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【短編小説】大魔王ハーゲス

「さあ、あとは、最後の敵を倒すだけだ」

勇者アレクサンダーが、魔法使いイザベラ、賢者ネイサンに呼びかけた。この扉の向こうに、最後の敵が待っている。

この世を悪で支配しようとする魔王ハーゲスを打ち倒すため、3人は長い旅をしてきた。そして、やっとこの巨大で禍々しい城までたどり着いたのだ。

「お城の売店で買った最高級の薬草でHPもMPも全て回復したわ。もう少しで死にそうだった私たちが、もうこんなに元気。便利よね、この薬草。これなら、ハーゲスも余裕じゃない?」

イザベラがそう言った。薬草を摂取するまでは、3人とも全身が赤く染まっていたが、回復すると色が消えた。

「最後の敵は、攻撃系の呪文はほぼ使えないことが多いから、俺はとにかく二人の回復と相手の守備力を削っていくしかないな」

ネイサンが言った。

「私は、アレクサンダーの攻撃力を上げるわ。あと、中ボスや雑魚がいたら、攻撃系呪文をバンバン使って排除するわ。回復を頼むわねネイサン」

イザベラは、そう言って杖を握りなおした。

「俺は、扉を破って中に入ったあと、すぐに、ハーゲスを守る闇の衣を無効化する。その間に攻撃を受けるかもしれないから、二人で俺を守ってくれ」

アレクサンダーが言う。

イザベラとネイサンが頷いた。

「じゃあ、いくぞ!!」

アレクサンダーが扉を蹴破り、ハーゲスが待ち構えている部屋に3人が押し入っていく。

邪悪な顔をしたハーゲスと思われる怪物が巨大な石の椅子に座っている。そして、その脇には、ハーゲスほど大きくないが、3人よりもはるかに大きな怪物たちが5体ほどいる。

「やっときたか。待ちかねたわ。ここがお前らの墓場になる。覚悟しろ。アハハハハハハハ」

ハーゲスの大きな声が広大な部屋に響く。

「よし!打合せどおりでいくぞ!」

「5体は私に任せて!」

イザベラが呪文の詠唱を始めた。

「ちょっ、ちょっと待って」

ハーゲスが驚いたように言う。

「え。何?」

イザベラが詠唱を止めた。

「こっちは、俺を含めて6体いるけど、これ最後だからさ。一気に戦うのはダメでしょ。わかってるでしょ。おたくら初めて?」

「え?」

「ここでの戦い終わったら、もう、エンディングでしょ?」

「だからなんだ!」

アレクサンダーが言った。

「だからさ。このまま一気に戦ったら、あっという間に終わっちゃうじゃん。だって、お前ら絶対勝つんだろ?」

ハーゲスが口を尖らせて言った。

「いや、それはわからないが・・・」

「お前が、勇者なんだろ。ここにくると言うことは闇の衣を無効化するひかりの玉を持ってるんだろうから、もう勝ち目ないんだよ。だったら、俺にたどり着くまで、めちゃ大変だった感くらださせてよ」

「・・・」

「せっかく強そうなの5体集めたんだからさ。1体ずつ戦って、最後は俺にたどり着くということにしないと、俺にたどりつくまでの大変さ感がでないでしょ」

「あー。確かに」

ネイサンが頷く。

「お前らだって、ここで大変さ感を出した方が、エンディングの曲で感動するだろ?」

「ま、まあ。そうっすね」

アレクサンダーが同意する。

「よし、じゃあ、お前ら、勇者チームの前に一体ずつ並べ。一体ずつ戦うんだからな。わかったな」

「ハーゲス・・・さん。じゃ、じゃあ、一番前の方から戦うということでいいですかね」

「じゃあ、よろしく。さっさと終わらせようよ。俺、FFⅦやりたいんだよ」

(終わり)

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