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【厳選7冊】組織人事の領域で15年働いてきた私を支えた珠玉の書籍たち

ある時は組織人事コンサルタントとして、またある時は企業人事として、組織人事領域を生業として早15年。支援者と当事者を行き来していることから『組織屋』と自己定義していますが、そんな私を形作った7冊の書籍を時系列に沿ってエピソードとともに紹介してみようという試みです。

このnoteは以下を目的に書きました。
①自己紹介noteの代わりとして、本の紹介を通じて自分を知ってもらうこと
②組織づくりに奮闘する経営者・人事担当者の皆さんに、そのきっかけやヒントとなる名著を紹介すること

それでは少し長めにはなってしまいましたが、「上から順番に」でも「興味ある本から」でも、ご自由にお読みください!


①モチベーション カンパニー

組織人事領域に足を踏み入れて最初に読んだ1冊。
この本は私の前職の創業者である小笹さんが書いたものです。数多くの著書がありますが、私はこの本にエッセンスが集約されていると思っています。その時代に合わせながら表現は変わっているものの、根幹を為すその思想はブレておらず、今読んでも色褪せない印象です。

この本に出会う少し前まで、私は人が心沸き立つ瞬間を数多く創ることを志して、旅行会社でMICE事業に勤しんでいました。

記憶に残る仕事はいくつもありますが、心のどこかで「打ち上げ花火的なアプローチ(≒効果が一時的)」に留まっている感覚を持っており、本質的に組織を活性化するアプローチがないのだろうかと考えていた時期でもありました。

そんな時に出会ったのがリンクアンドモチベーションという会社であり、モチベーションカンパニーという言葉であり、モチベーションエンジニアリングという基幹技術でした。

これからの社員と企業の関係は「相互拘束関係」から「相互選択関係」へと移り変わる。そして、その関係性の中で「社員個人の欲求充足」と「企業の目的達成」を同時実現させるには、会社として金やポストだけでなくそれ以外の報酬、つまり「意味報酬(感情報酬)」をつくりだすことが求められる。

その扱い難い領域に実効性と再現性をもたらすのが学術的知見に裏付けられたモチベーションエンジニアリングという基幹技術である…

この本を読んだ時に、自分はこういうことがやりたいのかもしれないと感じ、と同時にここまで確立されたメソッドがすでにあることに驚きを禁じ得なかったことを今でも覚えています。

②熱狂する社員

完全なるジャケ買いではあるものの「祭り化」に繋がっていく1冊。
誰に薦められたというわけでもなく、そのタイトルに惹かれて購入した記憶があります。

私の原体験の一つに高校時代の体育祭があり、”あの時”の熱狂や夢中や没頭を「働く」という領域や「企業」という組織でも味わいたいという想いがありました。そんな私にとってド直球のテーマだったのです。

「なぜ情熱が高業績を生むのか?そして情熱はどこから生まれるのか?」の一つの答えを、著者らの研究・調査から導き出したものが本書です。

キーワードとして「公平感」「達成感」「連帯感」(これらを仕事のモチベーションにおける三要素理論としています)、そしてその前提の文化・システムとしての「パートナーシップ」が紹介されています。

詳細は本書に譲りますが、三要素を満たすためのポイントやパートナーシップを確立するためのステップなどが具体的に書かれています。

この本はその内容もさることながら、この本がきっかけで「熱狂」「情熱」「夢中」「没頭」「没入」「高揚感」のような、ともすると掴みどころのない概念に対しても、理論として深めていける可能性を感じることができたのが大きかったです。

ここからフロー理論に着目するようになり、自分なりに言語化を試みた「祭り化理論」に繋がっていくことになりました。

③企業文化

研修屋から組織屋へ自己定義を変えた1冊。
前職時代、商品の一つとして研修プログラムを提供していました。いわゆる階層別研修や選択型研修と言われるものをイメージしてもらえるとよいかと思います。

転職して間もない頃の私は、成果を出すことに必死だったこともあり、「研修を売る人=研修屋さん」になってしまっていました。これは、研修自体を揶揄する意図は全くありません。むしろ私は企画、設計、納品にこだわることで研修は強力なソリューションになると考えています。

ただこの時は、ありたい組織に至る全体像を描いた上での効果的な手段として考えていたわけではなく、ただお客様の枠に対して研修プログラムを提案するに留まっていたのです。

そんな私の転機になったのがあるメーカーの組織変革プロジェクトでした。これは当時の上司と一緒に進めた案件で、その上司に薦められて読んだのが本書だったのです。

その当時で創業60年を超える企業で、経営陣の代替わりをきっかけに改めて強い企業文化を醸成していこうというものでした。

本書を読むと、文化には3つのレベルがあり、文化が関わる問題は想像以上に広いことが認識できます。また成熟企業を含む各フェーズにおける変革のダイナミクスについても詳しく書かれています。

それらを持って、本プロジェクトに全集中で関わった経験が自分のマインドセットを変えたくれたように思います。本書を参考に作った文化醸成のフレームワークはその後の組織変革支援で幾度も登場することになりました。

④個を活かす企業

組織屋としての修羅場を共にした1冊。
印象に残るお客様を1社挙げるとしたらこの会社というお客様が私にはいます。その会社はグループ連結で数万人規模のグローバルメーカーでした。そのお客様とご一緒していたのは、前中期経営計画の遂行によって構築した強固な事業基盤をもとに、持続的成長にチャレンジされている時期でした。

そのための注力テーマとして掲げられていたのが「組織力向上」で、私たちもパートナーの1社としてご支援させてもらっていたのです。その当時は人事部門に留まらず、製造、販売、R&D、経営企画、事業企画、コンプライアンス室、そしてグループ各社などあらゆる部門とお取引させてもらっていました。

どの担当者の方も当たり前の基準がとても高く、フラットに相談相手として接してくださっていたので、私たちとしても常にゴールフォーカスで並走させてもらい、また結果的に取り組んだことのないテーマにもチャレンジさせてもらえたお客様となりました。

その頃に企業変革の道標として繰り返し読んでいたのが本書です。個人の自発性を喚起し、組織としての学習と自己変革を推進するための行動環境の4つの特徴(規律、サポート、信頼、ストレッチ)が明らかにされています

そして、その行動環境を構築するために、各レベルのマネジメントの役割・職務がどのように変化していくのかにも言及しています。

新世代の企業モデルに進化していたこのお客様には特にフィット感が高く、実際に販売部門とマーケティング部門の統合が行われた後の組織統合施策においては、本書のフレームワークを随所で活用させてもらいました。

豊富な学びを得たというだけでなく実践でも重宝した私にとっては思い出深い名著です。

⑤人を助けるすんごい仕組み

理論の力を思い知らされた1冊。
組織人事領域にもたくさんの理論が溢れていると思いますし、その当時の私も自分たちが提供しているソリューションの学術的背景をきちんと押さえるように心掛けてはいました。

ただ、どこか理論と実践を切り分けていたところがあったように思いますし、理論そのものは学びの対象と認識していた節があったようにも思います。

そんな時に目にしたのが本書です。この本はドキュメンタリー的な内容なのでここで紹介するのが難しいのですが、東日本大震災の際に立ち上がった「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の話がまとまっています。

驚くべきは著者である西條さんが被災地支援の専門家でもなければ、関連するNPOでの活動経験もない、ボランティア活動の素人であったにもかかわらず、日本最大級の支援組織を運営できたということです(もちろんひとりの力で・・・ということではありません)。

そして、そのプロジェクトを支えたのが構造構成主義という「理論」だったというのです。

この理論の詳しい内容は西條さんの他の著書などを読んでいただければと思いますが、私の解釈では物事の本質に立ち返り、信念対立を超えて行動・協働するための原理であり、不確実性が高くゼロベースでの対応が求められる時だったからこそ、より一層の威力を発揮したのだと思っています。

この本を読んで、ともすると机上の空論などと揶揄される「理論」も、突き詰めていくとこれほど実践的なものになり、圧倒的な成果を生むことができるのか…と、ある種の衝撃を受けたことを覚えています。そこから私も改めて理論に立ち返る頻度が高まりましたし、理論と実践の行き来を意識するようになりました。

また構造構成主義にある「方法の原理」や「価値の原理」など各種原理そのものが、組織づくりを進める上でも役立っていることも付け加えておきます。(コロナ直前に西條さん主催のエッセンシャル・マネジメント・スクールにも通わせていただきました)

⑥さあ、才能(じぶん)に目覚めよう

確固たる武器の獲得に繋がった1冊。
ここまで紹介してきた本は前職時代に読んだ本ですが、この本は共同創業したマツリカで組織づくりの当事者として活動していた時期に出会った本です。

それまで多くのお客様の人材開発・組織開発のご支援をしてきた私ですが、いざ当事者としてゼロから組織をつくる立場になった時、恥ずかしながら予想以上に悪戦苦闘していました。

その要因はいくつもあるのですが、そのひとつに「個人への関わり方」があったように思います。スタートアップには潤沢なリソースがあるわけではないため、最強最高の資産である「人」を最大限に活かす必要があります。

また規模の大きな組織だと、配置含めてあの手この手とやりようがありますが、その規模感に至っていないスタートアップではそういう選択が取れないこともありました。

前職時代にもマネジメント経験はありましたが、ゼロから組織をつくった経験はありませんでしたし、また支援者としてもどちらかという「個人へのアプローチ」よりも「関係性(コミュニケーション)へのアプローチ」がメインだったこともあるかもしれません。

そういった背景もあり、ある意味で我流だった「個人への関わり方」に何らかの軸を獲得したいと考えていた時に出会ったのが本書でした。

ストレングスファインダー®という名称だけしか知らない状態でしたが、最も惹かれた理由は「強みをパフォーマンスに繋げる」前提があったからです。いわゆるコーチングを学ぶ選択肢もあったのですが、その当時は前述したような状況にありましたので、生産性とエンゲージメントの両方を向上させる武器になるのでは・・・と考えたのです。

その後、私はGallup社認定コーチの資格を取り、ストレングスコーチとして社内外で活動するに至っています。

本書に関してはその内容を読むよりも、本書に付いているアクセスコードを使って実際にストレングスファインダー®(正式にはクリフトンストレングス®)をやってみて、ストレングスコーチングを受けるのが一番だと思いますので、興味のある方はぜひ私までご連絡ください!

⑦チームが自然に生まれ変わる

組織屋としてパラダイムシフトが起こった1冊。
私は本書を読む前にここに書かれている内容を教わっていました。⑥に書いた時期とほぼ同時期に、もうひとつ学び直しをしていたのです。

当時は組織屋として、「組織コンサルタント」としての支援者的側面ではなく、当事者的側面、つまり「企業の人事」としての力量を高める必要性に駆られていました。そこで私が選んだ場所が本書の著書である李さんが代表を務めるマインドセット株式会社の戦略人事講座でした。

李さん自身の「圧倒的経験に基づく膨大な知見」とチェンジエージェントとして必要な「認知科学的アプローチ」は、私が学んできたものと比べると異質に思える内容でしたが、確実に自分自身の変容をもたらしてくれたように思います。

本書でもその肝となる要素が載っており、内部モデルを書き換えることで、人・組織の持続的な行動変容を促せることが理解できます。またそのポイントとなるのが、ゴール設定とそれが実現した世界への没入感であり、その状態こそが高いエフィカシーを実現していると言えることが分かります。

戦略人事は、戦略パートナー、管理エキスパート、従業員チャンピオン、そしてチェンジエージェントの機能を果たす必要がありますが、特にチェンジエージェントの難易度が高く、その時こそ本書記載の認知科学的なリーダーシップが必要になります。

自分もまだまだではありますが、自社に、そして支援するお客様に、コレクティブ・エフィカシーを宿すべく日々研鑽していきます。

余談ではありますが、この場で学んだことの中には自分の認識と異なっていることもたくさんあったのですが、中でも「モチベーションとは何か」については驚きでした。前職はモチベーションを扱う会社だったので(笑)。

もちろん、どちらがあっている/間違っているという単純なものではないと認識していますが、これまでの自分の理解と新たに学んだことを自分なりに統合するプロセスも私にとっては価値ある時間でした。

締め

今回は組織人事領域を生業とする組織屋としての自分を支え、形作ってくれた書籍をその当時のエピソードとともに紹介してきました。

書籍の内容についての言及は最小限となってしまいましたが(笑)、改めて自分自身が数多くの本に支えられてきたことを実感しましたし、本ほど費用対効果のよいモノはなかなか無いと感じます。

仕事で参考させてもらった本はまだまだあります!機会があれば『組織人事コンサルタントとしての土台をつくる本』『人事担当になったら初めに読む本』的なものを少しずつ紹介できればと思っていますので、宜しければぜひnoteやX(@toshi0310maz)をフォローしてくださいね!


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