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2019年9月の記事一覧

詩 317

詩 317

  天気柱

くつ下 捨てたら イナゴの目
そこにはいられず ありふれた
かがやけるもの 道しるべ
熟して かたい 七竈

疎外の悪夢 草原に
画鋲 ならべて 太陽系
柵をめぐらせ 飼いならし
低温殺菌 順序よく

ほこり なくして 手をあげて
一冊 まとめた あきらめた
埋めつくす 罠 キャンドル いくつ

あふれて 蒸留 ソーダ水
風 波 高く いさましく
わたっていくには なにが必要

詩 316

詩 316

  無憂獣

めざまし時計が鳴ったとき
終わりから見た はじまりで
廊下の長さを知っていた
水が流れる音じゃない

帰りそこねて 夜 遅く
蛍光灯を踏みつぶし
チョーク にぎって 寝ころんだ
月の軌道が魔法陣

門に あじさい 庭に 亀
なにかと出会うための部屋
柱をかざる ベル 綿ぼうし

終わりから見た 裏表紙
もうすぐ わたしは 壁のなか
結局 瓶にのぼれなかった

詩 315

詩 315

  共存のコード

生まれてはじめて よそもので
残り香 さがす 権利 なく
路面にあるはず 落ちたはず
煤に黒ずむ 安全ピン

羊歯 しげる 道 近道で
湿気は噴水 水蒸気
ベッドをはなれるまでもなく
中性紙には虹彩を

押し花にして観察し
近くにないこと 思い出し
ながめ はるかに 手ぶくろ 捨てて

沈没船が浮上して
小指は重い 旗 メダル
かわいた あくび しあわせなとき

詩 314

詩 314

  収穫

ベリーはみにくい 無視される
朝の露にもかがやけず
いすをあたため 近眼で
手足はのばせる なんて 嘘

半透明をとりもどし
もう一度 笑うために 泣く
まっさら かろやか 三葉虫
車輪がついて 修理中

光のすじは 液体化
モチーフならば つまらない
どんなに 必死に 夜を吸っても

はずむ 稜線 フラフープ
やっと自由になれたのに
最初のねがいが 消滅だった

詩 313

詩 313

  ソフィア

黄昏だけを くりかえし
見失うのをおそれては
また 振り返る 遊園地
はりつめた糸 殺虫剤

やっと分かった 非存在
影がなければ 道をあけ
こわくはない と 言い聞かせ
あわれみ だけは 受けとった

夢のなかなら意味がある
考えながら たよりなく
うつろうものは 表情もなく

見いだされた 時 よごれた手
どこからともなく 空 こぼれ
逃げられません 杖 きしむだけ

詩 312

詩 312

  白昼鬼

頭上 アセチレン灯 まるい
粒子のすべてが ゆれるので
あなたは不安で泣いている
おしまれながら 消えていく

屈折するたび 色を変え
いまの沈黙 白い のど
人影 いくつ 五十三
なにも知らない 焼きはらう

しびれたような無感覚
接触 あこがれ 一面 目
どちらも どれも 怒られそうで

重い枝には釘を打ち
後悔しながら みちていく
光のように 背景 わたしは