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読書レビュー 幻告

 面白さ★★★★★
 オススメ★★★☆☆
 難しさ★★★★☆
 ページ数:382

 ひとことで表すと……独特の世界に引きこまれるタイムスリップ法廷ミステリー

 最近続けてこの作者の小説を読んでいるが、中でも一番展開が分かりづらかったが同時に一番引きこまれる内容だった。やはりタイムスリップものは時系列の整理等がなかなか難しく、一回読んだだけでは理解し切れていないところがある。だがそんな中でも、今までにない斬新な設定やテンポのよい展開によって引きこまれるとても面白い小説だった。

 この小説の主人公は法廷書記官であり、その立場で自分の父親が関わる過去の冤罪事件の真相を解き明かしていくというのが前半の概要である。過去の冤罪事件について、その冤罪が確定する法廷の1時間前にタイムスリップするという設定で、なんとか冤罪の成立を回避しようとする。過去を変えることによる未来改変などのタイムスリップものにありがちな展開があったり、その冤罪事件回避から巻き起こる、さらに一歩二歩先の劇的で想像できない展開がこの小説の面白い部分だと思う。

 この作者の小説を何本か読んで思ったのは、以下の2点で面白さが表現されている。

①非現実的な設定と法律関係の現実的な設定をミックスさせるのがとても上手い
②展開が早く、テンポがよい

 ただし、難点としては法律関係のところはもちろん、その他の点でも少し理解に時間のかかる難しい展開がある点である。
 何れにしても、私はこの作者の小説は今後も積極的に読んでいくと思われる。面白いので。

今回の本:幻告 著 五十嵐律人 講談社 2022

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