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インドは旅行じゃないよ。冒険だよ。14.世界の避暑地 ポカラ

朝、ボーイが部屋に朝食を運んでくれた。
映画などで見てはいたけど、ベッドで食事をするのは初めてだ。

焼きたてのナンにバター、ハチミツ、そしてベーコンエッグ。
飲み物は、オレンジジュースとホットチャイ。

窓のカーテンを開けてくれる。
目の前にエベレストの山並みが広がる (*´Д`*)
こんな贅沢ある?!

そんな最高の幕開けをしたネパール初日。
軽装でポカラ湖畔を散歩。

屋台のフルーツ屋。
開放的だからか、ここでは南国の果物がよく似合う。
小さいバナナを発見。
早速食べるが、酸っぱい。
それを見て笑う店員。
モンキーバナナは酸っぱいって、教えてくれよ(´Д`)

カフェ風レストランが多い。
登山靴を履いた白人がチラホラ・・・絵になるなあ。

道端にむしろを敷いて少年が何かを売っているのをちょくちょく見かける。
近づいて見てみると、それは使い捨てライターだった。
よく見ると、使い終わった空ばっかり。
少年はその空のライター一つ一つにガスを詰めているらしい。
ガスの出る所から、強引に押し込んでいる。
超効率が悪い。でもそれがその子の生業なのだろう。
もしかして、それで一家を支えているのかも知れない。

僕は、残り少なくった使い捨てライターにガスを入れてもらった。
バッグに8個ぐらい、入ってはいるけれど。
値段は忘れたけど、1ルピーか2ルピーぐらい(10円か20円)。
10ルピー渡して、釣銭を断った。
輝くような笑顔を見せて、少年は笑った。

所々でチャイ屋を見かけるが、昔のように大鍋で焚きだしている店はない。
作り置きのチャイをポットに入れてあるのだ。
コップも土器(かわらけ)ではなく、ガラスのコップだ。
たった8年でこんなに変わってしまうものか。

湖畔のメインストリートの端にデビルズホールという名所がある。
奈落と言う意味らしい。

デビルズホール

まあ、名所と言えば名所。
ここは世界一の景色が観れる場所だから、他が霞むのは仕方ない。

その近くで、道端で炊き出ししているチャイ屋を見つけ、そこで一息ついた。
期待通り、土器で出てきた。

これこれ💗
大鍋に蠅がたかっていたりするけれど、中には滑り落ちて一緒に炊き出されているかも知れないけれど、美味しいような気がするw
ガンジス川の水よりましだろう・・・比べるモノがw
頭がインドやネパール化して、大雑把になって来たw

お昼を湖畔のカフェレストランでとることにした。
ダル(豆)カレーにベジ(野菜)カレー、そしてヤク(でっかい黒山羊)の肉が入ったミートカレー。
食後のチャイを飲みながら、湖畔を見渡す。
何隻か手漕ぎボートを湖に浮かべ、ぼんやりエベレストの山並みを眺めている。
何て平和なんだろう。
インドでの戦いが嘘のよう。
僕もこの避暑地でゆったりと寛いでいるのが信じられない。
僕たち夫婦も、一幅の絵になっているのだろうか・・・。


昼から、湖の中央に浮かぶ島に建てられたホテルに向かう。
ホテルへは、渡し船を使って行く。

でっかいバンガロー風のホテルは、一泊5万円。
まあ、バックパッカーが泊まるホテルではない。

カフェレストランにホットコーヒーを頼み、その店の庭にあるハンモックに揺られる。
湖にエベレストの山並みが映っている。
胸がジーンと痺れて言葉を失った。
世界の避暑地と言われる所以(ゆえん)だ。

感動しながら僕はいつの間にか眠ってしまったらしい。
先に起きた妻が冷めたコーヒーを飲んでいる。
僕たちは見つめ合った。
言葉は何もいらない。
微笑みだけで、全てを分かり合えた。
一緒にいるって大切なんだな。そう思った。

その後、一時間ほどボートに揺られ、ぼーっとエベレストを眺めて過ごした。
日常の煩わしさを全て忘れた。
僕たちは今、生きてここにいる、十分だと思った。

夕暮れ、エベレストの尾根が赤く染まり始めた頃、僕たちはホテルに戻った。
「何が食べたい? ラーメンか?」
ボーイの言葉に耳を疑った。
「ラーメンあるの?」
「出前一丁だよ」
僕たちは噴き出した。
聞くところによると、出前一丁が各家庭に置いてあるぐらいメジャーな食べ物で、中国でも大人気らしい。

「そば飯もあるよ」
僕たちは爆笑した。マジか・・・・。
厨房で見ていると・・・出ました! 日清のチキンラーメン!!(゚Д゚;)
それを袋に入ったまま手で砕き、その上から金槌で叩いている。
そこまで潰すかって言うほど潰して深めの中華鍋に湯を入れ戻す。
そして水分がなくなってきたところで、ライスを投入。
塩、胡椒、そしてマサラ・・・こいつが曲者(くせもの)。

カレー風味のそば飯に、僕たちは大満足。
アジアをごった煮したような味に感動したw

時間がまだ早いので、湖畔まで降り、お茶をしに行った。
賑やかな音楽が流れてくる店の前で足が止まった。
大勢のテーブルに座った客が見守る中、ダンサーが踊っていた。
妖艶でエネルギッシュ、しなやかなその身体は、まるで蛇の化身。
僕はすっかり魅入られ、テーブルに腰掛けた。

ダンサーが、珍しいアジア人に気付き、チラチラと目が合った。
ドンドン僕の方へ近づいてくる。
ドキドキしながら見ていると、ダンサーは僕の正面で僕の目を見つめながら激しく踊りだした。
まるで僕を誘っているよう。

10分ほどの曲が終わり、ダンサーはやっと動きを止めた。
僕に近づき、そこで隣にいる妻に気付いたようだ。
ニコッと二人に微笑むと、彼女は白人たちが待つ中に入って行った。

あ、あ、あれは、どういうことだったのだろう・・・・?!?
と、妻を見ると、妻は目を細めて僕を見ていた。
ふーん・・・そんな感じだ(゚Д゚;)w
い、いや、あれは・・・・
言い訳をしようとして僕は言葉を飲み込んだ。
何かをしたのでもなければ、何かが始まった訳でもない。
言い訳など必要ないことに気付いた。
ただ、奥さんの細めた目が・・・・怖かった(つД`)

それから何度かその店に足を運んだが、最後まで逢うことは出来なかった。
もう一度だけ見たかったなあ・・・。
と、横から強い圧力を感じ振り向くと、奥さんの細めた目が・・・・!
「男って馬鹿ね」
はい、その通りです・・・・・。

帰り道。
満点の星が輝く空を見上げる。
遠くに、白くぼーっと浮かぶエベレストが見える。

また感動に襲われた。
「いい夜だなあ」
「そうね」
その言葉以上の思いが伝わる。

ポカラ初日の夜の出来事。



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