Anaerobic Speed Reserveが800mでは重要? 論文レビューその②
ASR(Anaerobic Speed Reserve)というコンセプトを紹介しましたが、研究結果でも800mが1:44~45秒の選手の方が1:47~48秒で走る選手の方がよりASRが大きいということが確認されています。
MSS(Max Sprint Speed) 最高速度がたかい、すなわちASRが大きいということは(説明は以前のNoteより)レースペースの速度での余裕度が変わってくるのです。スピードの上げ下げに適応する、スプリントのスキルの部分がより優れているということになります。1つは、レースのスピードが上がった時により効率的に出力ができるテクニックがあるということです。それに加えて、レースがゆったりとしたペースの時は生理学的な負担も低いということにも繋がります。
Bacheroは、パーソナルベストが1:43~1:58の800m選手を対象とした研究で、20mのスプリントのタイムが800mのタイムと強い相関関係があると示しています。最高速度を向上させるということは、800mなどの中距離のレースのラストスパートなどで必要不可欠でもあります。2012年のロンドンオリンピックの分析をすると400までに前から3番目に位置していると予選通過の確率が50%という分析結果もでています。また、世界水準の800mの選手のレースの100~200m局面での100mのタイムも優れています。レースの前半を速いスピードではいり有利にレースを展開することができます。これらを可能にしているのは、大きいASRであるというのです。最高速度が大きいことで、1周目がはやく展開されるレースでも2周目に余裕を持たせられるのです。このように、自分のASRを把握することは、どのようなレース展開をするべきかなども明確にできるのです。
800mなどのレースペースでは、より数多くの運動単位を動員することが必要になりますが、大きいASRを持つことと効率的に走ることはまた違う話になります。400mの選手でも800mを苦手とする選手がいるのはこのためで、800mの走る技術(効率的にスピードを確保する)も同時に重要になってきます。
次のNoteでは、800mの技術的なところにもう少し触れていきます。
TWOLAPS TC
和田俊明 (FIRST TRACK)
参考文献
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