名古屋店の閉店について
こんにちは、ファクトリエ代表の山田(tocio_yama)です。
ファクトリエは、「語れるもので、日々を豊かに」をミッションとしています。日本各地のこだわりを持った工場と一緒に、誰かに語りたくなる(=ストーリーや機能性のある)服を作るブランドです。
安心して使って頂くため、
①ベーシックなデザイン
②ずっと愛用できる高い品質
③工場のオンリーワン技術による機能性
④何かあった際の修理/交換
⑤環境負荷の低い素材の使用(土に還る天然素材など)
を心がけています。
さて、今日は残念なお知らせ(ご報告)です。
名古屋のお店を8月末で閉店させていただきます。
約6年間、本当にありがとうございました。
いつもご来店いただきましたお客様、星が丘テラスの関係者の皆様、メンバーに心から感謝申し上げます。
お客様への経緯のご報告がメインですが、D2C関連や小売り、ブランドビジネスの経営者や起業を志す方にもこの情報が役立てばと思い、
前半)お店を持つことの意義・良かったこと
後半)厳しさを実感したこと
を書いていきたいと思います。
お店を出して良かった3点
(まとめ)
①相性の良い土地柄
②顔の見えるファン、アンバサダーとの出会い
③ブランドとしての信頼、厚みになった
①相性の良い土地柄
トヨタに代表されるように、愛知県はものづくりの町。アイシン、ブラザー、ホシザキなど、日本を代表するメーカーが軒を揃えています。そんなものづくりの町だからこそ、ファクトリエの掲げた「クラフトマンシップ」に共感いただける方が多かったです。全国10都市以上ででポップアップをしてきましたが、愛知県が一番だと思います。
立ち上げたばかりの会社にとって、相性の良い町を選ぶのが重要なのは言わずもがな。東名阪という日本三大都市の一つという好立地でありながら、ものづくりに実際に携わっている人が多いので、ものづくり系ベンチャーにはオススメです。
②顔の見えるファン、アンバサダーとの出会い
最初のきっかけは、ふと歩いていたら目に入って、お店で買い物してくださったお客様がほとんどです。それからは、コンシェルジュとの会話を楽しみに、毎週のように来ていただけるお客様が多くいらっしゃいました。
ファクトリエには「カタリエ」というお客様コミュニティがあるのですが、名古屋のお客様も、名古屋支部として、毎月開催されるコミュニティイベントに参加してくださっています。これはお店がないと作ることができなかった、顔が見えるからこそできたお客様との関係性だと思います。毎週のようにお越しいただくお客様には感謝が尽きません。
③ブランドとしての信頼、厚みに
ファッションECにとって、実際に商品が見られる、触れられて、試着ができる環境は重要。特に、ファクトリエの商品は価格も高いため、この心配(ニーズ)は常にあります。
では、お店はどこに出しても良いのかと言うとそうではありません。そのため、出店に際してはかなり吟味しました。なぜなら立地=ブランドイメージとなるからです。ルイヴィトンのお店の隣にユニクロのお店がないように、立地はブランドビジネスにとって非常に重要です。
そんな中、私たちが名古屋でどうしても出店したかった場所は、名古屋駅から車もしくは地下鉄で20分ほどにある「星ヶ丘」という町。東京でいう、田園調布や二子玉川のような閑静な住宅街です。名古屋駅や栄のような商業地ではなく、ゆっくりと見ていただける星ヶ丘を選びました。
この意思決定は、ブランドイメージにとって大きくプラスでした。星ヶ丘には、三越やレクサスなど、住んでいるセレブ向けのお店が多く、その買い周りとしてファクトリエも選ばれるようになったのです。
さて、ここまでは前半部分として「お店を持って良かったこと」を書きました。そんなに良い話ばかりなら「なぜ退店するのか?」と思われると思います。後半は、そんな中でも直面した困難を書きたいと思います。
続けていくのが困難だった3点
(まとめ)
①できなくなった工場イベント
②経営と人手
③約一年、悩んだ上での決断
①コロナ禍でできなくなった工場イベント
名古屋のお店の入り口には、大きな編み機の機械が置いてあります。店舗オープン時に一宮の生地工場、今枝メリヤスさんからお借りしたもので、名古屋店の象徴です。お店を作った当初、「お店をお客様(使い手)と工場(作り手・職人)が繋がる場所にしたい」という目的を持っていました。そのため、東海地方の工場さんを招いて、毎月のように工場イベントを開催。
工場ツアーも頻繁に実施。地元の方に、ものづくりへのこだわりを知っていただく機会を作ってきました。しかし、コロナ禍でものづくりイベントは全て中止に。4年間、毎月開催してきたものづくりイベントも、この2年は開催できていません。
お店は「工場とお客様が繋がるための場所」であり、お客様が買うものがなくてもふらっと立ち寄れるコミュニティのような場所」だったはずが、買いたいものがある時に予約を取ってご来店いただくようになり「買っていただくための場所」になっていました。もちろん買っていただくこと(売上)は重要ですが(後述します)、それ以上に私たちにとってのお店の存在意義とは?という問いにぶつかりました。
②経営と人手
最初にお伝えすると、なんとか名古屋店は黒字でした。それでも閉める決断をしたのは、将来のビジョンを示せなかったことに尽きます。いつもお越しいただいていたお客様には本当に申し訳なく思います。
黒字ではありましたが、店舗の売上は、コロナ前に比べて大きく落ち込みました。もともと原価率60%近いブランドとして、売上が下がるほど店舗を持つ負担が大きくなったのも事実です。
同時に、名古屋店のメンバー退職に伴う人員確保も思うようにいかない状況が続きました。どんな小売業の方に聞いても、「名古屋は日本一、販売員の採用が難しい」と言われる土地柄。そのため、これまでの店長は全員、東京で採用し、名古屋に転勤してもらいました。
今回も名古屋の友人・知人のツテをフル活用して採用に動きましたが、なかなかうまくいきません。施設(星が丘テラス)には無理なお願いをして、特別に週一日、定休日をいただいての運営を続けてきました。
銀座で働くメンバーを名古屋に移動してもらうことも検討し、面談も進めました。しかし、会社全体としてはECが唯一、コロナ禍でも成長していたこともあり、最終的に名古屋店を閉め、ECへ経営資源を集中させることを決めました。
③約一年、悩んだ上での決断
退店については約一年ほど悩みました(施設に退店の旨をお伝えしたのは今年6月)。決めるまでは、いつもご来店いただいているお客様の顔やメンバーの顔が思い浮かびました。退店はこれまでご愛顧いただいたお客様を裏切ることになること、これまでついてきてくれたメンバーのことを考えると、安易に決断に踏み切れない日が続きました。
経営者の先輩方に相談しても、「非情になれない経営者は失格」とのアドバイスばかりで、自分の未熟さと後ろ髪を引かれる思いに、考えていました。
最終的には、個人の思いと経営判断を切り分け、自分のプライドを捨て、誠心誠意、目の前の事象と向き合うと腹を括りました。
アルバイトを含むメンバー全員と面談し、現状を共有。謝罪と共に、今後についてできることは何でも力になることを約束。
経営者は決断することが仕事ですが、自身の力不足を痛感しました。
引き続き、8月26日(金)まで営業します!
ここまで閉店について書きましたが、まだお店は閉まっていません!!!
メンバー誰ひとり欠けることなく、出勤しておりますので、ぜひ遊びにいらしてください。
・8月13(土)・14(日)は元店長の深井が店頭におります。
私も本日(7/30)は名古屋店に立ってご挨拶しましたが、お会いできる方には、ぜひご説明とご挨拶をさせてください(8月は11日、 12日、26日です)。
以上、長々と書きましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。
力不足をお詫び申し上げますとともに、残り一ヶ月、引き続き、ご愛顧いただけますよう、よろしくお願い致します。
それでは、失礼します。
ありがとうございました!!
山田
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