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【ゲーム感想】『スヌーピーコンサート』―ゲームとして触れるPEANUTS世界への愛—

はじめに

スーパーファミコン用ソフト『スヌーピーコンサート』というゲームをご存じでしょうか。

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パブリッシャーが三井不動産㈱と電通㈱という当時としても異色の体制だったにも関わらず、名作との呼び声が高く興味を惹かれたので、年始の時間を利用してプレイしてみました。プレイ時間は約5~6時間程度。

私は谷川俊太郎さん訳の日英対訳つき『A peanuts book featuring Snoopy』を1巻を読んだのみという、スヌーピー初心者も同然という状態でのプレイだったのですが、グラフィック、音楽、テキストの全ての面でスヌーピーたちの可愛らしさと深淵さと狂気に心を踊らされる作品だと感じました。

音楽面はMOTHERやポケモンで有名な田中宏和さんが担当されていることもあり、ほっこりしたやさしさが雰囲気に合っていました。

あらすじは、偉大なるコンダクターの側面を持つスヌーピーのコンサートに来場するチャーリーブラウンたち4名のオムニバスをクリアして、コンサートホールに着席してもらうというもの。

※以下、ネタバレを含む内容となります。
もう26年前のゲームかつ、物語は前述のあらすじでほぼ簡潔していますが、万が一プレイされる可能性がある方はご注意ください。

チャーリー・ブラウン編

チャーリー・ブラウンが野球の新シーズンに出場できるように、名探偵スヌーピーが野球道具を探すアドベンチャーゲーム形式。

とにかく真剣な顔でハードボイルドなセリフを呟くスヌーピーが可愛い。
(スヌーピーの目つきにも注目して頂きたい)

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このパート、ヒントらしいヒントがとにかく乏しく、住宅街、学校、キャンプ場、街を総当たりで取り調べに回る。

普通のアドベンチャーゲームなら投げ出しているところなのに、スヌーピーの秀逸なコメント、鋭い目つきでボロボロの人形などを人につきつけたりする可愛らしさがモチベーションになってゲームを続けさせてくれる。

たまに入る名言めいたセリフもまさにPEANUTS感。

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ライナス編

ライナスが思いを寄せる女の子へ、スヌーピーが代理でお花を届けるジャンプアクション。はらっぱを駆け抜け、崖を登り、川を越え…。
ライバルは人だったり、風船だったり、サメだったり。

ジャンプアクションは特殊で、マウスカーソルのようにウッドストックを動かし、スヌーピーのジャンプ角度や距離を調整する。
当然ジャンプ後の調整はできず、わりとシビアなゲーム性。
制限時間も厳しい…。

スヌーピーが身を投じる義理もなく、ライナスの思いに対するスヌーピーの感情はかなりドライ。これもかわいい。

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シュローダー編

シュローダーの楽譜を求めて、川を幅跳びで飛び越え、密林の花たちとボクシングファイトを交わし、ダイナマイトを爆発させて宇宙空間へ飛び立つスヌーピー。

小さな謎解き+探索+アクションの大ボリュームの章。

スヌーピーのいろんなコスチュームがかわいいのに加えて、ステージクリアごとの挿入されるシュローダーの楽譜とスヌーピー・ウッドストックのショートムービーがお洒落でユニーク。

宇宙船のセキュリティーとして16パズルを2セット配置するのはなかなか強固。
(こんな感じの絵が16パズルになっています)

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リラン編

暴走するベビーカート(?)に乗ってコンサート会場へ爆進するリランの行く手を阻む風船やドア、投げつけられる野菜から守る高速アクション。

ミスすると、リランが風船に連れ去られたり、ドアに高速で激突したり、投げつけられたニンジンでクラッシュ。

高速で進むカートにブレーキをかけすぎると、スヌーピーが飛んできて怒られる。

ゲームというメディアで触れるスヌーピー世界

いわゆるキャラクターをテーマにしたキャラゲーは、(少ないキャラゲー経験からですが)元々キャラクターや作品が持っている中でゲームにできそうなものに落とし込む印象でした。

NARUTOの『激闘忍者対戦!』なら、あくまで格ゲーがベースで、丁寧にNARUTOのキャラや技・世界で包んでいくような感じ。
これは、ゲームありきのスタンスのように思います。

今回の『スヌーピーコンサート』はスヌーピーの世界自体をゲームそのものに落とし込んで、インタラクティブな体験とともにスヌーピーに愛着を持たせる、そんなコンセプトなのかと思いました。

ほぼ日で公開されている任天堂の岩田元社長の記事に、「ゲームはインタラクティブだからこそ、些細な出来事でも鮮明に覚えていることがある」みたいな記述があった気がするけど、この体験は本当に当分忘れなさそう。

スヌーピー初心者の私でも、このゲームでスヌーピーのかわいらしさだけでなく、自由きままでお調子者な面、それでいてスッと格言めいたものを言い放つ奥深さに触れて、スヌーピーが好きになりました。

(PEANUTSの公式Twitterまでフォローしました、癒されます)

スヌーピー(ウッドストック)を操作してチャーリーブラウンをはじめとするキャラクターにも会えて、初めて名前と人間関係をなんとなく覚えたり、その素朴さに魅力を感じることも多かったです。

チャーリーブラウンを中心に展開される、とりとめもない人間関係を見るだけでもおもしろいです。

ゲームとしてのおもしろさは、少し難しいくらいで特筆すべきところはなかったものの、スヌーピーの世界だからそんなゲームを続けたくなるし、もっとスヌーピーの世界を知りたくなる、そう思えるPEANUTS入門としてベストのゲームなのでは?と思いました。

おわりに

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PEANUTSの世界へゲーム体験として導入してくれる、やさしい良作キャラゲーでした。

SFC実機でしかプレイできないのは難点ですが、プレイ環境があり、スヌーピーに少しでも興味があれば、是非プレイしてみてください。

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