日常生活の中で最低限のことも、

やる気が出ないのだ。

うつ病の診断を受けて、うつであると自覚した心は、

生きるための極力最低限度のことですらも、

やる気が起こらなくなり、

食べる気も、お風呂に入る気も、髪を切る気もなくなり、

睡眠をとる気もなくなり、

ただただ、命をつなぐだけの時間が

始まった。

↓次話



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