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【イギリス生活】ロンドンで子供が生まれた話

こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。

2022年の夏からイギリスのロンドンに住んでいる弁護士です。

突然ですが、先日、ロンドン市内の病院で第二子が生まれました!

イギリスでの出産については、既に先人の皆様が様々な有益な情報を発信しているところではありますが、最新の情報を発信するのもまた有益だろうと思い、ぼくの家族の例をご紹介します。


はじめに:NHSでの出産

我が家は、ロンドン市内にあるNHSの病院で出産することを選択しました。理由は、残念ながら、プライベートの病院を利用するだけの資金力がなかったからです(笑)。いや、笑っている場合ではないですね。必ずしもベストではない環境の中、異国の地で出産をした妻には頭が下がるばかりです。日本に戻ったら、家族のご飯のために頑張って働こうと思います。

英国在住の方にとっては、今更な話かもしれませんが、NHSは、日々の医療サービスに関しては、すこぶる評判が悪いです。「英国に住む全ての人に無料の医療を」という理想は素敵ですし、財政的に仕方ない面はあるものの、予約が取れない、サービスの質が高くない、といった点は正直に言って、ちょっと看過できないレベルです。

しかしながら、こと出産に関しては、NHSのサービスに大きな不満を感じることなく利用することが出来ました。第一子は、日本のそれなりに評判の高い大学病院で出産したのですが、そこと比べてもサービスの質に大きな違いがあるとは思いませんでした。幸いにも大きな問題なくお産を終えて、今のところは母子ともに健康に過ごせています。

本稿では、出産前に色々と気になっていたことについて、書いていこうと思います。もし、ぼくと同じような疑問も持っていた人の助けになれば嬉しいです。

では、始めていきたいと思います。

妊娠が分かったら

イギリスで産むのか、日本に戻って産むのか?

まず、決めないといけないのは、イギリスか日本、どっちで産むか問題だと思います。

ぼくのところは、色々な事情を考慮して日本に戻って産む可能性は当初からないものと考えて、妊娠が分かってからは、こちらで出産することを前提に動き始めました。

もっとも、日本に残る家族のサポートや環境の問題で、日本に戻って産んだ方がよいケースはそれなりにあると思います。

NHSかプライベートか?

繰り返しになりますので深入りしませんが、金銭的に問題ないならば、プライベートにするべきだろうなと思います。

駐在員さんの家族の場合、会社によっては、出産費用の一部又は全部を負担してくれるところもあると聞きます(実際、そんな会社の例を2件ほど聞きました)。羨ましい限りですが、このあたりは、好き好んで留学しに来ているぼくと、会社から頼まれて赴任している駐在員さんの違いでしょうね。

どこの病院にするか?

NHSでもプライベートでも、重要になってくるのは、お産をする病院です。ぼくたちは、University College London Hospital(UCLH)を選びました。

名前のとおり、UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)の附属病院です。妻のママ友さんが、こちらの病院で出産されており、その話を聞くに悪くなさそうとのことで、割とすんなり決まりました。

ぼくたちは、ロンドン北部に住んでおり、市中心部にあるUCLHまでは、電車で30分、車でも同じくらいかかるので、人によっては少し遠いと感じるかもしれません。ぼくたちは、距離と病院の評判を天秤にかけて、評判を選びましたが、人によっては異なる選択肢もあるはずです。

こちらで郵便番号を入力すれば、産科のあるNHSを距離ベースで検索できるので、利用してみても良いかもしれません。

補足:自宅での出産

当然ながら、病院ではなく、助産師の協力等の下で自宅で出産することも可能です。ぼくの家族は選択肢になかったのですが、こちらのページによれば、色々と説明がなされています。

妊婦検診

Self-Referral Formによる登録

出産するNHSの病院を決めたら、self-referral formと呼ばれるフォームを提出して、その病院に登録してもらいます。例えば、UCLHでは、こちらからオンラインで提出します。

なお、提出にあたって、妊娠したことの証明等は要りません。ぼくの家族の場合は、検査薬で確認して、そのまま提出に進みました。GP等への連絡も不要です。

病院から手紙が届く

提出を済ませると、登録した住所に宛てて、病院から手紙が届きます。手紙には、初回の検診の日時が記載されています。

また、もしかしたら、他のNHSの病院では違うかもしれませんが、UCLHでは、MyCareと呼ばれるスマホアプリを通じて、第2回以降の検診のスケジュールが管理されます。

初回検診(ミッドワイフ)

妊娠11週目に実施されました。

検診の内容は、あんまり覚えていないのですが、色々なことを聞かれた記憶があります。あとは、今後の検診のスケジュール(超音波検診や予防接種を含む。)についても、さらっと触れられた気がします。

なお、個人的にNHSの病院を利用するに当たり最も気になっていた点として、言葉の問題がありました。これについては、すべての検診において、お願いをすれば、日本語の通訳さんをつないでもらうことが可能です。電話でつなぐ形式なので、たまにコミュニケーションが辛いときがありますが、さほど不便はありませんでした。

超音波検診

調べた限りの情報だと、NHSでは、12週目と20週目を目安として、2回にわたって産科医による超音波検診が行われます。逆に言うと、この2回で異常がなければ、それ以上超音波検診を行わないこともあり得るのかもしれません。

ぼくの家族の場合は、12週目に血液採取と併せて第1回の超音波検診が実施されて、20週目に第2回が実施されました。その結果、少し平均よりも胎児が小さいとのことで、継続的に超音波検診をすることになりました。

なお、12週目の超音波検診のあとに、染色体異常のリスクに関する報告をMyCare上で受け取りました。もしかしたら、どこかの検診のときに紙でも受け取ったかもしれません。そこには、年齢等のデータを基にした一般的なリスクと、超音波検診の結果を踏まえた調整後のリスクが記載されていました。

ぼくの妻の場合は、2種の染色体異常に関する調整後のリスクがいずれも数千分の1(実際にはもっと細かい数字で提示されます。)という結果でした。NHSでは、妊婦が、この結果を受けて、更に詳しく染色体異常に関する検査を受けるか否かを決めることになるので、リスクを定量的に言い切ってくれる姿勢は、個人的には歓迎でした。

その後の検診

妻に協力してもらって、出産前の受診回数を数えてみたら、合計13回も通っていました。初回検診度、おおむね2週間に1回のペースで通っていた計算になります。

なかには、ミッドワイフから「なにか体調やメンタルで困っていることはあるか?」と訊かれて、妻が「No」と答えて終わる日もありました。付き添っていたぼくの目から見ると、今日検診した意味あったのかな、という気もしましたが、それだけ順調に言っていたということかもしれません。

振り返ってみると、ぼくたちの場合は割と大きな問題なく、お産まで進んだ事例だと思いますので、人によっては、もっと通院が必要なこともあるかもしれません。あくまでも一例ということでご容赦ください。また、調べたところによると、初産婦の場合は、もう少し検診が増えるそうです。

お産に向けて

付き添いに関する注意事項

ぼくたちの場合は、日本から家族にサポートに来てもらうことが難しく、ロンドンにいる家族のみでお産を乗りきる必要がありました。

ここで困ったのは、コロナ禍以降、NHSの病院(少なくともUCLH)は、幼児の出産の立会いを認めてくれないということです。ぼくたちには、未就学児がおり、一人で留守番をさせるわけにもいかないことから、ぼくが子供と家で留守番をして妻が一人でお産するか、ぼくが妻に付き添う代わりに子供をシッターに預けるか、という二択を迫られることになりました。

ドゥーラさんとの契約

一時期は、子供をシッターさんに預けることも検討したのですが、いつお産が始まるかも分からないので、結局断念しました。

そこで、ぼくたち家族が検討したのは、ドゥーラさんとの契約です。

ドゥーラさんとは、ぼくの理解では、助産師さんとはまた違った立場から、お産をサポートしてくれる人のことで、妻がママ友の紹介で、ロンドンで活動されている日本人のドゥーラさんを見つけて、その人にお産の立ち合いをお願いすることになりました。

バースプラン

あくまでも個人的な印象ですが、日本のよりも、イギリスのお産では、母親の意思がより尊重されているように感じます。

出産の場所や方法に関して色々な選択肢があるのもその表れで、人によっては、プールで出産することもあるようです。

ぼくたちの場合は、ベーシックに、病院での無痛分娩をすることにしました。日本では、無痛分娩は、あくまでもオプションの位置づけにあるうイメージでしたが、こちらでは産科医から当然に無痛でやる前提で尋ねられたので、原則と例外が逆転しているのかもしれません。

夫としてやっておいた方がよかったこと(反省をこめて)

家事・育児です!!

当然ながら、出産直後は、妻の方は赤ちゃんのミルクやお世話などでかかり切りになることから、夫としては、その他の家事・育児を積極的にこなす必要があります。

ただ、いざやってみると、細かいところで自分が普段何もやっていなかったとことを思い知らされます。例えば、上の子の靴下がどこにしまってあるか分からない、いつも朝食で食べているヨーグルトがTescoのどこに売っているか分からない、といった悲しい事態が頻発します。

産前産後の夫の失態は終生にわたって尾を引くといわれるので、もし、出産を控えている奥さんをお持ちの方は、ぼくのようにならないよう気をつけられてください。

出産当日

破水したためUCLHへ

予定日の2日前の朝、妻が破水します。

ぼくは、UCLHの出産病棟に電話をして(それまでの検診で、破水したら電話をするように説明されていました)、状況を説明したところ、今すぐ病院に来てくださいと言われました。

ぼくはそのままその日の仕事の予定をキャンセルして、子供を連れて、妻とともにUCLHに向かいます。

いつもと違う受付まで行き、妻は椅子に座ってもらい、ぼくは窓口に並びます。結構人が並んでいて、一つ前には、大きなおなかを抱えてしんどそうにしているお母さんがいました。破水してるのに、こんな列に並ばされるなんで、ぼくならキレているじゃないかと思います。

そうこうしているうちに、ミッドワイフの診察がはじまり、お産の進捗具合を確認してもらいました。色々と相談した結果、一旦帰宅して、急変が無い限り、次の日のお昼にまた来いとのことでした。

帰宅するも、、

ぼくの家には車がないため、家族3人で家まで電車に乗って帰ります。家についたのは夕方ごろで、そこから次の日のお産のための身支度を始めます。

しかし、午後8時を過ぎたころから、妻の容態が急に進んだようで、やっぱりヤバいかもという話に。ぼくは急いでUCLHに電話をして、事情を説明して、これから向かうことを伝えます。

さすがに電車で向かってもらうわけにもいかず、あたふたしながら、Uberを呼びます。かたや妻は、キムチでご飯を食べていました。さすがに肝がすわっているなあと思いました。

ほどなくして家の前にUberが到着して、妻が入院の荷物とともに乗り込みます。シチュエーションからして明らかに出産間近の妊婦が病院に向かう場面なのですが、Uberの兄ちゃんは平常通り対応してくれたそうです。

スピード出産

妻を送り出して、21時30頃には、ドゥーラさんからUCLHで妻と合流した旨の連絡をもらいます。その後、子供を寝かしつけて、当日の日中にできなかった仕事を片していると、再びドゥーラさんから連絡が来ます。

どうやら、子宮口が6センチぐらいまで開いたとのこと。そう言われてもピンとこなかったぼくは、ネットで調べて、お産が中盤戦に突入したらしいことを知ります。

今日は寝られないなあとしばらくボーっとしていると、また通知音が鳴って、赤ちゃんの写真とともに「10:30誕生でした!」とのメッセージが届きます。一瞬、何がなんだか分かりませんでしたが、生まれたことを理解し、嬉しさとともに、ホッとしたことを覚えています。

病院についてから、1時間で出産まで進んだことで、当初予定していた無痛分娩の処置をする時間がなかったそうです。

退院まで

イギリスのNHSでの出産で最も驚いたことは、出産後すぐに退院することになっている点です。

ぼくたちの例では、PM10:30に出産後にそのまま色々な検査を行って、翌日のお昼過ぎには、もう帰ってよい(その日以降はもう病院に泊まれない)ということになりました。

日本の第一子のときには、確か一週間近く入院していたはずなので、国が違えば運用もここまで変わるのかと驚きました。

おわりに

いかがだったでしょうか。

色々と不安だったNHSでの出産ですが、ふたを開けてみれば、妻の持ち前のタフさも相まって、なんとか無事に済ませることができました。

本日は、出産にしぼって書きましたが、出生登録や、社会保険の手続やパスポートの申請などでまだまだ慌ただしく過ごしています。このあたりのことも、また時間を見つけて書きたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
このエントリーが皆さまの生活の一助になれば嬉しいです。


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