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読書レビュー 原因において自由な物語

 面白さ★★★★★
 オススメ★★★★☆
 難しさ★★★☆☆
 ページ数:351

 ひとことで表すと……登場人物の心情描写が丁寧な謎が心地よい現代ミステリー小説

 主人公はミステリー小説作家だが、同居人からアイデアをもらいながら小説を書いているいわゆるゴーストライターによって成功をおさめている。新たな小説のプロットを同居人から受け取った主人公だが、その同居人がプロット内容と似た状況である廃病院で屋上から飛び降りてしまう。さらにはそのプロットが実は1年前に実際にあった事件で……というのが導入の簡単なあらすじである。

 この小説はミステリー小説として複雑すぎるトリックや、入り組んだ人間関係、多すぎる登場人物などといった理解を難しくする要素があまりない。トリックは単純明快、登場人物はほとんど出てこない人を勘定に入れたとしても10人にも満たない。その上で、展開は予想がつかず、世界観に引き込まれた。話のテンポも非常に良く、謎についても途中である程度予想が出来てくるが心情描写や順序の書き方によって驚きや新鮮さがあり、最後まで一気に読めた。

 読後感も非常に良いもので全くダレなかった。ミステリー小説を普段読まない人にもオススメできるような内容だと感じた。この著者の他の作品も読みたくなったのでおそらく読む。

今回の本:原因において自由な物語 著 五十嵐律人 講談社 2021


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