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社長シリーズ

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東宝名物「社長シリーズ」について書いた原稿をまとめました。
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#社長シリーズ

祝!!2021年「社長シリーズ」全作DVD化決定!

祝!!2021年「社長シリーズ」全作DVD化決定!

 2021年1月と2月、東宝からいよいよ、森繁久彌主演、喜劇映画の金字塔「社長シリーズ」が全作DVD化されます。というわけで、いちはやく、商品リリース情報です。なお、映像特典の「みどころ解説」は、三木のり平さんの息子・小林のり一さん、構成・演出は佐藤利明(娯楽映画研究家)です。

ご鑑賞のお伴に、noteにアップした全作解説は、こちらです。配信番組「佐藤利明の娯楽映画研究所」喜劇映画の金字塔「社長

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『続社長三代記』(1958年・東宝・松林宗恵)

『続社長三代記』(1958年・東宝・松林宗恵)

 「社長シリーズ」第5作!

 前作から二ヶ月後、昭和33(1958)年3月18日、柳家金語楼の人気シリーズ『おトラさんのホームラン』(東京映画・小田基義)と二本立て封切りされた「社長シリーズ」第5作。この年、映画人口が史上最高の11億二千万人を突破、映画黄金時代が到来。各社ともに週替わり二本立てで、次々とプログラムピクチャーが量産されていた。

 各社の同日封切りは次の通り。大映は、勝新太郎の『

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『続へそくり社長』(1956年・東宝・千葉泰樹)

『続へそくり社長』(1956年・東宝・千葉泰樹)

「社長シリーズ」第2作!

 前作から二ヶ月後、昭和31(1956)年3月20日。ミヤコ蝶々と南都雄二の「漫才学校」シリーズのバリエーション『漫才長屋は大騒ぎ』(山崎憲成)と二本立て公開されたシリーズ第2作。「社長シリーズ」が前後篇で作られたのは、前段となる『三等重役』(1952年)が、当初は第3作も用意されていたが、社長役の河村黎吉の急逝に伴い、結果的に二部作になったからである。

 源氏鶏太原

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『続社長学ABC』(1970年・東宝・松林宗恵)

『続社長学ABC』(1970年・東宝・松林宗恵)

「社長シリーズ」最終第33作!

 昭和31(1956)年1月3日公開『へそくり社長』(千葉泰樹)からスタートした森繁久彌、小林桂樹の「社長シリーズ」がいよいよ大団円。興行成績が低下しての自然消滅ではなく、東宝の製作本部長である藤本真澄は、このシリーズを大事にしていて、惜しまれつつ「有終の美」を飾ろうと、前年の『社長えんま帖』(1969年)から、フィナーレを計画していた。

 「変わらないこと」を

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『社長学ABC』(1970年・東宝・松林宗恵)

『社長学ABC』(1970年・東宝・松林宗恵)

「社長シリーズ」第32作! 

 昭和45(1970)年1月15日、正月第二弾として植木等&谷啓の時代劇『クレージーの殴り込み清水港』(坪島孝)と二本立て公開された「社長シリーズ」第32作。この年、3月から9月にかけて「人類の進歩と調和」をテーマに、大阪千里丘で「日本万国博覧会」が開催。その期待で日本中が沸き立っていた。

 ボウリングがブームの兆しをみせ、レジャーは多様化。1960年代末の「昭和

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『続社長えんま帖』(1969年・松林宗恵)

『続社長えんま帖』(1969年・松林宗恵)

「社長シリーズ」第31作!

 前作から四ヶ月後、昭和44(1969)年5月17日に公開されたシリーズ第31作。同時上映はフジテレビ製作による、仲代達矢、丹波哲郎、司葉子、浅丘ルリ子、オールスター大作『御用金』(五社英雄)だった。

 同日封切りは、大映は本郷功次郎『用心棒兇状旅』(井上昭)、南美川洋子と渥美マリ『ダンプ・ヒップ・バンプ くたばれ野郎ども』(帯盛廸彦)、松竹は牧伸二と立川談志『猛烈

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『社長えんま帖』(1969年・松林宗恵)

『社長えんま帖』(1969年・松林宗恵)

「社長シリーズ」第30作!

 昭和44(1969)年、映画界の斜陽には歯止めが掛からなくなってきていた。前年、日活のトップスター・石原裕次郎は、東宝の看板・三船敏郎と『黒部の太陽』(1968年・熊井啓)を共同プロデュース。石原プロ、三船プロ、勝新太郎の勝プロなどのスタープロや、フジテレビなどのメディア主導の大作映画の時代が訪れていた。

 そうしたなか、東宝のドル箱、森繁久彌の「社長シリーズ」「

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『続社長繁盛記』(1968年・松林宗恵)

『続社長繁盛記』(1968年・松林宗恵)

「社長シリーズ」第29作!

 昭和43(1968)年、映画界は空前の「やくざ映画」ブームだった。前作『社長繁盛記』(1月14日)と同日に、東映では鶴田浩二の『博奕打ち 総長賭博』(山下耕作)、その前日の日活では石原裕次郎・高橋英樹・小林旭の『遊侠三国志 鉄火の花道』(松尾昭典)と渡哲也の『無頼より 大幹部』(舛田利雄)、大映は市川雷蔵の人気時代劇『眠狂四郎 女地獄』(田中徳三)と勝新太郎の『悪名

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『社長繁盛記』(1968年・松林宗恵)

『社長繁盛記』(1968年・松林宗恵)

「社長シリーズ」第28作!

 昭和43(1968)年1月14日、正月第二弾として、オールスターキャストの女性映画『春らんまん』(千葉泰樹)と同時公開された。映画界は斜陽となり、東映やくざ映画が大いに気を吐いていた。昭和30年代の映画黄金時代を支えていたファミリー層は、レジャーの多様化にともない、映画館から遠ざかっていた。そうしたなか「明るく楽しい東宝映画」のキャッチで、それまでの路線を継承してき

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『続社長千一夜』(1967年・松林宗恵)

『続社長千一夜』(1967年・松林宗恵)

「社長シリーズ」第27作!

 正篇から五ヶ月後、昭和42(1967)年6月3日、三船プロダクション製作の小林正樹監督『上意討ち 拝領妻始末』と二本立てで公開されたシリーズ第27作。「社長シリーズ」は基本正続篇で、間を開けずに公開されていたが、シリーズでは最長のロングタームとなった。

 前作に引き続き、ドラマの中心となるのが、フランキー堺演じる日系ブラジル三世、ぺケロ・ドス・荒木。曽祖父生誕の地

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『社長千一夜』(1967年・松林宗恵)

『社長千一夜』(1967年・松林宗恵)

「社長シリーズ」第26作!

 昭和42(1967)年の元旦に封切られた正月映画『社長千一夜』はシリーズ第26作。同時上映は空前の加山雄三ブームのなか香港ロケで製作された『レッツゴー!若大将』(岩内克巳)。ちなみにこの年の正月興行は、東映は北島三郎『兄弟仁義 関東三兄弟』と高倉健『網走番外地 大雪原の対決』、松竹は橋幸夫『シンガポールの夜は更けて』と坂本九『九ちゃんのでっかい夢』(山田洋次)、日活

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『続 社長行状記』(1966年・松林宗恵)

『続 社長行状記』(1966年・松林宗恵)

「社長シリーズ」第25作!

 回を重ねてシリーズ第25作。派手ではないが、地に足がついている感じがして、ぼくは『社長行状記』前後編が好きである。イケイケムードで、ビジネスはいつも大成功というそれまでのシリーズとは異なり、構造不況のなか、資金繰りに苦労をしたり、信用商売をして手痛い打撃を受ける姿が描かれているのは本作だけ。ということもある。

 前作から一月後の昭和41(1966)年2月25日、岡

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『社長行状記』(1966年・東宝・松林宗恵)

『社長行状記』(1966年・東宝・松林宗恵)

「社長シリーズ」第24作!

 東宝名物「社長シリーズ」も回を重ねて24作目。昭和41(1966)年1月3日、クレージーの『無責任清水港』(坪島孝)と二本立て封切りの『社長行状記』は、シリーズの中でも最もシックな雰囲気がある。

 今回は、紳士服メーカー「栗原サンライズ」が舞台。社長・栗原弥一郎(森繁久彌)は、折からの不況もなんのその「サンライズ・バイタリティ」で乗り越えようと意気軒昂。営業課長・

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