2020年7月14日

2020年代は、インスタントアプリの幕開け、そしてアプリケーションの再定義の時代。

2008年、Appleが『App Store』という革新的なプラットフォームの発表は革命的でした。
これによって、スマートフォンはただの携帯電話を脱し、人々にカスタマイズできる選択権を与え、手のひらに収まったそのハイテクマシンは、可能性を広げていき、ゲーム機、リモコン、レジ、など、あらゆるデジタル機器の代わりとなっています。
それまでは、パソコンで使うアプリケーション（ソフトと呼んでましたね）は、無料なら使うという考えも多かったですが、良質で手頃な価格のアプリケーションが市場に溢れたことによって、良いものは買う、という考えにもシフトしていきました。

一方で、アプリケーションの開発・リリースは、現代社会において、顧客にサービスを届けるための登竜門となっています。
そのため、市場にはアプリケーションが溢れ、ストアランキングにランクインするだけでなく、ユーザーのホーム画面１〜２ページ目に入ることすら偉業になりつつあります。
また、悪質なアプリケーションも横行し、近年、AppleやGoogleは、セキュリティ対策と旧式アプリの削除に取り組んでいたりします。

2020年代は、またこの流れに変化が生じそうです。

アプリケーションをユーザーに利用されるための課題として、この３点は常に、開発者やマーケティング担当者の悩みのタネとなっています。

・アプリをインストールしてもらうこと
・アプリを開いてもらうこと
・アプリを使い続けてもらうこと

この悩みを解決する手段が、密かに、戦いの火蓋を切り落とされつつあります。

Googleの答え：PWA

Webページで、スマホアプリのようなリッチなアプリを実現できるPWA。
Microsoftとも協業し、推進を検討されています。
すでに、PWAを採用する企業も増え、注目の技術とマーケットだったりします。

【メリット】
・インストールの必要なく、Webサイトのページにアクセスすれば利用可能
・ホーム画面に保存でき、以降はアプリのような使用感
・招待はWebページなので、アップデートも用意（当然、審査不要）
・PUSH通知やバックグラウンド処理なども、対応しつつある

【デメリット】
・ほとんどのブラウザが対応できていないため、スマホアプリの代替になるのはまだまだ先
・従来のWebページ、モバイルアプリとの棲み分けが困難。割り切らないと、選択肢とリソースが増えるだけ
・専用のアプリストアがあるわけではないため、ページにアクセスするための導線作りが必要

Amazonの答え：Skill

Alexa対応機器を増やすことで、Skillが使える環境を増やす、囲い込み戦略の成りです。
Skillを一つ作れば、家でも、ホテルでも、車でも、スマホでも、使うことができます。スマートホームの未来が明るければ、今度こそ、Amazonにこの業界でチャンスがあるかもしれません。（メリット、デメリットは挙げるまでもないので割愛）

LINEやPayPayの答え：ミニアプリ

元々は、テンセントやアリババの答えです。彼らのWeChatやAliPayという、多目的決済アプリは『スーパーアプリ』と呼ばれています。
アプリ内にApp Storeを構築し、単機能のインスタントなアプリを、スーパーアプリにインストールすることができます。
主に、ポイントカードやデリバリーサービスが多く、カードがパンパンな財布をデジタルで再現しようとしています。それに、LINEとPayPayが追従し、縄張り争いをしています。

【メリット】
・メッセージや決済でいつも使っているスーパーアプリを開けば、インストールの必要がなく、他のアプリを開かなくてもサービスを利用できる
・会員登録も、スーパーアプリのアカウントを使って簡単に行える
・スーパーアプリのポイントが付いたり、トークで利用できたりと、スーパーアプリユーザーには親和性の高い利便性がある

【デメリット】
・事業者側からすれば、様々なスーパーアプリに対応しなければいけない
・スーパーアプリのガイドラインに準ずる必要がある
・日本市場には、スーパーアプリがまだ確率できていない

【本命】Appleの答え：App Clips

先日のWWDCで発表された『App Clips』。
アプリをインストールしなくても、アプリの一部機能を、一時的に利用できるインスタントアプリです。

【メリット】
・インストールしなくても、Apple審査済の良質なアプリが利用できる
・気に入れば、簡単にアプリをフルサイズでインストールできる
・会員登録と決済は、Appleの厳しいガイドラインによって、他より遥かに、速く、安全に利用できる
・URLだけでなく、NFCや位置情報、専用コードの目印で、利用開始できる。必要なときに表示されるため、必要なときに使い続けてもらえる
・専用コードは、カメラ時代、ウェアラブル時代に合った新たなインターフェイスになる可能性（アプリは落とすではなく、かざす、になる）

【デメリット】
・App Clips用の追加開発が必要
・iOSユーザーしか利用できない
・Appleの厳しいガイドラインと審査がある

上記のように、インスタントアプリのアプローチは各社異なります。
しかし残念ながら、スマホアプリ市場はAppleの方が潤ってますし、事業者側にとっても効率よく成果を出しやすい環境がApp Clipsにはあるように思います。
PWAはこれからもっと進化し、HTML5の悲劇を繰り返さずに市場を作れると思いますが、まず成果を出すのはApp Clipsでしょう。

さて、そんなApp Clipsですが、このApp Clipsの描くアプリケーションの未来は、これだけで語ることはできません。

僕が思うに、『App Clips』『Appライブラリ』『ウィジェット』は、この先のスマホアプリの再定義に大きく影響を与えるものだと考えています。

それについては、また明日書きたいと思います。今日は長くなってしまいました。