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【感想】「店長がバカすぎて」(早見和真)

書店員の方、本当にお疲れ様です


書店で契約社員として働く谷原京子。「バカ」な店長のやり方や言動に日々呆れ、時には怒りが爆発します。それでも本を愛するがゆえ、迷いながらも書店で働き続ける毎日。

しかし悩まされるのは、店長だけではなく、クセのあるお客さんや、姿を隠して来店する本の著者、納得いかない出版業界の仕組み、そして何より不器用な自分…。

そんな日常に挫けそうになりながらも、それでも、自分を感動させてくれた小説を、多くの人に届けたいという気持ちで前に進む主人公を、コミカルに、そしてミステリの要素も混えて描いています。

私の今年の初読書


本屋大賞2020年ノミネートの本作品を、書店で見かけた方も多いかもしれません。昨年には続編も出版されました。

2023年初めての読書が、大好きな「本屋さん」が舞台の作品でとても良かった、読み終わってそう思える作品でした。

フィクションとはいえ、書店員さんたちの日常と、生々しい感情が軽いタッチで描かれていて、「バカすぎる」店長の面白すぎ。

本屋さん好きならぜひ


本が大好きで、書店で働いてみたいなと思ったことも少なくないのではないでしょうか。
私もその一人です。子供の時の夢は本屋さん、と書いたのを思い出しました。

力仕事も多く、給料が割に合わない、返品作業が大変だ、ということは何となく聞いたことはあります。そんな楽しいだけの仕事ではない、というのも想像の範囲ではありましたが、本当に大変な仕事ですよね。

そしてそんな想像をはるかに上回る、あんなことやこんなことも…。ちょっと怖い気もしますが、実際に本屋で働いている人がいれば、「実際あんなことってあるんですか?」と聞いてみたい場面もちらほらと出てきます。

本屋さん、頑張ってます


Amazonやフリマに押されるなか、各書店さんは生き残りをかけて、魅せる展示や一風変わった趣向で、頑張っているのを感じます。

そんな本屋さんの裏側を覗けるのも興味深いところ。日々奮闘する書店員さんの姿が素敵です。

こんな店長はいやだ!


本当にこの店長さんが、面白すぎる人で、そしてそんな店長に真っ向からツッコミをする二人のやり取りが楽しくてたまりません。

この「バカすぎる」店長さんは天然で、自己啓発系のビジネス本の内容を疑うことなくそのままい、さらに書店員に全く信頼されていない、という人。

そして本社の社長を心から尊敬し(この社長もバカすぎるのですが)、本社のブレる方向性に、一心不乱に仕事に没頭する姿はなんだか憎めず、かわいくさえ思えてきます。

不器用で、ただ本を愛する人たち


時に主人公に同情しながら、店長さんの言動に唖然としながら、どんどん読み進めることができました。

こんな人が本屋さんにいれば楽しいだろうな、と思いました。絶対自分の上司や同僚としてはとても付き合えませんが…。

本屋さんの見る目が変わるかも


人気の本は当たり前のように平積みされる、と思っていたので、配本という出版業界や取次の仕組みはとても不思議でした。

また、人気作家のサイン会や、書店員が書く推薦文など、ごく当たり前のこと思っていたことの裏側が覗けるのもこの本の魅力だと思います。

私のよく行く書店では、本を見えないように表も裏も完全に隠して、書店員さんからのヒントだけがカバーに書かれてあり、買ってみないと何の本なのかわからない、というとても面白い企画をしてたのを思い出しました。

きっとこんな企画も実現までに、色々な苦労があったんだろうな、と感慨深くなりました。

小説が好き、そして何より本屋さんに行くことが大好き、という人に、絶対おすすめの一冊です。

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