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「高慢と偏見」 (上)    ジェーン•オースティン 感想文

金曜日の読書会(https://note.com/sbookclub)に間に合わなかったので、読み込めていませんが思ったことを綴ります。

「高慢と偏見」 (上) 感想文

日本には、「嫁は流しの下から貰え」ということわざがあり、妻にする人は自分よりも格下の家から貰った方がよく働き、家庭をうまくまわしていけるという意味だという。

見下すようなこの言葉に抵抗はあるが、何かの苦労の末に出来上がったことわざなのだろうと、そして避けられない現実があると思うところもある。

それにしても上とか下とか。

エリザベスがダーシーと結婚するとしたら、まさに「流しの下から貰った」ことになる。

しかし、日本のことわざのような思いつきの世界ではない。

イギリスの階級社会がなんとなく不自然で不自由で、偏っている感じに違和感を覚えた。

下の人間には冷たく辛辣だ。

格下とは何なのか。

エリザベスの母のベネット夫人の父が弁護士で、夫人の妹の夫は、その父の下で書記をしている。
さらに夫人の弟はロンドンで商売をして成功している。
決して引けを取らないと感じたのに、どうやら様子が違った。

今回の読書会の解説で、その上、下の階級の意味をを理解することが出来た。

貴族の立場から見ると、働いていること、それ自体が格下であるということであり、その要因の一つなのだということを。

なるほど、そういえば過去に読んだ作品の貴族らしき人々は享楽的に遊んでいて、働いている描写はほとんどなかった。

働くことなく、財産で生活して行くのだから、「資産家」と聞けば、ベネット夫人の目の色が変わり、5人の娘達の嫁ぎ先ばかり案じているのが理解できる。その様子は、悍ましささえも感じた。

人を見ずに「資産家」というだけで結婚を決めそうになるなんて。ベネット夫人の軽率な行動が目につく。

反対にエリザベスの存在は、物語の中で際立っている。

泥だらけで、姉の病気の様子を看に行くエリザベスにビングリー嬢(資産家ビングリー氏の妹)の陰口が冷たくて卑しい。
姉に会いたいという純心な彼女の気持ちは、
泥の撥ね上げなど目に入らない、どんなに汚かろうと馬車に乗らずとも、無心な姿がビングリー嬢と対照的で共感できる。彼女は姉よりもずっと思慮深い。

今回時間がなく、半分までしか読めなくて、ラストまで飛ばしてしまい、一番古い映画を観た。

上巻の最後、ダーシーがエリザベスに宛てた手紙は、エリザベスが格下であることをはっきりと語り、なぜビングリー氏とジェーンの結婚を止めようとしたのか。かなり根深い原因として、エリザベスの母と妹たちの不埒な振る舞いにあることをはっきりと突き付けたのだった。
その後、エリザベスは散歩に出ても、心はそのことばかりで、悩みの深淵に立ち、何をやっているかも忘れてしまうくらい悩む姿がラストとなった。

虚なエリザベスが目に映る。

引用はじめ

「自分の過去のふるまいは、いつ思い出してもくやしさと後悔のたねであったが、自分の家族のものの不幸な欠点は、それにもまして悔しかった。それは救済の見込みのないものであった」

引用おわり

「救済の見込みがない」という絶望が、ダーシーの手紙を受け取った後のエリザベスに重くのしかかってきた。
身内を悪く言われることは、自分のことより身を削がれる思いであったと思う。なす術もなし。

あと何回波乱があるのだろうか。

ダーシーの高慢さが、彼の鎧であるなら、エリザベスには、いつか誤解が解けて鎧を脱いだしなやかな彼の姿が見えてくるにちがいない。

またダーシーの持つ偏見も、いつかエリザベスをつくった家族を理解することで解ける日が来るかもしれない。

「利益の為に結婚する」

今話題の日本の内親王のご結婚も、愛する方のその誤解を解く為に、全てを投げ打って皇室をお離れになるのだろうか。そして、自由に生きる。


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