『椎の実』

ある日誰かから
椎の実は煎って食えると聞いた
だから私は
近くの神社の境内で
椎の実を拾い集めた

だが、味も香りも食感も
記憶のどこにも無いのだ

簡潔に考えるなら
私はそれを食っていないのだろう
集めた椎の実を
家路のどこまで持っていたか
或いは神社から出していないのか
定かではないが
どこかで心変わりがあったのだろう

味を知れなかったことを
惜しく思う事もなければ
今から食おうとも思わない
ただこの話を思い出すからには
その時の心変わりは何か大事なものなのだろうか

地面に落ちた椎の実を見ては
煎ったら食えるらしい
とだけ思う

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