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【ポケモンSV】わやじゃ!! 碧の仮面で情緒むちゃくちゃにされた話。

始めに

これは「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」のDLC「ゼロの秘宝」、その前編にあたる「碧の仮面」を遊んだら登場したキャラクターに情緒めっちゃくちゃにされた物語。

主にDLC「碧の仮面」についての感想とか、キャラクターに対しての考察とかその他妄想とかを書き散らしていくので、重大なネタバレが多く含まれます。未プレイだったりこれから遊ぼう! と思っている方は画面を閉じてくださいまし。

「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」
そのDLC「ゼロの秘宝」に含まれるコンテンツ(前編)。

やってきましたキタカミの地!

物語の舞台はパルデア地方を離れ、外国にあたる「キタカミ」という地域。日本の東北地方をイメージしたような風情ある街並みや景観が特徴的。田んぼの上を飛行するヤンヤンマや水田の中で水遊びをするウパーなど、地域性や植生に合わせたポケモンが配置されていて、「もし現実にポケモンがいたらこんな感じになるんだろうな」っていう没入感が凄い!!

特徴的な棚田に、日本風の電柱や側溝、なじみ深い建築物
田んぼの側に広がる水路やあぜ道など日本の原風景とも呼べるような景観がとてもいい。
正直、このデカさのヤンヤンマが群れで飛んでたら気絶する自信がある。
スイリョクタウンの中心的な建物となる公民館。
比較的最近立て直されたらしく、「あ~あるある」と思える設置物や構造になっている。
花飾りで作られたご当地キャラとか謎においてあるよね。

伝説が根付き、伝説と共に生きる町

今回、主人公たちが本拠地とするスイリョクタウンだが、その地には古くからの「鬼とともっこ様」の伝説が根付いており、住民たちもその伝承を信じている。ストーリーの本筋としても、「鬼とともっこ様」の話が主軸に据えられており、その伝承に隠された真実が主人公たちを大きく翻弄することとなる。

ポケモン世界では、割と伝説や伝承が語り継がれている村や町は珍しくない印象があるが、ゲームの本筋としてここまで主軸に据えられて展開されていくのはあまり記憶がない。しかもそこに絡んでくる登場人物たちの物語や背景とうまく絡めて物語が広がるため、「世界観設定」と「キャラクターたちの物語」を同時においしく味わえて、遊んでいてとても楽しかった。

「鬼とともっこ様」の伝承はざっくりとこんな感じだ。
裏山に住み着いたお面をかぶった「鬼」が、麓の街を襲おうとした時、3匹のポケモンが現れ、街を守るために戦った。3匹のポケモンは命を懸け、鬼からそれぞれ仮面を奪いとることに成功するが、力を使い果たし死んでしまう。
村人たちは鬼を追い払ってくれた3匹のポケモンたちを「ともっこ様」と呼び丁重に埋葬し、彼らが奪った3枚のお面は神社に大切に保管された……という物語。

オリエンテーリングという形で、村に伝わる伝承を巡っていく形式
それに合わせて、キャラクターたちの話が少しずつ挟まる。
非常にわかりやすく、続きがきになってくる面白い物語の展開だった。

しかし村に伝わっていた伝承は事実ではなく、本当にあったのはまったく逆の物語。

昔々、異国からやってきた人間と鬼がこの地に流れ着くものの、その異形の姿に村人たちは恐れおののいた。二人は受け入れられないことに悲しんだが、互いさえいればよいと思い、ひっそりと裏山に住むようになる。それを不憫に思った村のお面づくりの職人は、彼らの持ち込んだ世にも美しい宝石をあしらった、特別なお面を複数作り、彼らに贈った。お面をかぶれば素顔を隠し、村人たちと仲良くできるため、人間と鬼は大層よろこび、それ以来、お面をかぶっても不審に思われない「オモテ祭り」に参加するようになった。

だが、その噂をききつけた強欲な3匹のポケモンは、彼らの住処に忍び込み、お面を盗もうとする。人間はお面を守るため戦ったが、3つのお面を奪われ、その命も落してしまった。それを知った鬼は怒り狂い、3匹のポケモンに襲い掛かったのだ。事情を知らない村人たちはそれを見て、恐ろしい鬼と戦う3匹のポケモンたちは村を守ってくれたのだと考え、それ以来そのポケモンたちを「ともっこ様」と呼び慕った。傷つき悲しみに暮れた鬼は、ひとり裏山の洞窟へと帰っていった……というとても悲しい物語が真実だったのだ。

紙芝居のように語られる歴史の真実。
キタカミの世界観ともマッチしていてとても雰囲気ある物語に。
後の世では「オモテ祭り」と呼ばれる祭りのこと。
オモテを隠して参加した祭りの名前が「オモテ祭り」とは皮肉なのか
それともいつの日か、お面がなくとも参加できるようにとの祈りなのか…
訪れる最悪の結果。死亡したのかは定かではないが……
鬼こと「オーガポン」と出会った時かぶっていたお面は、
大切な人かぶっていたお面というのも泣ける。
これにはゼイユもこの顔でブチギレ。よくわかる。

スグリという男

はい、ここまではざっくり「碧の仮面」物語の話。単に伝説を追っかけてくというストーリーだけでもめちゃ面白かったのだが、この記事で喋りたいことはここから先の話となる。そしてそれがこの男……

ひょっこりと背中に隠れてこちらをうかがう。小動物みたい。

かわいい~~!! 初対面の時こんなだったのね。DLCコンテンツでは全編通して登場するキャラクターの一人であり、多くのプレイヤーの心を良くも悪くもかき乱した男の子。その名も「スグリ」くん。
鬼様(=オーガポン)のことが大好きで大好きで仕方なく、お姉ちゃんこと「ゼイユ」を打ち負かした主人公にメロメロになるとかいう初っ端からやたらと好感度の高いショタ。

邂逅直後、姉のゼイユに喧嘩を売られるが
その時からすでにこちらを応援している謎の好感度の高さ(画面左側)。
わや(≒めちゃくちゃ、すごいみたいな意味)
このリアクションから察するに、ゼイユはかなり強いトレーナーらしい。
確かに平均Lvが60近くで、手を抜くと普通にやられかける。

最初にあった時の印象は、「引っ込み思案で内向的なおとなしい子」であり、実際お姉ちゃんの背に隠れたり、自分の意見をなかなか言えなかったりと人付き合いが苦手なように見える。お姉ちゃんのキャラが強すぎるのもあるだろうが、自己紹介の時もぼそぼそっとした感じの声であいさつをするなど、自信がなさそうな感じ……

自信なさそうに自己紹介をするスグリくん。
うしろで優し気な顔で見つめる姉ゼイユ。
この時は「自信が持てない感じの子なのね~」なんて軽く思っていた。

その後も、ホントは主人公のことに興味津々なのに言い出せず、姉ゼイユに口火を切ってもらうなどやや姉に頼りすぎな面も見えつつ、主人公と一緒にキタカミめぐりができることは素直に喜ぶなど、根はやさしく素直な子だとこっちも好感度がぐんぐん上昇していく。

どうも初日の衝撃顔合わせからずっと意識していたらしい。かわいすぎかよ。
恥ずかしがるスグリくん。
姉に対しては素直なリアクションをとることができる様子。
暴力宣言の姉ちゃん。怖い。
多分なんどかほんとに殴られてるのがわかる。

こうして始まったスグリくんとのキタカミめぐり。姉から離れて主人公と二人きり……といっても、一緒に歩くわけではなく見えないところからひっそりとつけてくるという謎の距離感を保たれつつではあるものの、次第に縮まる二人の距離。というか普通に後ろからついてきてくれよ。

見えないところからこちらをうかがってついてきているらしい。
彼なりの配慮の仕方なのかもだが、普通に怖い。
スマホロトムは持っていないらしく、課題クリアのための自撮りを任せてくる。
最初の内はまだ慣れないのか、どこか恥ずかしそうなピース。

その後も、課題をクリアするために伝承を巡る二人。スグリくんも慣れてきたのか徐々に距離を詰め、一緒に「オモテ祭り」に参加することに。
スグリくんと同じ甚平姿でお祭りに行き、りんご飴を食べる……甘酸っぱすぎだろ!! パルデアメンバーを差し置いてデートイベントが発生するという異常事態。だ、ダメだよスグリくん……私にはサワロ先生がいるからっ……!

因みにスグリくん、一人称は「おれ」。見た目がかわいらしく、性格も内向的だけど使う言葉は結構男の子って感じがとても素晴らしい。りんごあめとかも食べる時に「食う」っていうし、見た目以上にしっかりと男の子している。ちょいちょい方言が飛び出てくるところもキュート。本編側にもグルーシャやオルティガといったキャラクターが登場するが、彼らとはまた違うキャラ性を確立させている。
お姉ちゃんであるゼイユとの関係は良好のようにも見えるが、やや過保護なところや時折振るわれる暴力には怯えた表情を見せるところから、抑圧されている面もある様子。

スグリくんのおばあちゃんに甚平を出してもらう。
お揃いの甚平だね!
因みに後々判明するが、主人公はスグリくんより小柄らしい。
リンゴあめ屋さんにて、スグリくんがリンゴあめを買ってくれる。
優しい……!
ゲームジャンルが違ったら恋が始まっていたかもしれない。

しかし楽しい時間もあっという間に過ぎ、ゼイユとスグリがもめている間に事件が起きる。伝説の中の存在だった「鬼様」こと「オーガポン」と出会ってしまうことで、スグリくんとの蜜月の時に小さな亀裂が入ることに……
ゼイユ的には善意でオーガポンのことを伏せておこうとしたことが裏目にでて、この一件をきっかけに主人公との関係はぎくしゃくしてしまう。蜜月の時、儚かったなぁ……

本DLC「碧の仮面」にて登場する伝説のポケモン「オーガポン」
被るお面によってテラスタイプが変化する強力な特性を持つ。
お面のしたはこんな感じ。非常にかわいらしい。
性別は女の子であり、性格は「さみしがり」で固定されているのも心に来るものがある。
どてらを羽織っているようにも見え、ご当地ゆるキャラみたいな愛らしさが素敵!

最終的に拗らせに拗らせた結果、オーガポンの相棒になるのは誰かで揉め、スグリくんと主人公は戦うことに。これ本当に心が苦しかった。

だってオーガポンのことも好きだし、スグリくんのことも好きなんだもの!! 一方的にオーガポンのことが大好きだというスグリくん、しかしオーガポン的には「ぽに?(お前誰?)」ぐらいの感覚で、彼にとって一世一代の大勝負となるこの戦いも「この人たち何してんだろ?」ぐらいの感じで見られてるのがもういたたまれない。スグリくん自信も、自分の思いが自分勝手なことであることは承知しつつも、この想いを抑えきれないと全力で勝負を挑み、そして敗北することとなる。
結果として、大好きだった鬼様を失い、主人公への憧れはぐにゃぐにゃに歪み、完膚なきまでに精神を削がれ、脳を破壊されたスグリくんは不敵な笑みと、妄執ともいえる「強さ」への執着を見せて次回へ続く……となる。嘘でしょこんな引きある??

主人公と共に歩みたいとするオーガポン。
それに対して思いの丈を叫ぶスグリくん。
自分勝手なことを言い始めるスグリくん。
ポケモンのことを考えていないこの発言に、怒りを覚えたプレイヤーもいるかもしれない。
ただ彼自身、自分勝手なことを言っている自覚があるのが辛いところだ。
そしてこの目である。本気になるとハイライトが消える姉弟、怖い。
彼にとってはすべてを懸けた、正真正銘大勝負なのだから仕方ないのだが……
しかしオーガポンからしてみれば、彼らが何をしているのかさっぱりわからない。
それもそのはず、オーガポン的にはスグリのことは全く知らないのだから
何で急に二人がバトルをし始めたのか、見当もつかないことだろう。
スグリくんいたたまれなさ過ぎる。
バトルの後、ゼイユとスグリのブルーベリー学園のメンバーは、先に学園へと帰ることに。
しかしスグリの姿はなく、どうやら自室にこもって何かしているようで……
ヤバいスイッチを入れてしまった。
完全に闇堕ちした……ゲーフリにはかわいいショタの心をへし折るのが
性癖なヤバい開発スタッフでもいるんですかね?
主人公の名前を呟きながら、前髪を纏めるスグリくん。
嫌だよ~~そんな雰囲気で名前呼ばれるの~~!!
闇堕ちしてヤンデレみたいになっちゃってるじゃん!
そしてこのデカデカとした「後編につづく」である。
ここでこの引き、地獄か??
この状態で数か月を待てと???

スグリくんへの考察

地獄のような展開だった……前半の楽しかった夏祭りはどこへやら、闇堕ちしたスグリくんと選ばれてしまった主人公、そしてオーガポンのどろどろ三角関係が成立した。これ本当に全年齢対象のゲーム??

ここだけみると滅茶苦茶自分勝手なスグリくんが勝手に先走って自滅した。という感じになってしまう(というか大体そうではある)。勿論、これはゲームなので、主人公側メインで話が回らなきゃ成立しないというのはあるが、それにしたって進んだ先が悲惨すぎる。
これまでのポケモンシリーズを全部やったわけではないので、そんなに深い話はできないけれど、バトルに勝利してこんなにも惨めで辛い思いをしたのは初めてのことだった。だからこそ、そんな展開になってしまった一番の要因である、スグリくんについていろいろ考察してみたいと思う。

こんな綺麗に笑っていたのに、どうしてあんなことに……
というのも、すべてのきっかけが主人公と言えばそうなのだが
次回後編ではぜひとも救われてほしい……マジで。

奇妙な距離感

一番最初に感じたのはこれ。ちょっとかわいそうだが妙に距離感の詰め方がへたくそに思える。最初、主人公に出会った時興味を持ちながらも自分で声をかけられないほど、距離感を遠く保っていたスグリくんだが、一度線を超えれば一気に距離を詰めてくるこの感じ。人付き合いが苦手で距離の取り方がわからない……というより、人付き合いをほとんどしてこなかったという印象を受ける。

出合って翌日にはこの距離感。とても近い。かわいい。
このときはこの後あんなことになるなんて思いもしなかったので
今振り返ってみればさらに深くにとげが刺さる……

実際に、おばあちゃんやおじいちゃんと初めて出会った時のことを思い出すと、スグリくんには友達がほとんど、もしくはまったくいなかったように思える。しかし、彼らの故郷であるスイリョクタウンにも子どもの姿はあるし、ブルーベリー学園にも同年代の子どもたちはたくさんいるはずだ。友達が少ない、ならわからなくもないが、友達が一人もいない、今までいたこともない、というのは若干奇妙にも思える。

おじいさんのセリフ。
驚いた様子で主人公をみて「友達か?」と聞いてくる。
ただ、この年頃の子なら友達がいても不思議じゃなさそうだが……
スグリくん自身も友達だったのかと驚いている。
友達だよ!! 友達じゃなかったらなんなのさ!!
あんなこと(バトル)やこんなこと(伝承巡り)もしたじゃないか!!!
かわいいなおい……!
このかわいさと後半のギャップが多くのプレイヤーの心を締め付ける。
なんて奴だ……

姉、ゼイユの功罪

ではなぜスグリくんにはそんなにも友人の影が見えないのか? その時考えられるのが、姉ゼイユの存在だ。

スグリは登場時から姉であるゼイユにべったりだ。最初は人見知りキャラなだけなのかとも思っていたが、冷静に考えてみると生まれ故郷でも姉にべったりというのはやや不自然にも見えてくる。もちろん、人付き合いが苦手なので、唯一心を開いている姉にべったりくっついて回るというのも考えられるが……

最初のころはゼイユから離れようともしない。
主人公の前だけかとも思ったが、集会の時でもついて回っていた。
普通、生まれ故郷でそんなにぺったりついて回る?

また、ゼイユはよそ者に対して非常に警戒心が高く、主人公と出会った初っ端から勝負を挑んでくるほどに目を光らせている。大切な場所(生まれ故郷)であるこの街に、土足で入ってこられる感じが嫌だったと後に述べていることから、大切なものを守りたい……という想いの裏返しなのかもしれない。素直じゃないけど、何かを守りたいという気持ちは人一倍強く感じる。

主人公がはじめてスイリョクタウンに足を踏み入れた時の事。
主人公のことをみたスグリくんが驚いてこちらを見ている。
パルデアからくることは知ってそうなものだが……
その直後、歓迎のあいさつをしてくるゼイユ。
極端によそ者に対しての警戒心と抵抗感が強い。

そのことから、大切な物……すなわち自分の弟を無意識のうちに守ろうとしているのかなと思った。
自分自身、スグリの姉であり、弟を守ろうとするあまり弟に近づくものを自動的に選別してしまう。結果的に、スグリは姉の選んだ「安全な物」のみ手に入れて、自分で友達を作るといったことをしなくなってしまったのかも……

「誰かのためを想って」というところは、弟のスグリくんにも似たところがあるあたり、よく似た姉弟だなと思う。ただ、どちらとも暴走しており、それが表面的に噴き出てしまったのがスグリで、表面化していないのがゼイユなのかなと思った。

「憧れ」と地獄のようなすれ違い

スグリくんは「ともっこ様」の伝説が残るこのキタカミの地で、ほぼ唯一と言っていいほど「鬼様」のことを好いており、危険で誰も立ち入らない裏の山に入るほどの入れ込みようだった。
なぜそこまでに鬼様のことが好きだったのかと言えば、「3匹のともっこ相手に戦い抜いた強さ」という所である。3対1でも戦い抜く勇敢な所、強い部分に惹かれているようだが、実際のところは「大切な人を失った怒りと悲しみによる狂乱」の結果が曲がり曲がって伝承として受け継がれており、オーガポン自身は争いを好んでいるわけではない。性格が「さみしがり」固定というところからも、本来は非常に人懐っこく優しい、戦いには不向きな性格だと考えられる。
本来の伝承を知った後も、オーガポンへの「強さ」への憧れが変わることがないことからも、純粋に「強さ」への異常なまでの執着が心の奥底にある様子がうかがい知れる。また主人公のことも「特別で、だから強い」と思っている節があり、彼の「憧れ」は、やはり何者にも負けない「強さ」なんだと思われる。

コライドンが出てきたときのセリフ。
「特別だから強い」
どこかのバトル狂がきいたらキレそうな発言である。
そのバトル狂のセリフ。
圧倒的強者である彼女の言葉。
「天才だから強いわけじゃない」
そこに至るまでの過程を経て強くなった

ここもまた、多くのプレイヤーの神経を逆なでしたポイントだろう。

上のスクリーンショットの通り、スグリくんは大きな勘違いをしており、特別だからコライドンが懐き、チャンピオンランクに上り詰めたわけではないのだ。
サンドウィッチを分け与え、小さなポケモンにはしゃがんで話す。幾度ものバトルを経て、沢山の人たちと交流して……その積み重ねが「強さ」の元になっている。「特別だから」は大きな勘違いで、今後彼の成長を良くない方向に進める危険性しかない。

コライドンとの冒険もそう
強いから懐いたわけじゃない、傷ついた彼に手を差し伸べたその優しさが
すべてのきっかけだし……
どんなポケモンでも分け隔てなく、目線を合わせて話す主人公。
そんな小さな積み重ねが今の主人公を作りあげているし……
沢山の仲間との、かけがえのない冒険も
今を作る「強さ」に結びついている。
決して「特別」というわけじゃない、皆悩みを抱えていたのだから。
……振り返ってみるとよくわからんこともしてたな……

結局、彼は物事の表面しか見えていなくて、ただ「強い鬼様」に「憧れ」て、「姉をも破る強さをもつ主人公」に「特別」を感じて、自分もそうなりたいと願い、でもけっして届きはせず、嫉妬と後悔を持ちながらも、自分の想いは抑えられず、だがそれでも「憧れ」という呪いに取りつかれ、強烈な光に焼かれ続ける怪物になってしまったのかもしれない。

しかも主人公が強烈な光であるがゆえに、仮に最後のバトルで主人公が敗北したとしても、主人公は潔く手を差し出して「負けちゃったけど、良いバトルだった!」とか何の悪意もなく言うに違いない。そんなことされれば、勝ったはずのスグリの精神は間違いなく崩壊するだろうし、勝ち負けに関わらず、「強さ」が基準ではないオーガポンは変わらず主人公を選び続けるだろうから、どちらにしてもスグリくんはあの時点ですでに敗北が確定していたのが絶望的過ぎる。

なにより、なにごともままならない「リアルな等身大の子ども」を描いた本作はなんというか、スグリくんみたいなキャラクターに対しての解像度が異様に高い。なんでこんなにリアルに描けるんだよ怖いよ。どこか我がままで、自分勝手で、でもそれを理解はしていているけどどうしようもない、思春期真っただ中の等身大の男の子を描くそのセンスが恐ろしい。主人公という光に焼かれてできた、ドス黒い影となってしまったスグリくんは今後どうなってしまうのか……

手持ちのポケモンたち

これも結構話題になっていたが、彼の手持ちポケモン(最終段階)は次の通り。

ダーテングLv.71 ♂(きあいのタスキ所持)
メガヤンマLv.72 ♂(アッキのみ所持)
カミッチュLv.72 ♂(たべのこし所持)
ダイノーズLv.71 ♂(ヤタピのみ所持)
ニョロボンLv.72 ♂(オボンのみ所持)
グライオンLv.76 ♂(ヤチェのみ所持)

きっちりアイテムを持たせたガチバトルであり、本編の進行度次第では強敵となる。因みに私は1回全滅した。「ダイノーズって何タイプ…?」とかポケモン初心者みたいなことを思い、普通に手こずっていたところ殲滅された。

この編成で興味深いのは、手持ちのポケモンが「道具進化or条件進化」のポケモンで構成されていることである。

ダーテングは「リーフの石」で進化
メガヤンマは「げんしのちから」を覚えた状態でレベルアップ
カミッチュは「みついりりんご」で進化
ダイノーズは「かみなりのいし」で進化
ニョロボンは「みずのいし」で進化
グライオンは「するどいきば」を持たせ、夜にレベルアップ

と、比較的進化が容易であり、これが彼が「安易に強さを求めている」とされるゆえんでもある。また、強さを求めてなのか最初から手持ちに入れていた「オオタチ」や途中から入れていた「ウッウ」は外され、代わりに「ダーテング」「ダイノーズ」に変更されているのもポイントである。特にオオタチは「オタチ」のころから手持ちに入っていたので、選出外になったことは驚いた。ていうかオオタチかわいいし好きだったんだけども……

ただ一つ彼の名誉のために言っておきたいこととしては、彼は非常に優秀なトレーナーであることだ。わずか短時間(ゲーム内時間で1日にも満たない!)でこれだけのパーティーを構築し、育て上げ、しかもきっちり持ち物を持たせ、戦術を組んで戦ってくる。初手もダーテングを繰り出してタスキで耐えてくるし、ニョロボンははらだいこ+オボンのみで高火力を叩きだしてくる。各弱点に対しても、実を持たせることでカバーしようと考えている当たり、その実力は優秀で、単に強さを欲しているだけの子どもではないことだけは覚えておいてほしい。
強さを求めるにあたって、彼自身創意工夫を凝らし、限られた時間とリソースの中で最善手を組み、全力で主人公にぶつかってきたのだ。そして恐ろしいことに、彼はまだまだ成長段階で、これからもっと強くなることだろう。後編で会うときが楽しみでもあり、恐ろしくもある。

理由はどうであれ、優秀なトレーナーであることに違いはない。
最終決戦を前に、全力でぶつかってくる。
これまでの戦いを反芻し、確実に攻めてくるスグリくん。
ただ相手が悪かった、★6レイドやポケモンホームから化け物を召喚してくるのが相手だもの
そりゃ勝つのは厳しい。

スグリとゼイユの名前について

これもまた話題になっていたことではあるが、彼らの名前についても植物からきているのではないかと盛り上がっていた。

スグリと同じ名前の植物に「セイヨウスグリ(別名マルスグリ)」という植物が存在する。1~3m程度の低木の茂みを作り、枝にはびっしりと棘を備え、春になると小さな白い花を咲かせて、夏ごろに淡い緑褐色の実をつける。実は食用で酸味が強くジャムや塩漬けにして食べられるそう。因みに和名の「スグリ」は漢字で「酸塊」と書く。
また、同じくスグリ科には「アカスグリ」といった種が存在し、これはフランス語由来で「グロゼイユ(Groseille)」と呼ばれる。二人が「ブルーベリー学園」に所属しており、セイヨウスグリの学名が「グーズベリー(Gooseberry)」とされることもどこか示唆的である。日本での栽培もおこなわれており、基本的には長野や東北地方で栽培が盛んというのも本作の舞台感にマッチしており、名前の元ネタになった可能性がある。

そしてこれらの花言葉だが、「あなたの不機嫌がわたしを苦しめる」「わたしはあなたを喜ばせる」とあり、本編の展開に嫌にマッチしているのが心に来る。
「あなたの不機嫌がわたしを苦しめる」は、セイヨウスグリの枝にはするどい棘があることから、実の収穫に手間がかかることに因んでいるとされ
反対に「わたしはあなたを喜ばせる」は甘酸っぱく美味しい実をつけることに由来するとされている。

後編がどんな物語になるのか不明ではあるが、あの引きから激重い展開になることは想像に難くない。ただ最後は、甘酸っぱい実をつけ一緒にそれを分かち合えるような展開になってくれると……うれしい……ほんとに。

これは完全な想像だけども…

というか、こんな拗れたことになってしまったそもそもの原因はなんだろうか? 過保護な姉と、臆病な弟。スイリョクタウンから海外の学校へ進学した唯一の姉弟。「強さ」につよい憧れを持つスグリ……

完全な妄想ではあるが、過去スイリョクタウンにいたころ、スグリくんはいじめや事件に巻き込まれたことがあるのかもしれない。あまり想像はしたくないが、そういった良くないことをきっかけにゼイユも「姉」として弟であるスグリを守ろうと、過剰に過保護になっていったのかも。わざわざ海外のブルーベリー学園に進学したのも、この街から離れて新しい学園で心機一転勉学に励むというのが目的だとしたら……

本作の本編では、「いじめ」に関するストーリーも存在するために実はそういうこともあったのかも、と思えなくもないのが恐ろしい所である。特にスグリくんは精神的にも不安定で、依存がちで内向的というのも相まって、「いじめられっ子」になっていても不思議ではない。姉に対しても思うところもあるようで、時折反攻心を燃やしたりなど、抑圧される環境に対しストレスの発露を見ることもあった。いろいろと精神面が心配ではある。

っていうか、久しぶりに戻った故郷で、同年代の異郷の子と仲良くなり、友達になったものの、自分のせいでぎくしゃくした関係でお別れになってしまうとか地獄もいいところである。
『初めてできた友達! 今まで会いたかった鬼様との邂逅!! しかしその友達にのけ者にされていた事実、大好きだった鬼様は友達についていき、友達とはケンカ別れ……』という一連の濃密体験を3日程度に濃縮して思春期真っただ中に受けたらそりゃ頭おかしくもなるって!! いくら何でもかわいそうだよ!!

良くも悪くもネタにされがちなこのシーン。
本人も力量差をわかっていたが、それでも退けないときはあるよな…
「どうしてそこに立ってるのがおれじゃないんだ…!」って気持ち、わかるよ。
やっているこちらとしても辛いものがある。
泣き声をあげて走り去ってしまう。
勝利したのにこんなに罪悪感あることってある??

これは私の後悔日誌

ここから先は私が実際にプレイした時思った後悔なので、別にスグリやゼイユの考察でもなんでもない。

今回、せっかくキタカミの地に来たので「キタカミにしかいないポケモンで編成しよう!」と思い、あちこちでキタカミ限定ポケモンをゲットしてきた。

最終的には「グラエナ」「キュウコン」「ジャラランガ」「ヨノワール」「コジョンド」「カミッチュ」とパルデアにはいないポケモンだけで編成し、かつガチガチにレベルを上げすぎないで戦った。というのもパルデア本編クリア時、あっちこっち回りすぎたおかげでポケモンのレベルが上がりすぎ、ライバルとのバトルがあまりにも一方的な勝負になってしまったことへの反省があったからだ。最終決戦時も、できるだけレベルを上げないよう気を配り、Lv80未満で挑んだ。ぶっちゃけ余裕だと思ったが一回全滅するぐらい厳しい戦いだったので満足は満足だったのだが……

キタカミで捕まえたポケモンのみで編成している。
レベルを上げすぎないようにしているため、野生のポケモンとの勝負もできるだけ回避している
結果的に努力値は全然振られてない。

当然といえば当然だが、これはキタカミ版編成であるため、本来のガチパルデアメンバーではない。主戦力というよりかはゲストを交えた交流戦的なノリで構成した編成で、全力120%かと言えば70%ぐらいの力で、言ってしまえば手を抜いた編成といえる。というかパルデアメンバーは個体値も努力値も最適化されたLv100とかなので出したくても出せない事情はある。

しかし、相手のスグリくんは「本気でぶつかってきてほしい」と言っていて、思い返してみれば彼の思いに答えられていたのだろうか……そして、いつだったか、ネモが話していた内容を思い出してさらに心に刺さってしまった。

すまん、本気と言えば本気だけど本気じゃないんだ…
「程よく駆け引きが楽しめるよう、調整した編成です」
なんて今の彼に言えるわけがない
我が永遠のライバルネモとのお部屋トークイベント。
大好きなポケモン
大好きなポケモンバトルに打ち込んだ日々
その結果手にした圧倒的な勝利と栄誉
ただ、そこまで打ち込めるのは容易なことじゃない
ネモにとっては普通のことでも
ネモ以外にしてみれば普通のことじゃない
これはある種の才能ではある
何気にいいところのお嬢様ということもあり
当時はかなり悩んだ模様
そして張られる見えない壁
「ネモは強すぎるから戦いたくない」は実際にイベントでもあった
そうして至ったある種の境地
圧倒的な強者故の孤独
誰にも理解されない領域で、彼女はライバルを求め続けた

ストーリー上の決められた展開ではあるものの、あの勝負の後からスグリくんはさらに「強さ」に執着するようになり、主人公に対して妄執的な意識を向けるようになってしまう。別に関係ないなんてわかってはいるものの、「手を抜いて戦った故に彼をそこまで追い込んでしまった」と思えてしょうがない。
ネモが誰にも理解されない強者の領域でライバルを求め続けたように、全力でぶつかってきてほしいと願ったスグリに、生半可な力で戦ったがゆえに、「初めてできた友達である主人公に応えられるよう、さらに強さを求めるようになってしまった」のだと見えてしまい、心が痛む。激痛である。

しかも本編ストーリーをやった後にDLCでこんな展開をすることにいい意味で強烈なダメージを受けた。ネモやペパー、ボタンに各ジムリーダー、スター団などなど幾つもの物語を経て、いまこの物語を読み込ませるのもう悪意があるとしか思えないほど素晴らしい物語だった。心を抉るの得意ちゃんか??

これはハイダイ師匠の言葉。
2度目の戦いの後のセリフ。
今までバトルに勝つことにそこまで深く考えたことはなかった
だが、勝負に勝つこと、それが何を意味するのかを
このキタカミの地でかみしめることになった。
誰もかれもが激流に乗れるわけではない。
そんなことネモとの話で分かっていたはずだったのに……
これはジムリーダーリップとの2戦目の時のセリフ。
なまじバトルセンスがあったスグリくん。
そして誰よりも鬼様のことを想っていたというプライド……
その結果、今大きな壁にぶち当たり……
自棄を起こして更なる「強さ」への渇望、憧れに取りつかれてしまった。
大人たちだからこそ言える台詞の数々。
スグリくんに必要だったのは、こういったことを言ってくれる
沢山の人たちとのかかわりだったのかもしれない。

そしてさらにきついのは、Twitter(現:X)のタイムラインに流れてくるスグリくんのファンアートである。「こうなったらよかったのに」「こうであってほしかった」そんな「もしも」の世界線の素晴らしいイラストが毎回急所を直撃し、こうかばつぐん! のダメージを与えてくる。ヤバ過ぎる。タスキ無限に所持してないと耐えられない。

X開くたびに毎回コレ。後編が来るまでHPが残ってるわけがない。

最後に

本当に何の気なしに遊んだらとんでもないクソデカ感情を抱く羽目になり、この気持ちという名の爆弾を抱えながら後編まで待つことになった。待てるか!! 助けて……

後編にはさらに新しいキャラクターやポケモンも登場する。既存のポケモンでスカーレット・バイオレットにいなかったポケモンたちも解禁になることから、今まで以上に白熱したバトルと展開が予想でき、とても楽しみ!

なにより、スグリくんと再び出会えることが楽しみでならない。あの引きだったので、おそらくだいぶ闇堕ちしての再登場となるのは予想に難くない。それでも、今度こそ彼ときちんと戦って、楽しくポケモンバトルがしたいのだ。パルデアにだって来てほしい! こっちの友達も紹介したいし、皆でピクニックしたいし!! ブルーベリー学園に行ったら学園の中を一緒に歩き回りたいし、どんなところで生活してるのかも見てみたい! 一緒に授業も受けてみたいし! またゼイユとも一緒にお祭りに行きたい!!!

「強さ」への憧れ
は誰にも止めることはできないだろう、だから今度こそ、全力本気でぶつかって、彼の気持ちに応えなければと思う。彼はもう、大切な友達なのだから。今度こそ、全力で戦ろう! 

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