見出し画像

映画レビュー「アポロニア、アポロニア」



アポロニア、アポロニア
一人の女性アーティストの十三年間を追ったドキュメンタリー
東京で暮らした最後の5年くらい、年々見る数が増えて200本くらい観てた。
そして今回17年ぶりに東京で映画を観る。
何にしようか探してる時間好き、そして鼻は効く方。
地方じゃどんどん名画座や単館が潰れていくのに、ニューオープンとはやはり東京。
クラウドファウンディング支援、カフェ併設、ふむふむ、上映中の映画は?
北欧ドキュメンタリー特集!
ここだ!墨田区菊川、ストレンジャー
菊川初めて降りるぞ~


以下ネタバレしてますんで、観たい人は画像だけ見てね。
監督のレア・グロブ、最初は映像学校の課題か何かだったらしいが、ついぞ13年に渡りその姿を追い続けた彼女にとってのファム・ファタール。

それが画家のアポロニア・ソコル。冒頭シーンで鼻の下の濃い産毛にシェービングクリームを塗り、前髪を額の半分あたりでぱっつんぱっつん切り始める。強靭な目力‥ちょっとフリーダ・カーロ似? 自由奔放で我が道を進むアポロニアに、いつの間にか観ている者は魅了される。

父が経営するパリの劇場、立派な劇場ではないが日々国籍も経歴も様々な人々が集まるコミュニティー、そんな中で育ったアポロニアは昔自分を描いてくれた祖父のように、周囲の人物を描き始める。パリのボザールで絵を学ぶも、なかなか本物になれない葛藤の日々。(ちなみに、フランスの劇場は文化施設として保護されているので、弱小でも簡単には潰れないんだよ~)

劇場で出会ったウクライナのフェミニスト活動家、オクサナ・シャチコとはソウルメイトとして(FEMENで検索すると美しく過激なオクサナの勇姿が見られます)深く交流する。

アポロニアはボザールを卒業できたが、そこから画家として認められるまでの活動と紆余曲折の道のり。億万長者のギャラリストと契約したり批評家にこき下ろされたり「あなたの絵よりあなたに興味がある」と言われた事。「私が男だったらそんなことを言うのか?」女性アーティストとしての苦悩がリアルに伝わる。現代美術家ポール・マッカーシーのアレに似たオブジェに駆け寄り裸になってポーズをとるアポロニア、閉塞感を感じるエピソードが続く中、彼女がとった行動が痛々しくも爽快なのは何故だろう?

それでも諦めず描き続ける、自分のスタイルや変化を受け入れて独自の表現の道を突き進むアポロニア、それこそが彼女と彼女の絵の最大の魅力となる。

働く女性と結婚や妊娠、子供を持つことのリスクも。
まさに女の十三年間はドラマの連続。

アポロニアのおばあちゃんが「人生で全てを成し遂げなくてもいいのよ」って言ってた。全ての女性に贈りたい言葉。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?