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2021年8月の記事一覧

【通信講座】 小説「にゅうにゅうの逆襲」 講評

【通信講座】 小説「にゅうにゅうの逆襲」 講評

カフカ『家父の気がかり』における「オドラデク」のような
「にゅうにゅう」を描いた作品かと思えば
本質的内容は「白川先生」の説教。
どう考えても構造がおかしい。
タイトルが内容と一致しない。「逆襲」の意味が分かっているのか。
「にゅうにゅう」の存在と
「白川先生」が完全に分離している。
どちらかが不要。

「にゅうにゅう」を書きたいなら
「にゅうにゅう」に対する語り手の執着、恐怖、オブセッション、あ

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【通信講座】 小説「輝く眼鏡に……」 講評

【通信講座】 小説「輝く眼鏡に……」 講評

マジックリアリズム風の小品。
完全に好みのレベルだが、私には少々感傷的すぎるように思う。
辞退されなければ
第3回 川光俊哉賞 佳作 を受賞させたい。
作者の視線がすみずみまで行き届いていて
清新さ、正確さ、ユーモア、叙情(やや感傷)、あらゆる細部が
うれしそうに踊っている。

 ——と。
 転がった遺骸のポケットから、一枚のハンカチが、はみ出していた。
 そこには、間違いようのない、親友の名前が

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Words of Innocence and of Experience 10

Words of Innocence and of Experience 10

 世界の大部分の宗教は、行列のようなものであり、ひとりの人間が導いて、多数の者がそれに従う。半神の足跡に従って人間が続き、真理と啓示を探し求める。キリスト教とは、優しいナザレ人に従って、カルバリの丘の曲がりくねった道を登っていく。仏教徒は、偉大な解放者に従って、荒野を放浪する。回教徒は、砂漠を横切って巡礼の旅をし、メッカにある黒い幕屋を目指す。真理が先頭に立ち、無知がそのあとに従う。霊が道を照らし

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【通信講座】 小説「彼女の立ち位置(仮)」 講評

【通信講座】 小説「彼女の立ち位置(仮)」 講評

19/49 まで読んだ。
冒頭、「崖の上」の衝撃的な映像からはじまるので
この落下事故(心中?)が主題なのかと思えば
作者も「多佳子」も、たいして興味がないらしく
予備校講師「藤木」の予備校生との関係性(「禁断の恋」)と同じか
それ未満の事件でしかない。

「多佳子」の行動理念はきわめて漠然としている。
なにを書けばいいのか分からないから、分かっていないから(なにも書けないから)
かぎりなく「見聞

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【通信講座】 小説「人魚の棲む部屋」 講評

【通信講座】 小説「人魚の棲む部屋」 講評

1/3 まで読んだ。
ひさしく味わったことのなかった読書のよろこびを
このあと、ゆっくり噛みしめながら
つづきを読もうと思う。

辞退されなければ
第2回 川光俊哉賞 佳作 を受賞させたい。

抑制された文体は
感傷ならざる真の叙情で
水彩の淡い描写は、湿度、かおり、つめたさの幻想を生動させる。

お兄さんは瀬尾と名乗った。せお。漢字はさんずいに頼る、それから尻尾の「尾」。それで瀬尾です。と。年齢

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【通信講座】 小説「わたしを忘れて」 講評

【通信講座】 小説「わたしを忘れて」 講評

宮部みゆき、宮本輝、松本清張、赤川次郎の長所をパロディー化し
短所を寄せ集めたような作品。
なかでも「軽さ」がもっとも特徴的だが
短所としては「軽薄」であり
長所としては、読みやすく、むだがない。

16/41 まで読んだ。

タロウには前にわたしの過去を打ち明けていたので、事情を察した彼がすぐに持っていたライターで、黙ってその手紙を燃やしてくれました。――このことは忘れろ――とタロウが言ったので

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【通信講座】 小説「ソードディグアウター」 講評

【通信講座】 小説「ソードディグアウター」 講評

私はこう思う。
以下、「一文一文を上げて細かい文法のミスを手直ししてあげている」のがどういう意味か
考えてみてほしい。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 ユニウス王国の辺境ボルナッツ領、その領主たるボルナッツ家の一室でそれは産声を上げた_____
 アルコール

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【通信講座】 小説「重力魔術士の異世界事変」 講評

【通信講座】 小説「重力魔術士の異世界事変」 講評

私はこう思う。
以下、「一文一文を上げて細かい文法のミスを手直ししてあげている」のがどういう意味か
考えてみてほしい。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 青臭い草の匂いに、ざわざわと草の鳴る音がした。風が強い。 「青臭い草」
  トートロジー。

 地面に仰

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【通信講座】 小説「悪役道化師はトマトがお好き」 講評

【通信講座】 小説「悪役道化師はトマトがお好き」 講評

【通信講座】 小説「悪役道化師はトマトがお好き」 講評

スピード感ある展開と簡潔な表現は
小説的というより映像的であり
描写はト書きに似ている。

作者のスタイル、文体が確立している。
ご健筆を。

【通信講座】 小説「喜ばしき日々」 講評

【通信講座】 小説「喜ばしき日々」 講評

私は人工生命体である。――そう、ニンゲンは滅亡へと向かっていた。
冒頭、あらずもがなの自己紹介、設定の説明をのぞけば
丁寧な文章は非常に読みやすい。

灰色のビル立ち並ぶ都会まるで氷水でも浴びせられたかのように青ざめていたつかい古された表現が散見されるが
正確な描写も好印象。

観察力、叙情性、牧歌性、リアリティー、その他の美点が
SF的設定と解離していて
「人工生命体」「ソドシック」が必要ない。

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【通信講座】 小説「浮浪児かと思って助けた子は生体兵器でした。しかも世界最大の武装組織の……。でもかわいいからOK」 講評

【通信講座】 小説「浮浪児かと思って助けた子は生体兵器でした。しかも世界最大の武装組織の……。でもかわいいからOK」 講評

私はこう思う。
以下、「一文一文を上げて細かい文法のミスを手直ししてあげている」のがどういう意味か
考えてみてほしい。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 棘のある茎によって正方形に縁取られた薔薇模様が敷き詰められた煌びやかなカーペット上の椅子に、日本のみならず諸外国から

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【通信講座】 小説「血の雨ときどき、怪異~美少女探偵の私は、腕っぷしの強さで呪いの連鎖パニックを乗り切る~」 講評

【通信講座】 小説「血の雨ときどき、怪異~美少女探偵の私は、腕っぷしの強さで呪いの連鎖パニックを乗り切る~」 講評

設定を提示するタイミングがおかしい。
語り手がレズビアンであるかどうかなど、冒頭では意味がない。

 中退していなければ私も今頃は現役女子高生だったろうが、同年代にもかかわらず、彼女はモデル体型で長身の私にはない、愛くるしい容貌の持ち主だ。
 実に私好みの外見をしている。時と場合によっては、口説きたい程に。 ずいぶん面白い仕事をうちに回してくれたものだと、私の恋人で同業者でもある彼女に心の中で感謝

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【通信講座】 小説「散華のカフカ」 講評

【通信講座】 小説「散華のカフカ」 講評

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私はこう思う。
以下、「一文一文を上げて細かい文法のミスを手直ししてあげている」のがどういう意味か
考えてみてほしい。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

タイトル。
「城」「審判」「ア

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