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娯楽映画研究所ダイアリー 2022年2月28日(月)〜3月6日(日)

2月28日(月)月曜更新!
今回は、石原慎太郎&石原裕次郎さん兄弟について語ります!

2月28日(月)『ナイル殺人事件』(2021年・20世紀・ケネス・ブラナー)・『裸の町』(1948年・FOX・ジュールス・ダッシン)『お嬢吉三』(1959年・大映京都・田中徳三)

これからケネス・ブラナーの『ナイル殺人事件』を観ます。1978年のピーター・ユステイノフ版も、2004年のデヴィッド・スーシェ版もそれぞれ面白かったけど、2021年版は果たして? 戯曲にもなり、展開が頭に入っている古典をどう料理しているか? タノシミです。どうしてもサンディ・オニールさんの「ミステリー・ナイル」が頭の中でリフレイン^_^ サンディさんとは、南太平洋クルーズの仕事で一緒に航海して、その時の話をいろいろ伺いました。

 ケネス・ブラナー『ナイル殺人事件』。マイケル・グリーンの脚色も見事で、三度目の映画化にして決定版になった。特に、ポワロの人物造形が素晴らしく、第一次世界大戦のエピソード、あの口髭を生やすことになったきっかけ、失われた愛…を描いて、ケネス・ブラナーのポワロに血が通ってきた。 前作では、偏屈で、大仰で、尊大さの塊だったポワロが愛すべきキャラに深化。その「愛は全てを超える」が作品のテーマとリンクして、後半の、愛憎の殺人劇となっていく。ガル・ガドットが圧倒的に美しく、まさに眼福。アネット・ベニングもさすがに上手く、女優力を堪能!

原作を読み、二度の映像化を観ているので、事件の展開も、犯人も、わかっているのに、最期の謎解きに身を乗り出してしまった!ポワロの「モナミ…」に涙ナミダ。ラストのロンドンでの素顔のポワロに、やられました。ケネス・ブラナーによる再々演、大成功! 127分という尺もちょうど良く、次の事件もタノシミに… また、作ってください!

久しぶりに、ジュールス・ダッシン監督「裸の町」(1948年12月27日公開)をスクリーン投影。戦後の刑事モノのルーツにして最高の一本。黒澤明監督「野良犬」(1949年10月17日公開)が生まれたのもこの映画の影響ありとも、感じた。我が「警視庁物語」シリーズも、その前段の「終電車の死美人」(1955年)も、みんな「裸の町」を目指していたのだろうなぁと。傑作は、いつ観ても傑作!

娯楽映画研究所シアターは、田中徳三監督『お嬢吉三』(1959年・大映京都)。河竹黙阿弥の歌舞伎『三人吉三廓初買』をベースに、絵草紙のような楽しい世界を展開。コクもケレンも映画的ダイナミズムもないが、市川雷蔵さんを眺めているだけでも楽しい。

江戸は浅草花川戸に名高い、三人の男伊達。お嬢吉三(市川雷蔵)、お坊吉三(島田竜三)、和尚吉三(北原義郎)は、悪辣な旗本原田倉之助(伊達三郎!)と地回りの伝法院の仁兵衛(清水元)の悪巧みを懲らしめて、一年半の伝馬町送り。

晴れて娑婆に出てきたその日に、原田と仁兵衛にお礼参り。江戸に居られないと東海道は三島宿へ。女衒・三島の辰(本郷秀雄)が借金のカタに売り飛ばそうとしているお美和(中村玉緒)は、お嬢吉三の幼なじみだった。すんでのところで、女装したお嬢吉三が身代わりとなり、お美和の証文を取り戻すも、時すでに遅く… お美和は、仁兵衛から原田への貢ぎ物となることを知ったお嬢吉三は、単身江戸へ戻ることに。

クライマックス、お美和を逃すべく、お加代(小野道子)と、お民(浦路洋子)、お嬢吉三に惚れ込んだ二人の女性が団結しての逃走作戦が痛快。女装したお嬢吉三が「八百屋お七」よろしく、梯子を昇り、半鐘をジャンと鳴らす。ああ、これだけでも楽しい。それだけの映画だけど、娯楽映画はこれでいい。

昔の庶民は、映画や歌謡曲、芝居小屋でこうした「歌舞伎」でお馴染みのエピソードをたしなんでいた。その「教養」が、娯楽映画の「ご存知」として共有され、作品を豊かにしていた。その「教養」がいつしかなくなって、なんでもかんでも説明しないと「わかんない」「むずかしい」ってことになる。大衆文化が衰退するワケだよチミィ〜 

3月1日(火)『空かける花嫁』(1958年・松竹・番匠義彰)・『悪魔の往く町”NIGHTMARE ALLEY”』(1947年・FOX・エドマンド・グールディング)

2005年秋ぐらいから「番匠義彰映画は、松竹なのに東宝映画みたいにテンポがいい。牧野由多可さんの音楽は宮川泰さんみたいだ」と大瀧詠一さんと話をしているうちに始まった番匠研究。やがてロケ地、東京風景の魅力を掘り下げ、ならば全作観たい!

そこで衛星劇場に企画を持ちかけ2009年5月から「番匠義彰フィルモグラフィー」と題した全作放映が実現。特番「番匠義彰を語る」企画、構成、出演しました。それから13年、ようやく「時は来たれり!」であります。 今回ラピュタ阿佐ヶ谷で上映しているフィルム状態がいいのも、2009年の企画の恩恵であります。最終日4月2日には、今回のためにニュープリントにした「明日の夢があふれてる」のヒロイン鰐淵晴子さんをお迎えしてトークショーも開催! 番匠義彰生誕100年!! セレブレーションです!!

ラピュタ阿佐ヶ谷で番匠義彰「空かける花嫁」を堪能。志村喬さんのワンマンお祖父ちゃんの下手な工作が、事態をどんどんややこしくしていくのが面白いのなんの。ラストの10分間の「あれよれよ」は天下一!笑って観ているうちに、メールで本日の伊勢新聞に番匠特集の記事が掲載されたとの報せが! 拙著の書影も! 番匠特集、4月2日までまだまだ続きます!

今宵の娯楽映画研究所シアターは、エドマンド・グールディング監督の『悪魔の往く町』つまり”NIGHTMARE ALLEY”(1947年・FOX)をスクリーン投影。映画作家を志しているなら、映画ファンなら、観て、驚いて、感心して、学ぶべし! と言いたくなるほど、これぞ犯罪映画、心理サスペンス、芸人映画のショーケース。つまり娯楽映画のお手本! 

3月2日(水)『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年・キャリー・フクナガ)・『千羽鶴秘帖』(1959年5月29日・大映京都・三隅研次)

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年・キャリー・フクナガ)Blu-rayを娯楽映画研究所シアターでスクリーン投影。公開時に2回観ているので、三度目となるが、ボンド主義者としてはやはり大満足。IMAXでフル画角のシークエンスを楽しんだので、通常のサイズだと少し物足りなくもあり。ディズニー+みたいになんちゃって「IMAX」版も入れて欲しいなぁ(笑)

展開はアタマに入っているので、今回は音楽と音響に耳をそばだてて拝見。ヘッドフォンでbassを効かせているので楽しい。ボンド映画は「ジョン・バリー効果」を狙っているので、場面との連動の音楽のスネークインが気持ちいい。音楽もSEというのがボンド映画。

特に今回は、作品に通底する”we have all the time in the world”がテーマなので、ジョン・バリーのあの名曲のバリエーションの旋律が入ってくるタイミング。ボンドの”we have all the time in the world”のセリフなどが絶妙のタイミングなので、痺れまくる(笑)

テムズ川畔でボンドがMと会話する復職シーン。ビル・ターナーの懐かしそうな顔。ここに流れる『女王陛下の007』のテーマ!

クライマックスの「毒草島」のシークエンスは、やはり小説版「007号は二度死ぬ」の映像化としても味わい深い。ラストの献杯から、マドレーヌがマチルドに「英雄としてのボンド」を御伽噺のように話すシーンは、やっぱり涙腺を刺激。これもフレミング・イズムなんだよなぁと。そこへ流れるサッチモの”we have all the time in the world”

皆さん、色々なご意見はあるとは思いますが、やっぱり『ノー・タイム・トゥ・ダイ』は僕にとっては最高の一本であります(笑)

娯楽映画研究所シアター第二部は、未見だった三隅研次監督&市川雷蔵さんの『千羽鶴秘帖』(1959年5月29日・大映京都)。原作はなく、八尋不二のオリジナル・シナリオの「なんでもあり」のスーパー娯楽時代劇。

なんたって義賊・千羽鶴の半次郎(市川雷蔵)の相棒が、小人の小吉(白木みのる)。二人が泥棒装束に身を包んで、江戸を跳梁する! それだけで楽しい。「てなもんや三度笠」の三年前、白木みのるさんの相棒が、藤田まことさんに先んじて、我らが市川雷蔵さんだった! 二人のやりとりがおかしい。

さらにクライマックス、半次郎は、大凧に乗って金の鯱の鱗を盗みに行く。これがヴィジュアル的には「仮面の忍者赤影」の白影さんそのもの! もちろんこちらが早い(ってこの映画だけじゃないだろうけど)それだけで嬉しい。

金山の金を横領し隠匿、それを賄賂に使って、将軍・家斉(井沢一郎)に取り入って、近々老中となる、大沼下総守(河津清三郎)とその一味。かつて大沼に父を殺された栗栖圭之助(鶴見丈二)は、彼らの悪行を記した羅針儀を手に入れるべく、許婚のみつ江(中村玉緒)を大沼家に女中として潜入させる。

この鶴見丈二さんの「父の仇」を晴らすための暗闘がメインストリーだが、大沼に雇われたフリーの隠密・天人お滝(左幸子)、そして千羽鶴の半次郎と小吉のコンビが入り乱れて、賑やかに物語が展開していく。

というか「なんでもあり」なので、大映映画でありながら、東映時代劇のような荒唐無稽の楽しさに溢れている。

で、ラストに半次郎の正体が明らかになるのだけど、その辺りも痛快、爽快、娯楽映画はこれでよし、という鮮やかなオチ。

3月3日(木)『新家庭問答』(1958年・松竹・番匠義彰)『三羽烏三代記』(1959年・松竹・番匠義彰)『復讐は俺に任せろ』(1953年・コロムビア・フリッツ・ラング)

これからラピュタ阿佐ヶ谷で番匠義彰『新家庭問答』(1958年)。今回特集のためにニュープリントした傑作喜劇! 佐野周二さん、山茶花究さんの友情。淡島千景さんの才女気質。 おきゃんな九條映子さん!ラピュタ阿佐ヶ谷、斎藤良輔脚本も見事で、高千穂ひづるさんのドライ娘の秘密が明らかになる後半。大木実さんがまたまたイイ味を出している。ナイトクラブのマヒナスターズ、回転小型ステージに、目が回らないかと心配に^_^

ラピュタ阿佐ヶ谷、番匠義彰監督『三羽烏三代記』(1959年)。ピカピカのプリントで三羽烏三代&パートナー、併せて18名の松竹スター入り乱れての微苦笑、爆笑の幸福な喜劇が展開。浅草国際劇場のレビューではSKD時代の倍賞千恵子さんの姿も! 全てが詰まった幕の内弁当。やっぱり面白い。

娯楽映画研究所シアターは、フリッツ・ラング監督&グレン・フォードの傑作ノワール『復讐は俺に任せろ』(1953年・コロムビア)を久しぶりに堪能した。

 警察上層部と街を牛耳るボスとの癒着。清廉潔白な警察官トム・ダンカンが自殺。その死に不審を抱いた巡査部長ディヴ・バニオン(グレン・フォード)が捜査を開始するが、トム・ダンカンの愛人を名乗る女性が、デイヴにコンタクトを取ってきたが、その後、ギャングたちに殺されてしまう。

 という滑り出しは、まさにハードボイルド映画の真骨頂。グレン・フォード演じるデイヴの、子煩悩で愛妻家のパパぶりをたっぷり見せておいて、美しい妻・ケイティ(ジョスリン・ブランド)が彼の身代わりとなって無惨にも殺されてしまう。そのショック。キーを入れた途端にクルマが大爆発。

これをきっかけにディヴはバッジを返し、警察を辞めて、復讐のため単独捜査を開始する。

 原作は、ウィリアム・P・マッギヴァーン。脚色はシドニー・ボーム。お話がよくできているし、それを89分にまとめてしまうのがすごい。ハードボイルド映画として申し分のないムード、展開、演出。さすがフリッツ・ラング!

警察本部長と癒着して、警察を意のままに操っている巨悪マイク・ラガナ役にアレクサンダー・スコーピー。その相棒で冷徹なギャング・ヴィンスにリー・マーヴィン! とにかくリー・マーヴィンの非道っぷりが素晴らしく、その愛人・デビー(グロリア・グレアム)は、ヴィンスのDVと非情に耐えかねて改心。デイヴに協力していくヒロインとなっていくのだが、そのきっかけが、ヴィンスのあまりにも残虐な行為。というのがこの時代のハードボイルド。

チャールズ・ラングの撮影は的確というか、ハリウッド・スタイルを堅持しながら、巧な省略と、ショッキングなショットを効果的にインサート。何を見せて、何を隠すか。この時代のノワールのクオリティの高さに、改めて惚れ惚れ。

3月4日(金)『情無用の街”The Street with No Name”』(1948年・FOX・ウィリアム・キーリー)・『魔像』(1952年5月1日・松竹京都・大曽根辰夫)

娯楽映画研究所シアターは、フィルムノワール強化月間の一環として、ウィリアム・キーリー監督『情無用の街”The Street with No Name”』(1948年・FOX)をスクリーン投影。アマプラで配信中(ジュネス企画原版)。

娯楽映画研究所シアター第二部時代劇祭(笑)で、阪東妻三郎主演『魔像』(1952年5月1日・松竹京都・大曽根辰夫)をアマプラでスクリーン投影。マスターが正規品ではなくPDのボケボケプリントだったけど、晩年とはいえさすが阪妻。たっぷりと楽しませてくれる。

アマプラで、リチャード・ウィドマークの「情無用の街」(1949年)を堪能したら、なんと「スタートレック:ピカード」第2シーズン開始の報せ。そのまま第一話「スターゲイザー」を観た。久しぶりに「スタートレック」の新作を観る喜び。セブン・オブ・ナインの変わらぬ姐御っぷりに惚れ惚れ。おまけにガイナンも! さらにさらに、目まぐるしい展開、とんでもない状況になったと思ったら、アイツが出てきた! 吹替で観ていたので、声優はもちろん羽佐間道夫さん! 俳優さんも、声優さんも、いまだ現役、まさにスタートレック連続体! 毎週、金曜日の夜のタノシミに!

3月5日(土)『街の野獣』(1950年・FOX・ジュールス・ダッシン)・『風と女と旅鴉』(1958年4月15日・東映京都・加藤泰)

娯楽映画研究所シアターは、連夜のフィルムノワール史探検、ジュールス・ダッシン監督&リチャード・ウィドマークの傑作『街の野獣』(1950年・FOX)を堪能した。これまで何度かテレビ放映(吹き替え版)を観てきて、どんな映画かは把握していたつもりだが、今回スクリーン投影してみて、かなり衝撃を受けた。『裸の町』でニューヨーク・ロケによりリアルなドキュメントタッチを成功、大きな影響を与えたジュールス・ダッシン監督が、ロンドンを舞台に縦横無尽にロケーション。

娯楽映画研究所シアター第二部は、加藤泰監督&中村錦之助の股旅もの『風と女と旅鴉』(1958年4月15日・東映京都)を、本当に久しぶりに観た。リチャード・ウィドマークの『街の野獣』に続いて、若きアウトローのトッポさを時代劇で観るならと、溌剌とした錦ちゃんの無鉄砲ぶりに会いたくなってハードディスクから再生。

3月6日(日)『アスファルト・ジャングル』(1950年・MGM・ジョンヒューストン)・『瞼の母』(1962年・東映京都・加藤泰)

娯楽映画研究所シアターは、フィルムノワール大会、ジョン・ヒューストン監督の傑作『アスファルト・ジャングル』(1950年・MGM)を正規品DVDをスクリーン投影。PDばかり観ているとやはりデジタルリマスター版は美しい。

寅さんファン必見!第二作『続・男はつらいよ』の原点。長谷川伸の世界を、加藤泰監督が中村錦之助さん主演で、タップリ描いた傑作!加筆してnoteにUPしました!


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